就職転職・昇進昇格試験コラム9

就職試験・昇進昇格試験論文や作文の参考になるコラムです。

「方法としての公」--自己アピール法の一提案

 昭和60年代以降、つまりバブル経済の頃から、日本の社会は明らかに変わりました。それは、社会全体に「公」という概念が希薄になったことです。
  その背景や経過、きっかけとなる出来事どもについて、ここで詳細に述べる余裕はありませんが、その頃から「自分さえよければいい」という考え方が、上から下まで社会を広く覆ったことは間違いありません。
  しかしながら、「公」という概念が尊いものだ、自分にはできなくとも、と考える人は、まだ多数を占めています。若いみなさんには思いも寄らないことかもしれませんが、もしそうだとしたら、この「公」を表に出したアピールは、企業の人事担当に対して、珍しいだけに効果的かもしれません。

公  公という字は、上半分の「八」と、下半分の「ム」からなっています。「八」の字は、真ん中に線を引いたと仮定すると対称になっていることからわかるように、「正反対を向く・そむく」と言う意味です。これに対して「ム」は、箱、あるいは両手でもって「囲い込む・抱え込む」との意味で、いいかえると「独り占めする」ことに他なりません。つまり両者を合わせると、「私的な欲や感情を捨てること」「社会や自分の属する集団に貢献すること」を意味します。そういえば戦前まで、企業や官庁に勤めることを、市井(しせい)の言い方では「(ご)奉公」と呼んでいました。

  世知辛い世の中で、「私は公のために尽くしたいと考えている」との意志を、正面から振り降ろされると、企業の人事は「今日日(きょうび)の若いもんには珍しい人格だ」と思ってくれるかもしれません。少なくとも、これを真っ向から笑い飛ばすだけの度胸は、なかなか持ち合わせられるものではありません。

  私はただ無責任に、これをお勧めしているわけではありません。実際、かつて複数の大手企業、公益法人に、この手で内定を取り付けたことがあります(申し訳ないことに辞退してしまいましたが)。ですから、自己をどうやって差別化し、売り出していこうかとお悩みのみなさんに、一方法としてこれを提示している次第です。

  ここで大急ぎで付け加えておきますが、これにはいくつかの補足があります。

  その一つは、自分の過去の実績、やってきたことのうちで、なにがしか「公」に貢献した事実がないと、かえって失敗する可能性があることです。倫理的、道徳的なテーマで自己を売り出す場合(今はやりの事柄で言えば「環境」とか「福祉」なんかもそうです)、よほどそれを証する実績がないと、あまりにも「ウソくさい」ため、ただのホラ吹きとのレッテルを貼られるおそれがあります。ですから、今までこれに類(たぐい)することを何一つやってこなかったならば、これはお勧めできません。

  もう一つ付け加えるべきことは、「公」を表に出す=聖人君子になる、ということではない、とのことです。
  そうです、そのように「見せる」ことが、就職試験をとりあえず突破するために必要なだけで、本当に「滅私」する必要はさらさらありません。そもそも、人は誰しもおのれのために生きているのですから、とことんまでの自己犠牲など、まずできるはずがないのです(本田技研創業者、故本田宗一郎氏が、「会社のために働くな。そんな奴はいない。自分のために働け」と言い切ったことは、いかに彼が人間というものをよく知っていたかの証左です)。

  今申し上げた二つの付け足しを総合すると、こういうことです。
  自分の力を、何かみんなのために使った経験がある人。
  自分の力を尽くすことで、おおやけの役に立ちたいと少しでも考える人。
  --どんどん、「公」をキーワードに、自分を売り出してみましょう。
  なぜなら、このスローガンが好きな世代が、人事の鍵を握っているのですから。

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