慶応SFC添削コメント例[看護医療]14年

このコメントは、WIE小論文navi添削講座慶応大学小論文(論述力試験対策)で実際に行われたものです。


●添削を担当する中島です。よろしくお願いします。
 提出していただいた答案を拝見しました。解答者は、設問の要求の正確な把握が苦手なようです。まず問1については、前半部分の記述が設問の要求に対応している一方で、後半部分の記述は、設問の要求から外れています。設問の要求の範囲内のみで、答案をまとめてください。次に問2については、設問の要求に対応した記述は、答案冒頭部の4行だけで、以下の記述は、設問の要求から外れています。
 小論文で最も重要なのは、設問の要求を正確に把握した上で、設問の要求に対応した答案を作成することです。書きやすいことや書きたいことを答案にしてしまう誘惑を我慢して、まずは、設問の要求の正確な把握に務めてください。

●以下では、設問ごとに検討します。
■ 答案に書き入れました赤字が改善すべき点です。abc……の記号に対応するコメントは下段に記入してありますので御参照ください。記号のない箇所については、単純な誤記や分量調節のためのものです。


問1
 課題文が、「豊かさ感」をどのように説明しているか、200字でまとめることが要求されています。提出していただいた答案は、前半部分の記述が設問の要求に対応している一方で、後半部分の記述は、設問の要求から外れています。設問の要求の範囲内のみで答案をまとめてください。


a これが、「豊かさ感」の主張の核心部分です。適宜事例を盛り込んで、この部分をより丁寧に説明し、制限字数の200字を満たすようにしてください。

・「第一の自然」については、次の記述に注目すると良いでしょう。
 人間は、外の自然と共通で、外の自然と交流しあう、情緒的で、感覚的な、あるいは、食欲や性欲という生命力の表現をはじめとする身体的な

・「第二の自然」については、次の記述に注目すると良いでしょう。
 科学、技術、生産などにかかわる

・「他者との共存の中で生きること」については、課題文前半部の記述を参考にすると良いでしょう。
 人間もまた、相互に依存しあい、連帯しあいながら、社会の中に根を下ろし、労働や対人関係や自然との交流の中から、養分を吸収し、自分自身も社会にいくばくかのものを還元して、植物のように生の循環を繰り返す。

b これは、課題文に書かれている内容です。ただし、設問の要求から離れているので、優先して答案に盛り込む項目ではありません。先にコメントaに記したように、「第一の自然」や「第二の自然」、及び「他者との共存の中で生きること」の三項目について、制限字数内でより丁寧に説明することを優先してください。


問2
 提出していただいた答案で、設問の要求に対応した記述は、答案冒頭部の4行だけであり、以下の記述は、設問の要求から外れています。特に問題となるのが、どのような状態を、「調和して生きること」と解答者が捉えているのか、一切説明していない点です。


a 解答者は、工業に注目して具体例を挙げています。解答者が取り上げた具体例は、調和にそぐわないものとして妥当でしょう。この記述を残すのであれば、答案でこの後で述べる「調和して生きる」状態についても、「工業」に注目して作成したいところです。
 なお、より狭く「大気汚染」がない工業のあり方を、「調和して生きる」状態として説明しても構いません。

b 特に理由もなく「など」・「等」を用いると、文意が曖昧となり好ましくありません。提示する事例がひとつのときには、「など」・「等」を使わないようにし、提示する事例が二つ以上のときのみに限定して「など」を使うことを、お勧めします。
 参考までに「など」を用いた文例を示します。
【文例】
 大気汚染や水質汚染などにより

c 設問の要求から外れています。何を持って「調和して生きる」状態だと言えるのか、まずは説明してください。解答者が何をもって「調和して生きる状態」と捉えているか説明していないので、批判の対象が読み手にはわからず、そもそも何を議論したいのか、読み手には全く伝わらない文章になっています。

d 解答者は、調和により生じる課題を検討しようとしているものの、そもそも何をもって「調和して生きる状態」と捉えているか、解答者は一切説明していないので、ここに挙げた問題群が、調和により生じる課題なのかどうか読み手には判断できません。
 私が答案を読んだ印象としては、解答者が挙げている問題群は、「調和により生じる課題」ではなく、「調和がうまくいっていない例」に思えます。このように、読み手に解釈されてしまうと、解答者の議論は破綻してしまいます。

※優れた小論文とするには、答案に盛り込まれた重要概念の相互関係を明確にすることが欠かせません。このことを踏まえると、次の要領の答案を作成するべきでしょう。

【答案方針例1】
(1)調和にそぐわない具体例を一つ挙げる。
(2)その具体例の改善を通じて、どのようにすれば調和して生きる状態になるか解答者の考えを述べる。

【答案方針例2】
(1)調和にそぐわない具体例を一つ挙げる。
(2)その具体例が含まれる分野・領域で、解答者が考える調和して生きる状態を示す。
(3)(2)に示したものが、なぜ調和して生きる状態と言えるのか、理由を説明する。
※※これは、設問が直接要求していることではないものの、解答者の志望先が看護医療学部であることを考慮すると、できれば看護医療の領域から、「調和がうまくいっていない事例」及び、「調和がうまくいっている事例」を挙げて議論をしたいところです。これにより、課題文から学んだことを、看護医療に生かせる人材だとアピールできるので、読み手の心証が良くなります。
 ただし、これは些細なことであり、設問の直接の要求に対して、的確に対応した答案を作成することを優先してください。


 以上を踏まえて答案を修正してください。
 再提出の答案を心よりお待ちしています。


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