WIE小論文navi:慶応大添削コメント例[文学部]06年(2)

このコメントは、WIE小論文navi添削講座「慶応大小論文(論述力試験・論文テスト)」で実際に行われたものです。


大学別小論文(慶大 文) 06年-2回目
(添削コメント)
  初回のコメントに沿って修正して頂いた結果、改善されてはいますが、まだ改善の余地があります。設問Ⅰに関しては、もう少し課題文に沿った記述にして頂きたかった点、設問Ⅱに関しては、日本語として文意が通じない部分がある点が問題でした。それぞれ、以下に詳しくコメントしますので、ご確認下さい。

  設問Ⅱに関しては、残念ながら文意不通のために大幅に減点されてしまうでしょうが、設問Ⅰについては、他の受験生のレベル如何であるいは合格した可能性がある、という状態です。少しずつでも進歩していますので、焦らずめげずに取り組んでいきましょう。

  それでは以下、個々のコメントです。
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設問Ⅰ
  大筋では問題ないのですが、1カ所重要概念の取りこぼしがありましたので、指摘させて頂きます。それは、「測定社会の支配対象が人間にまで及んだ」ということです。これを盛り込みませんと、筆者の衝撃について、正確に説明できません。

a:上に述べた重要概念を補いました。
b:社会の構成員は確かに人間(=私たち)ですが、ここで筆者の視点は、社会の構成員である「我々」ではなく、「社会」にあります。筆者は、荒廃した社会の状態、社会がどのように世の中を変えていったかを課題文を通して述べているわけです。
  それに沿って、ここでもあくまで行為の主体は「社会」として述べるべきでしょう。課題文の内容説明を行う際、課題文を越える記述を小論文でしてしまうと、大幅な減点対象になってしまいます。些細な記述の違いでも、意外に大きく減点されてしまうこともありますので、注意して下さい。

  以下、小論文の答案例を示しておきます。参考にして下さい。
【答案例】(99字)
  現代社会は自然を科学的な計算によって操作、利用することで存続してきたが、その支配欲が人間にまで及び、逆説的な結果として「測定不能」の「生活破壊」、すなわち計り知れない苦しみが人々に加えられたから。
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設問Ⅱ
  ご自身の解釈を加えて頂いた点は評価できるのですが、残念なことに、課題文の記述を展開している部分で一部日本語として不正確な表現がありました。私の方で修正しておきましたが、再度課題文を読み直し、確認しておいて下さい。

a:まずは設問に的確に応えるよう、「失明した社会=個人を見ることをせず、目前の未来が見られなくなった社会」という自説を展開しましょう。
b:小論文では、「私は考えた」という表現は自明のことですので不要です。これを書くよりも、課題文の記述を使い、「失明した社会」について詳しく説明した方が、答案の完成度が高くなります。
c:文意不通です。課題文を自説に沿って展開する際は、「何がどうした」の整理を十分行ってから書き始めるように心がけましょう。
  今回は赤字によって修正を行いましたが、修正後の文意が意図していたものと違うならば、ご自分で再修正を行って下さい。
d:ご自身の見解と課題文の見解とを区別するため、これが課題文からの引用であることを示す配慮が必要です。
e:冒頭で示した自説に正確に対応させましょう。

  こちらについても小論文答案例を提示致します。これが唯一の正解というわけではありませんが、自説の主張の仕方、その際の課題文の使用法について、参考にして下さい。
【答案例】(400字)
「失明した社会」とは、現代社会が経済社会として、盲目的に利益を追求してきた事実を示しているだろう。この社会は目的合理性の追求に極度に固執することで、薬害被害者をはじめとする他者の苦しみに対してこの上なく鈍感になっている。「中身を問わず何事かを行うこと、何かをつくりだすことそれ自体に対して肯定的」で、「正負」つまり善悪の判断なしに経済成長に邁進することは、産・官・学の共犯関係の上に成立している。万物を加工の対象としてきた経済社会は、遂に人間さえも対象化するに至り、その結果人々の間の信頼は分断され、「自己意識なき荒れ地」としての現代社会が出現している。そしてこの傾向は、クロロキンが大戦中に開発されたという事実が示すように、「治癒する肉体」にも「病気とつきあう体」にも目差しを向けず、ただ「根治」「根絶」のみを目指しており、20世紀の全体主義の「根こそぎ」「皆殺し」の思想と通底しているという。
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  以上です。


WIE西早稲田教育研究所


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