WIE小論文navi:慶応大添削コメント例[文学部]05年(10)
このコメントは、WIE小論文navi添削講座「慶応大小論文(論述力試験・論文テスト)」で実際に行われたものです。
大学別小論文(慶大 文) 05年-2回目
(添削コメント)
大筋では初回のコメントに沿って修正を行って頂きました。小論文答案の完成度は前回よりも向上していますが、まだ全てにおいて完璧な合格小論文答案とすることはできません。以下のコメントをよく読み、復習しておいて下さい。
それでは以下、個々のコメントです。
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設問Ⅰ
大筋では「パラドクス」の説明に成功しています。こちらは合格小論文答案と判断させて頂きました。しかし、まだ一部に課題文の内容を正確に写し取れていないところが残っていますから、その点だけ修正しておきます。
a:文脈がとぎれています。適切なつなぎの言葉(文法用語に言う「接続詞」だけではありません)を用いてくっつけることが必要です。観念(=「これを書こう」という思いつき)は他の観念と関連づけませんと、概念(=他の思いつきと結びつけられた、文中で取り上げたものごと)にはなりませんが、文もこれと同じで、おのおのの文が適切に結びつけられていなければ、文章にはなりません。従って、前の文あるいは段落と、後の文あるいは段落がどのような関係になっているかを、つなぎの言葉を用いて読み手にわかりやすく説明しなくてはならないのです。
b:文章にねじれが生じています。「ことこそ…している」というのは文章表現上おかしいですね。ここは、「時こそ…している」とするか、あるいは「ことこそ…だ」という形にすべきでしょう。
c:筆者によれば、現代の若者にとって、個性は固定的であると同時に、自己に内在しているものです。この「自己に内在」という概念がなければ、自分の直感や感情に依拠してふるまう若者の行動を説明できませんね。
d:内発的感情を重視するのは、こうした個性観を持つ者にとって矛盾したことではありません。したがって、ここに逆説表現を盛り込むのは誤りでしょう。
e:課題文通りの記述を心がけましょう。
f:同じ内容の重複です。短い間隔で同じ内容が何度も出てくるのは、文の印象を損ないますし、「書くことがなくて埋め草に入れたんだな」という誤解を、読み手に与えかねません。簡潔を以て事とする小論文の原則から見て、必要のない記述は省くべきなのです。
したがって、重複する表現は省き、その代わりに筆者の示すパラドクスの過程をより丁寧に説明することで対応させて頂きました。
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設問Ⅱ
こちらはギリギリで合格圏外の小論文と判定させて頂きました。なぜなら、課題文の示す現代の若者の個性観と、お書きになっているものとに齟齬があるからです。
現代の若者は、個性を「感情に根ざしたもの」とは考えていません。個性の内在性を信じているだけです。「その結果、自分の内から湧きあがる感情こそ自分らしさととらえてふるまう」というのは、現代の若者の行動を筆者が分析したものに過ぎません。その違いを厳密にとらえて頂きたかったところです。
a:先に述べた通り、課題文の内容と齟齬があります。また、質問コーナーの回答者としては、少女の悩みに対して回答を述べるべきですから、課題文の抽象度の次元を下げ、少女の悩みに適用させながら説明しなければなりません。
b:具体的な悩み相談としては、解決策が漠然としすぎてしまいました。これに基づいて解決策を提案するなら、こうした信念や考えをどうすれば持つことができるかにまで言及する必要があるでしょう。
c:口語表現です。
以下に小論文解答例を示しておきます。これを暗記する必要はありませんが、課題文をふまえた少女の悩みへの具体的なアドバイスとはどのようなものか、参考にして下さい。
【小論文解答例】(20字×20行)
あなたはまだ成長過程にあるのですから、今の段階で確固たる自分らしさや個性を持っていなくとも、そんなに心配することはありませんよ。なぜなら個性というのは、生まれながらに持っているものではなく、あなたを取り巻く社会、例えば学校や家庭、友達などとの関係を通して、徐々に培っていくものだからですa。
ただ、その場の気分や付き合う相手に合わせ、感覚的に自分の行動を決めていては、いつまでたってもあなたの個性は育ちません。その前に少し立ち止まって、こうすればどうなるか、周囲にどう評価されるか、また自分はどんな人間として、社会に関わっていきたいのかを考えてみましょう。そして、導き出した答えに従って、行動してご覧なさい。確かにこれは、気分で動くよりも大変難しく、勇気のいることです。しかし、この努力を続けていけば、変わらないあなたの個性が、徐々に実感できるようになることでしょう。
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以上です。
WIE西早稲田教育研究所
大学別小論文担当
太田 玲