WIE小論文navi:慶応大添削コメント例[文学部]05年(6)

このコメントは、WIE小論文navi添削講座「慶応大小論文(論述力試験・論文テスト)」で実際に行われたものです。


慶應大学小論文(文学部) 05年-2回目
(添削コメント)
  前回のコメントを受けて修正して頂きましたが、修辞や論理的思考の点で、まだ修正すべき箇所があります。
  特に文学部では、他学部と異なり、修辞の面での採点は厳しいと思われますので、注意が必要です。今のうちに国語の教科書などで良著に触れ、正しい語彙・文法・文構造などを認識しておいて下さい。

  それでは個々のコメントです。
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設問Ⅰ
  前回小論文答案上に書き込んだ修正については、ほぼ反映されていると言えますが、それに伴う概念の補足が行えていません。なお、日本語として正確な文章を綴ることも、小論文の試験では欠かせない要素となってきますから、今後はこの点にも留意して下さい。一例ではありますが、小論文解答例を示しましたので、参考にして頂ければと思います。
  なお、「段落に区切らなかったがよいか」とのことですが、この解答は、全体で「筆者のパラドクスの構造」を説明しており、内容上の変化はありません。ですから、段落を設ける必要はないと考えます。
  段落を改める際の原則は、あくまでも「書き込んだ内容」=「書く前に頭の中で整理した視点や問い」が変わる箇所で入れる、と心得てください。無意味に改段するのは、読み手が文の論理を把握するのを妨げ、文の評価を下げますので有害です。また文脈が大きく転換しているにもかかわらず、段を改めないのは、同様に有害です。

a:若者の個性を説明する前に、個性の本来のあり方について触れておくと、読み手の理解が増します。
b:同じ内容の反復は、文章を分かりにくくするもとです。整理して展開しましょう。こうすれば、小論文答案に盛り込める概念が増えます。
c:「近頃の若者の個性の捉え方」と「近頃の若者のふるまい方」との関連性を、適切に説明できていません。個性が内在化していると考えるからこそ、自らの内発的な衝動を個性の発露と捉えて、その通りに振る舞うのでしたね。
d:bと同様。その上で、「こうした感情は時間を超えて存在しない、その場限りのものであるので」という説明を盛り込みます。これがなければ、なぜ自己意識が断片化するのか、説明できません。
e:これは、筆者の指摘するパラドクスを説明するには、不要な記述です。他との関連性のない、孤立した文章は、文章全体の意味の流れを中断させ、読み手の理解を損なうものです。十分注意して下さい。

【小論文解答例】(20字×17行)
  個性とは本来、社会生活をする中で次第に構築されていくものだがa、近年の若者は、個性をあらかじめ持って生まれてくるものと信じ、自己の内面を探索することで、それを獲得しようとする、内閉的個性志向*を持っている。そのため彼らは、自分の生理的な感覚や内発的な衝動に「自分らしさ」の根拠を見出そうとしc、それに従ってふるまう。言葉によって構築された思想や心情が時間を越えて安定的に継続しうるのに対して、こうした感覚や衝動は、刹那的なものであるd。したがって、これらに基づく自己意識は断片化し、拡散してしまうため、彼らは持続した個性を実感できない。ここに、完成した個性を持っていると認識しているがゆえに、かえって個性を消失してしまうという、筆者のパラドクスが生じる。

*:課題文内にある、若者の個性を表した重要概念です。これを答案内に盛り込むと、さらに申し分のない合格小論文答案になるでしょう。
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設問Ⅱ
  前回の指摘に従い、部分的な修正はして頂きましたが、まだ改善の余地はあります。彼女の感情・考えを視点にして説明するよりも、外界を軸にして説明した方が、彼女の今の個性観(内閉的個性志向)との差が分かりやすくなりますので、回答としてはそちらの方が有効でしょう。

a:視点が、内閉的個性志向の域を出ていないようです。個性とは、自分の中にあるものではなく、社会生活をしていく中で、他者との比較の中から培っていくものだということ、また彼女の個性は、まだ発展途上だということも教えてあげましょう。
b:彼女のいままでの状態を肯定しかねない表現です。「付き合う友達」によって「自分」が変わるというのは、やはり問題でしょう。彼女には、考え方や信念という面で友達に影響を受けることはあっても、基本的に一貫した個性を、次第に育んでいけばよいと考えるようになってもらいたいですね。
c:これでは、もともと各自の中に個性があるはずだ、という内閉的個性志向の域を出ません。ここは、「いつまでたっても一貫した個性が育たない」と指摘すべきでしょう。
d:視点を「あなた」中心に据えると、内閉的個性志向と社会的個性志向の差が、明確にできません。例えば、「個性とは、あなたがこの社会の中でどのように存在するかという自覚であり、同時にこの社会に生きる他の人びとからも、それがあなたなのだ、と一貫して認識してもらえるようなものを言います。」など、社会と個性との関係が分かるように説明できればいいですね。

【小論文解答例】(20字×20行)
  あなたはまだ成長過程にあるのですから、今の段階で確固たる自分らしさや個性を持っていなくとも、そんなに心配することはありませんよ。なぜなら個性というのは、生まれながらに持っているものではなく、あなたを取り巻く社会、例えば学校や家庭、友達などとの関係を通して、徐々に培っていくものだからですa。
  ただ、その場の気分や付き合う相手に合わせ、感覚的に自分の行動を決めていては、いつまでたってもあなたの個性は育ちませんbc。その前に少し立ち止まって、こうすればどうなるか、周囲にどう評価されるか、また自分はどんな人間として、社会に関わっていきたいのかを考えてみましょう。そして、導き出した答えに従って、行動してご覧なさい。確かにこれは、気分で動くよりも大変難しく、勇気のいることです。しかし、この努力を続けていけば、変わらないあなたの個性が、徐々に実感できるようになることでしょう。
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  以上です。

WIE西早稲田教育研究所
慶応大学小論文担当
太田 玲


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