早大添削コメント例[政治経済学部グローバル推薦]16年

このコメントは、WIE小論文navi添削講座「早稲田大学推薦AO入試小論文」で実際に行われたものです。


●実際の提出順は不明ですが、事務局から15年の再提出と16年の初回提出を同時に受け取りました。このような場合には、出題年度の古い方から添削する原則です。しかし、試験日は近づいていますので、再提出の時間を確保するため、16年答案から添削いたします。
 今回は、通信欄でご質問をいただいておりますので、そちらから検討して参りましょう。
 改行した場合、それによって生じる余白がどう計算されるかですね。一般に、答案の字数を計算する場合には、改行のために生じる行頭・行末の空きも字数に含めます。したがって、例えば1行20字のマス目がある解答用紙で、制限字数400字という場合には、20字×20行、すなわち20行以内で書くことになります。
 小論文を書き慣れないうちは、課題文の内容把握であれ、解答者の見解であれ、書くことが見つからない=分量不足の問題が深刻です。しかし、小論文を書く力が向上してきますと、今度は「書きたいことの過剰」に悩まされることになります。
 既にこの段階に達しておいでですから、改行による字数のロスは避けたいとお考えでしょう。しかし、その一方で字数を節約するために、論旨が読み取りにくなった答案は、そのことが減点の対象になります。そのため、論点が変わって改段しない、重文・複文など長文の多用、概念の省略による文意不通などは、お勧めできません。
 この対策は、基本的には構想のメモの段階で、盛り込むべき重要概念の優先順位を考えることです。ただそれだけではなく、文章の技術として「短く書く」能力もありますと、取り上げている概念が豊富で、かつその関係付けが精密な文章が可能になります。いわゆる深い考察を示すことになりますね。
 なお、近年の早大政経グローバル入試では、多くの小問が、100~200字程度の制限字数です。また設問の要求も限定的なものですから、内容的に改段はまず必要ありません。ただし、例年制限字数が500字という設問があります。これに対しては、論点(重要概念)の選定にもよりますが、改段による改行が必要になる場合があります。
 ただ、いずれも何段落構成が適当か、という形式面での原則を立てるのではなく、あくまでも設問の要求に応えていく過程で、論旨の構成上段落を分けるべきかどうかを考えるべきです。

 さて、ここからはいつも通り、出題について簡単に見ておきましょう。小問の数やそれぞれの制限字数、さらにここの設問が要求している内容も、14年・15年と同じと言えますね。さらに、解答者に考えて欲しいこと、さらにいうなら大学側が入学者に望む能力という点でも、早大政経の出題は一貫しています。
 それは、一見客観的なデータであっても、それを詳しく分析すると、簡単には同意できないことを前提していたり、ある特殊な判断基準によって材料の取捨選択・分類がなされている事に気づいて欲しい、ということです。そして、単にデータを疑うだけではなく、暗黙のうちにある前提や判断基準を明確化し、その是非を考えて欲しい、ということです。
 この時、特に注意して欲しいのは、こうした前提や判断基準のない、純粋に客観的な見方だとか完全な中立性は、原則として存在しない、ということです。ある前提が判断基準を批判するのも、やはり何らかの前提があり判断基準があるのです。
 ここで大切なのは、多様な前提・判断基準の存在、もっといえばこうした差異を生み出す多様な世界観・社会観の存在を認めること、そしてこうした異なる立場からする見解が、相互に批判しあい論争することで、多くの人に支持される政策が生まれる、ということです。こうした生産的な論争に耐える能力があるか、これを判断することが、早大政経の入試問題の目標なのです。

 ここからはお送りいただいた答案を拝見して参りましょう。今回は、全ての小問に対して、初回提出から合格圏です。WIEの受講生で、昨年度合格された方はこの出題の添削を受けていませんので、あまり正確なことはいえませんが、実際の試験でこの答案を提出していれば、合格したと思われます。何事も慢心は禁物ですが、自信を持っていただいて良い水準です。
 したがって、全体を通して注意していただく問題はありません。早速ですが、小問ごとに見ていくことにしましょう。

 

問題1
 「説明」を要求する設問ですから、14年・15年の問題1と同様、解答者の主張・見解は不要です。設問の要求にそった課題文の内容把握=要約を示すことになります。
 今回は、ギリギリという限定なしの合格圏です。したがって、採点上問題となるような箇所はありません。一応、私ならこうする、といった指摘をしますので、再提出の参考にしてください。

(添削本文)


[解答は省略]


A:設問の要求・課題文の内容に対応してますので、特に減点にはならないと思います。ただ、設問文=下線で指定された課題文の一部では、「事実」は「異なる」とあります。現在の答案で「異なる」は盛り込まれていますが、「事実」は存在しません。答案で紹介した課題文のうち、どこが「事実」と対応するのか、明示しましょう。


 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。もっとも、お時間がなければ、採点上の問題はほとんどありませんので、再提出を省略されても構いません。

問題2
 グラフをかくことと、そのグラフの読図・分析がセットになって出題される年度と、両者が独立している年度がありますが、本年はグラフだけの出題です。設問は高い精度を要求していませんが、課題文にある数値の相互関係が正しく理解され、表現されているかが評価されます。この点全く問題はなく、文句なしの合格圏です。

(添削本文)


[解答は省略]


 改善点がありませんので、再提出の必要はありません。なお余談ですが、提出して頂いたグラフの中に破線が記入されていますね。全ての国のデータはこの線の下・右にあります。仮に、上・左にある国・地域があれば、そこでは女性の労働参加率が男性のそれより高いことになりますね。

問題3
 「説明」問題でありますが、課題文の論旨が対象ではなく、そこで示されたデータおよびそれを図化した問題2の解答であるグラフの読解・読図問題です。
 これは最新年度の問題であり、昨年までの受講生は挑戦していませんので、解答例は少ないのですが、他の受講生も苦戦しているようです。現在の答案もやや不正確であって、ギリギリの合格圏というところです。

(添削本文)


[解答は省略]


A:他の添削でも同様の指摘をしましたが、他の改善による字数増への対応です。内容的に問題はありませんので、最終的に字数に余裕ができる様でしたら、現在のままでも構いません。
a:受験テクニック的な指摘になりますが、設問文・課題文の重要概念はできるだけそのまま使用するのが、設問の要求に的確に応えるコツといえます。
B:この部分、誤りとまでは申せませんが、不適切です。ここで設問に応えるには、*で指摘した「日本とほぼ変わらない」という事実から、「より就労しているとは言い切れない」という判断を導く過程が必要です。これでは日本の労働力参加率の分析であって、「イタリア」との比較の視点が不十分です。
 ここで、問題2で作成した図を参照する方法に触れておきましょう。15年出題のヒストグラムに関して述べたことと関係しますが、課題文が言及している45度線(=男女の労働力参加率は同じ)との距離を見る方法です。全般的に参加率の低いイタリアは、日本より左下に位置するはずです。しかし、この時45度線との距離は、同程度です。言葉を換えて説明しますと、日本とイタリアを結ぶ線は、45度線とほぼ並行になるはずです。この様に問題2のグラフを参照させる方法もあります。
 もっとも、*が指摘できていれば、合格圏の最低基準は満たしています。


 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。

問題4
 1項目当たりの字数は150字と少ないのですが、3カ国=3項目ありますので、全体で450字となり、かなり多い字数ですね。お送りいただいた答案は、設問の要求を正確に理解し、適切に課題文の内容を要約しています。3カ国とも合格圏と申せます。
 ただし、致命的な減点にはなりませんが、いくつか改善すべき点があります。

(添削本文)


[解答は省略]


A:問題3のAと同じです。
B:この部分、この女性が、自らの子育てに配慮していないと誤解される可能性があります。課題文は、個人単位での育児放棄などを指摘しているのではなく、社会政策を問題にしています。「長期の育児休業制度が保証されていない」「厳しい環境」といった概念を課題文は使っています。
C:アメリカの例ではそれほど深刻ではありませんが、スウェーデン・ドイツ関する答案は、前文と後文の関係付けが無く、全体を貫く論旨がありません。これを改善しましょう。具体的には、前後を関係付ける接続の言葉を設定することです。これは、国語文法上の接続詞には限りません。前文と後文が重要概念(論点)を共有している、といった事でも関係付けができます。
D:Cで分量増が予想されますので、Aと同じく字数を節約することが主な目的です。たた、課題文の内容把握=要約をする際、「独特」(あるいは美しい、好ましい……)といった、価値判断部分だけを切り取っても、実態が分からない場合がほとんどです。もしここを割愛する必要がなくなるのであれば、「労働者と経営者が協議」「圧縮」などの概念を用いるべきです。


 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。

問題5
「本文」を「踏まえ」、「あなた自身の考え」を書け、という設問ですから、もっとも小論文らしい答案になりますね。それだけに難しい箇所なのですが、ほぼ完璧といって良い答案です。正直、改善箇所を指摘するのに苦労します。
 内容に大きな変化がない範囲でより簡潔な表現を紹介した上で、これによって生じた字数の余裕を使って、さらに考察を深めてもらうようにしました。


[解答は省略]


A:ほぼ同じ内容をより簡潔な表現してみました。ただ、現在の記述でも全く問題はありませんので、最終的に制限字数以内になるのなら、適宜復活させてください。
B:Aとは逆に字数が増えますが、概念の関係=論旨をより明確にする例です。他にもこのような箇所があれば、再提出の際、手を入れてください。
C:Bよりは深く内容に関わる問題点です。「親」には父親=男性も含まれます。したがって、育児が就労を難しくするとしても、それが「女性」=母親に集中するのは、保育所の数などとは別次元の問題ですね。この間の事情を詳しく書くことも可能です。
D:B・C同様、字数に余裕が出来れば、もう少し具体的に対策を書くことが出来るでしょう。


 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。
 大きな問題がないので、漠然としたヒントを出すだけにしました。それだけに、再提出答案を拝見するのが楽しみです。

 いよいよ最終課題ですので、ここで少し先回りをしておきましょう。この答案の再提出が終わりました段階で、是非復習をしてください。既に解答したテーマを再度やっても仕方がないのでは、とお考えになる方も多いようですが、小論文の場合、全く同じ答案になるということはありません。復習の際に新たに気付く課題文の概念の関係(=論旨)も多いものです。
 復習では、まず今までの添削結果を読み直してください。その上で、再度過去問に挑戦して解答を書き、この講座で添削を受けたものと読み比べてみてください。同じ「読みとりのミス」や「概念の関係の不整合」などをしていないか、チェックしていただきたいのです。復習の際、最初の時点で指摘された点が克服できていれば勿論問題はありませんし、復習の際に同じ問題点があっても、ご自分の「癖」を把握しておきますと、実際の試験の際、特に構想メモを作成する段階で、問題点に気が付くようになります。


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