WIE小論文navi:慶応大添削コメント例[文学部]05年(4)
このコメントは、WIE小論文navi添削講座「慶応大小論文(論述力試験・論文テスト)」で実際に行われたものです。
大学別小論文(慶應大・文) 05年-1回目
(添削コメント)
課題文の内容を概略的には把握できているようですが、細かいところで誤解があるようです。また一部、不適切な言葉を用いているところもありますね。自分では正確に理解していても、それを伝える際の文章表現に誤りがあれば、結局読み手は、「書き手の理解度」はこの程度だと判断してしまうでしょう。文字にされたことしか読み手には伝わらないのですから、自分が書いた言葉を吟味し、間違いのないよう文章化する技術を身に付けて頂きたいと思います。
それでは以下、小論文の設問ごとに改善のためのコメントを入れていきます。
設問Ⅰ
パラドクスについて大まかには理解できているようです。「個性は自己に内在し、すでに完結しているものと認識するがゆえに、内発的な衝動こそ自分らしさだと解釈するが、このような感覚は刹那的なものでしかないため、かえって自己意識が断片化・拡散し、持続した個性を認識できない」ということですね。あとは、限られた字数にまとめる際に生じたと思われる言葉の誤用や課題文との齟齬を修正していけば、申し分ない合格小論文答案となるでしょう。
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a:言葉の誤用です。「属性」とは「あることがらに備わる固有の性質」という意味であり、「個性」とかなり重複する言葉です。しかし課題文中には、自らに備わっていない(=「属性」ではない)性質についても、若者たちは「ある」と思いこんでしまう、と書かれていました。このように、課題文の記述と意味上のズレが生じてしまっていますから、ここは小論課題文にあるとおり、「個性を本源的に自己に備わった実体として捉える」などの表現を使った方が良いでしょう。大事なのは、「自分の中に既にあると思いこんでいる」という部分を抽出することです。
b:若者たちがなぜこのようなふるまいをするかについて、少し説明が必要だと思います。つまり、社会化の必要性を感じていないということですね。この「社会化」と若者たちとの関係について、答案に盛り込めば、より丁寧な説明となります。
簡単に言えば、「個性とは本来、社会生活の中で構築していくものだが、現代の若者は、これを本源的に自己に備わった実体の発現過程として理解している。従って、社会化により自己を成長させる必要を感じず、自らの身体的感覚を、自分らしさの根拠としている。」だからこそ、内発的で自然な感情のあり方を重視し、そのままにふるまおうとしているのでしょう。
c:接続詞が不適切です。「ゆえに」は前文が後文の原因・理由となっていることを示す語ですが、この一文は今まで書いてきた内容のまとめにあたる部分です。従って、「このように」「こうして」などの接続詞を使うべきでしょう。
d:課題文の概念はそのまま用いましょう。「パラドクス」とある以上、その通りに表記すべきです。
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設問Ⅱ
新聞の相談コーナーの回答者として、文章を工夫されている点は大変良いと思います。ただ、少女の投稿内容を正確に理解していないと思われる部分や、日本語として不正確な記述が散見されます。
なお、重要なのは、「個性とは本来どのようなものか」「個性を構築するためにはどうすればよいか」を教えてあげることです。拝読していますと、後者については触れられていたようですが、前者については記述がありませんでした。再度取り組む際は、これにも簡単に触れれば、小論文答案としての出来映えがさらに良くなるでしょう。
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a:ここで、少女に関して問いを投げかける形で、「個性とは本来どうあるべきか」を述べましょう。重要なのは、「個性は社会化によって構築していくものであるから、あなたの個性は、まだ十分に育っていない状態にあるのだ」ということを、彼女に教えてあげることです。
b:課題文誤読。少女は、「つきあう友達によって」変わる、と書いています。これを読む限り、「その時々の気分で友達に接する態度が違う」ということではなく、友人が複数おり、そのうちの「誰と一緒にいるかで、自分のふるまいが変わる」ということを言いたいのだと思います。
c:課題文誤読。「気分を変える」のではなく、「気分によって」自分のふるまいや感じ方が変わるということですね。
d:「あなたがどういった個性をもっているか見極める」という記述は、課題文に照らして誤りです。個性は、社会生活を営む中で、他者との関係の中から生まれてくるものです。この部分の記述は、「あらかじめ我々の内部に個性が存在する」ということを意味しますから、結局少女と同様の考え方を、回答者が持っていることになってしまいます。
e:ここも課題文に照らせば、「個性を育てる」などとすべきでしょう。
f:目的語が欠けています。「何」を他人と比べるのですか? 「まず、自分と他人とを比べ、どこがどういうふうに違っているのか、調べてみる必要がある。」などといった形で、何を比べるのか、明確に示して下さい。
g:問題解決策を提示したのは評価できますが、ただ比較せよというだけでは、アドバイスとしてやや不足していると考えます。
比較により他人と異なっている点をあぶり出していくだけではなく、あぶり出した上で、社会の中でこのようなポジションにありたい、こういうふうに人と接したいという目標を持ち、それに近づくように自分を変えていくことも可能ですね。これもまた、立派な個性の構築方法の1つと言えるでしょう。
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以上です。もう小論文答案提出期限まで時間がないかもしれませんが、再度書き直してみて下さい。もし、提出期限後に再提出答案の添削をご希望の場合、「持込小論文添削(文系):http://www.wie.co.jp/syo/koza/moti_bunkei.htm」の単独添削で申し受けます。ご検討頂ければ幸いです。
WIE西早稲田教育研究所
太田 玲
【通信欄について】
「名文家になろう」とは、面白いゼミがあるものですね。「要約ばかり2ヶ月も」とご不満なようですが、上手な文章に触れることも、初心者には大切なことですよ。語彙を増やし、日本語の巧みな表現を学ぶことにもなりますから。ただ、新聞や雑誌記事の要約を延々繰り返すようでは、「名文家」への道としては、あまり適切でないように思いますが。
小論文執筆の際に求められるのは、「書き手の意図を正確に読み手に伝えること」です。ですから、そのゼミを履修する中で、日本語を自在に操り、芸術の域に達した「名文家」とはいかないまでも、苦手意識を克服し、レポート作成が苦にならないくらいに、文章が書けるようになれたらいいですね。