WIE小論文navi:慶応大添削コメント例[文学部]05年(3)

このコメントは、WIE小論文navi添削講座「慶応大小論文(論述力試験・論文テスト)」で実際に行われたものです。


大学別小論文(慶大 文) 05年-1回目
(添削コメント)
  設問1に関しては、初回から合格圏に到達していると評価できる小論文答案が書けています。ただし、設問Ⅱの解答を拝察するに、筆者が述べる本来の個性の在りようについて、少し理解が不足しているようでした。この点を修正し、再提出の際は、いずれも文句なしの合格小論文答案を目指して頂きたいと思います。

  それでは以下、個々のコメントです。
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設問Ⅰ
全般的によく書けていました。現在の小論文答案でも十分合格圏に到達しているレベルだと拝察致します。今回の修正は、すべて「こうすればさらに良くなる」との視点で入れさせて頂いたものばかりです。再度取り組む際は、記述を整理し、課題文の二次的に重要な概念を盛り込んで、答案の完成度を更に高めて頂きたいと存じます。

a:現在の記述ですと、何を放出しようとするのかが不明です。課題文の記述に照らせば、「現代の若者は、生理的な感覚や内発的な衝動にまかせてふるまう」とのことですから、ここはこのように修正した方が、読み手に対しても親切ですし、課題文の記述にも齟齬が生じないと考えます。
b:同じ言葉や内容の反復は、論旨を混乱させ、文章を理解しにくくするもとです。指示語を用いるなどして、できる限り避けましょう。
c:こちらも同内容の反復です。その代わり、課題文の「言葉によって構築された思想や心情が時間をこえて安定的に継続しうるのに対して」という部分を盛り込みますと、若者の個性が断片化する過程に関する情報がさらに増えますので、読み手には、解答の内容がより理解しやすくなりますね。c'の部分に、この内容を整理して盛り込みましょう。
d:ここは、パラドクスを段階的に説明しているというよりは、今まで述べたことの総括・補足的な記述だと思われます。したがって、接続詞も、そのことを明示したものに改めた方が良いでしょう。
e:主述にねじれが見られます。「…個性は、…自分でしかいられない」という文章はおかしいでしょう。「若者たち」を主語にすることで、ねじれを回避できます。
f:別の概念に含まれる副次的な概念も、同内容反復の一環です。削除した方が記述が整理できますね。ここでは、「固定的なもの」の中に「普遍的」という概念が含まれますし、「時間軸」の中には「過去から未来へ」という概念が含まれています(「過去から未来へという時間の流れ=時間軸」ということです)。
g:「却って」という一語を盛り込むことで、これが「パラドクス」であることを明確に読み手に伝えることができます。
h:重要概念は、設問・課題文の表記を忠実に写し取るようにしましょう。
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設問Ⅱ
  設問の指示に沿い、相談コーナーの回答者として小論文解答をまとめられた点は、非常に評価できます。しかし、冒頭のコメントでも少し触れましたが、筆者の見解をやや曲解してしまっていると思われる記述がありましたので、ギリギリ合格圏外の小論文と評価させて頂きました。
  お書きになったものを拝見しますと、個性を「変化し続けていくもの」と捉えているようですが、筆者はそのような見解を持ってはいません。筆者は、本来的な個性の在りようについて、社会の中で他者との比較によって発見し、社会的な成長(社会的基準の獲得、言葉による思考・心情の構築)を経て、一貫した自己を構築していくと述べていますね。
  筆者の指摘する現代の若者の個性観を援用して少女の悩みに応えるならば、この点を外してしまうと、論理的な矛盾が発生してしまいます。書き直す際は、この点を解決するよう、頑張ってみて下さい。

a:課題文の記述と齟齬があります。その場の雰囲気や気分に応じて、その都度自分のふるまいを直感的に決めていては、いつまで経っても「一貫した自分(=アイデンティティ、個性、自分らしさ)」を感じることはできません。筆者の言う「他者との比較」とは、「他の人に比べて自分は歌がうまい」「社会の多くの人に比べれば、私は文才がある」ということです。これは比べる対象(=社会)が変化すれば変わりますが、気分やその場の雰囲気で変わるものではありませんね。
  従って、直感的にふるまうと、自己意識が断片化してしまうという筆者の記述に異論がないならば、ここはこのように記すべきではないでしょう。確かに、友達による変化は、個性につながる可能性があります。しかし、彼女はまた、「気分次第で自分が変わる」とも言っていますね。これは、課題文筆者の言う、生理的な感覚に依拠した自己が断片化している例ではないかと思われます。したがって、その時々の気分で行動するのではなく、その結果周りの皆は自分をどう思うか、そう思われても本当に構わないかどうか、よく考えてから行動に移すべきことを指摘すべきでしょう。
  なお、友達による変化についても、そのまま受け入れずに、やはり考えることが重要です。結果として友達に合わせても良いのですが、それが自分の本意なのかどうか考えることが、「一貫した自分」を感じる過程につながっていきます。要は、自分の行動方針(=言葉によって構築された思想や心情)を完成させることが、一貫した個性を備えた、「成長した自分」に至る道だということですね。
b:前文と後文との関係が不明確です。両者のつながりを明確にするような、つなぎの言葉を挿入するか、いずれかを削る方向で考えてみて下さい。
  私見ですが、私なら前文を削ります。なぜなら、彼女が筆者の言う内閉的個性志向の持ち主なのだとすれば、自分らしさの構築に関して、そもそも他者の存在を必要としていないことも十分に考えられる話だからです。つまり、回答者が誤った推論を展開することで、回答そのものの信頼性が弱まることになるので、それを避けたいということですね。
c:不安な彼女を安心させる一言が盛り込まれています。相談コーナーの回答者としては望ましい態度ですね。高く評価できます。
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  以上です。
WIE西早稲田教育研究所


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