就職転職・昇進昇格試験コラム10

就職試験・昇進昇格試験論文や作文の参考になるコラムです。

「書く前の勝負」

 自分の意見を立て、その正しさを読み手に説得すること、これはビジネス論文でも当然にして当てはまる原則です。しかしながら、理屈として正しい文章が、すなわち高く評価される答案かというと、そうではありません。これは特に、昇進試験・昇格試験の場における小論文に言えることです。

  大学受験の小論文・作文は、この点実に気楽なものです。というのは、とりもなおさず「理屈として正しいこと」を自説とし、それに対してまっすぐに論証を行えば、それだけで「よい答案」と見なしてもらえるからです。

  これは就職試験においてもほとんど変わりません。大学受験の小論文と若干異なるのは、単に「自分自身が志望先企業にとって、いかにお買い得でよい商品か」ということを訴えねばならない、ということにすぎません。ここでは若干の「オトナの判断」が求められこそすれ、その論証過程は受験と同じで、「いかに理屈として正しいか」を読み手に投げかけるだけで済むのです。

  では昇進試験・昇格試験は、他と比べてどこが違うのでしょう。まず考えねばならないのは、上司同僚にとって、自己の部署にとって、そして企業にとっていかにこれが「いい話」であるかを主張せねばならない点です。これはおおざっぱにまとめて言ってしまいますと、「この話は儲かりますよ」とのことに他なりません。然り、何はさておき、企業人のレゾンデートル(存在意義)とは、お金を稼ぐことにあるからです。

  しかしちょっと立ち止まって考えると、これは就職試験の作文で求められるものとほとんどイコールです。自分を採ることによって儲かる話か、自分を昇進させることによって儲かる話か、この二者の違いにすぎません。もっとも、会社とか世の中とかを知らない学生と違い、その提案内容は具体的であることを求められますし、何よりもそれが実現可能であり、成功率が極めて高いこともまた必要条件となります。従って出来もしない大風呂敷を広げることはもちろん、何の根拠もなく論を書き連ねることは厳に慎まねばなりません。

  「自分は夢見てはいけない、地に足を付けなくてはならない、なぜなら学生ではないのだから。」
…これは、社内試験にいどむ全ての受験者にとって、片時も忘れてはならない箴言(しんげん:戒め)でしょう。

  ところが、これだけに気をつけていればいい、ということではないのです。もっと重要なこと、実に昇進試験の核と言えること、それは、読み手がどんな人たちであるかを見切って書かねばならないということです。言い換えると、上司同僚や会社にとっていい話を書いた答案が、必ずしも合格答案になるとは限らない、という、いささかうんざりさせられる「政治的配慮」が必要ということでしょう。

  ここではその最も極端な例、即ちネポティズム(縁故)によって、試験前に誰が昇進するのかが決まっている、というケースは除きます。なぜなら、この場合、既に文章うんぬんを議論しても仕方がないところで話が進んでいるからです。しかし仮に、選考が真っ当に行われたとして、いい答案を書いたからちゃんと評価されるだろうとの期待は、甘いと言わざるを得ません。詳細は後日に譲りますが、できのいい答案を書いた人をリストラし、どうでもいいことを書いた人を残しておいたという例はいくらでもあります。組織の一員である以上、人間関係=権力関係から目を背けることは、直ちに負けにつながりかねません。皆さんも、是非気をつけていただきたいと願っています。

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