WIE小論文navi:慶応大添削コメント例[文学部]05年(9)

このコメントは、WIE小論文navi添削講座「慶応大小論文(論述力試験・論文テスト)」で実際に行われたものです。


大学別小論文(慶大 文) 05年-2回目
(添削コメント)
  初回のコメントに沿って小論文を修正して頂きました。文章としての完成度は格段に向上しています。ただ、合格答案と判定するまでには、まだ課題文通りの概念の再構成や、記述の精度が不足しています。今回は、ギリギリで合格圏外の小論文、と判定させて頂きました。
  とはいえ、実力は格段に向上していますから、ご安心下さい。小論文答案を書き上げた後見直しをして、重複する記述はないか、不要な記述はないか、課題文の内容と齟齬はないかなどといった点をチェックする習慣を付ければ、C様の文章作成力は格段に向上するでしょう。引き続き怠りなく、勉強を続けていきましょう。

  それでは以下、個々のコメントです。
────────────────────────────────────────
設問Ⅰ
  前回のヒントに沿って改善されましたが、重要でない記述や重複する表現がある点が気になります。また、逆説を示す重要な語を省いてしまったため、ギリギリですが合格圏外の小論文答案と判定致しました。わずかな修正ですが、これのあるなしで文章から伝わる内容が変わってしまいます。こうした語の働きについても注意が必要ですね。

a:間違いではないのですが、これよりも「自分探し」につながる考え方を説明した方が、次につながる文章になります。「そうした個性を自分の中から掘り起こして磨けばよい」と考えているからこそ、自己の内発的な感情や衝動を「個性の発露」ととらえ、それに従って行動するのですね。
b:現状では、内発的な衝動に従ってふるまうと、なぜ一貫したアイデンティティを感じとるのが困難になるのか、不明です。その点を明らかにする説明を前段で加えるべきでしょう。
c:前半部と重複する記述が目立ちますので、記述を改めましょう。
d:この一言がありませんと、「逆説」を明確に示すことができません。
e:あっても間違いではありませんが、なくとも意味は通じます。設問文の繰り返しになりますし、bの修正で字数が増えることもありますので、ここは割愛しましょう。
────────────────────────────────────────
設問Ⅱ
  一転して課題文筆者の見解に沿った小論文答案となりましたね。論理矛盾や課題文との齟齬がない点は結構と存じます。ただ、相談コーナーの回答としては、恣意的な解釈に基づいている点や、抽象度が高すぎる内容であることが問題でしょう。従って、設問への対応不十分と判断し、今回も合格小論文答案とは判定致しませんでした。少女の具体的な悩みをとらえて記述して頂きたかったところです。
  少女の悩みを答案の内部に生かした小論文解答例を、以下でご紹介しておきました。参考にして下さい。

a:課題文筆者の考えを丸投げしても、少女は戸惑うばかりです。
  なぜこのように解釈したのかを示してあげないと、少女が「なるほど私はこういう風に考えていた」と納得し、後に続くC様の提案に耳を傾けてくれないでしょう。また、彼女の悩みは、「私には個性などないんじゃないか」というものですから、この点への明確な対応も、回答には必須の要素になります。C様の答案には、残念ながらこれに該当する記述が見あたりません。
b:そのためにはどうすればよいのかを具体的にアドバイスしてあげないと、少女にはどうしていいのかわからないでしょう。
  実際にどうやって悩みを解決していけばよいのか、それを明示できないのなら、机上の空論を一方的に展開しているだけ、と評価されてしまいます。具体的な悩みに即して、どのように対処していけば良いかを示すことが、この設問で求められていることなのです。
  お書きになっている小論文そのものの完成度がいかに高くとも、設問の指示に沿わなければ、評価は低くなってしまうのです。まずは設問で展開されている、答案を書く上で守るべきルールを把握してから、小論文答案を作成するようにしましょう。

【小論文解答例】(20字×20行)
  あなたはまだ成長過程にあるのですから、今の段階で確固たる自分らしさや個性を持っていなくとも、そんなに心配することはありませんよ。なぜなら個性というのは、生まれながらに持っているものではなく、あなたを取り巻く社会、例えば学校や家庭、友達などとの関係を通して、徐々に培っていくものだからですa。
  ただ、その場の気分や付き合う相手に合わせ、感覚的に自分の行動を決めていては、いつまでたってもあなたの個性は育ちません。その前に少し立ち止まって、こうすればどうなるか、周囲にどう評価されるか、また自分はどんな人間として、社会に関わっていきたいのかを考えてみましょう。そして、導き出した答えに従って、行動してご覧なさい。確かにこれは、気分で動くよりも大変難しく、勇気のいることです。しかし、この努力を続けていけば、変わらないあなたの個性が、徐々に実感できるようになることでしょう。
────────────────────────────────────────
  以上です。

WIE西早稲田教育研究所
大学別小論文担当
太田 玲


・講座開始のご案内 (2010/8/4)  ≫詳細