WIE小論文navi:慶応大添削コメント例[文学部]06年(3)

このコメントは、WIE小論文navi添削講座「慶応大小論文(論述力試験・論文テスト)」で実際に行われたものです。


慶應大学小論文(文学部) 06年-1回目
(添削コメント)
  前回の小論文答案と比較しますと、完成度が高くなりましたね。まだまだ検討の余地はありますが、合格圏にかなり近づいた小論文答案と言えるでしょう。
  今回の問題は、課題文の内容説明に終始しており、純粋な小論文解答者の見解を求める設問はなくなっています。このため、単なる国語の問題と捉えて小論文解答を作成しがちですが、それは間違いです。これはあくまで、「小論文試験」の問題です。
  特に設問Ⅱの小論文解答作成には、国語の問題に顕著な、課題文中の一部抜粋や、傍線部近辺の要約の技術では太刀打ちできません。課題文全体の内容を理解した上で、それを自分なりに再構成し、論理が首尾一貫した1つの解釈を作成するよう求められているのです。この「自分なりに再構成」という部分に、小論文としての要素があると言えるでしょう。

  このことをふまえた上で、個々のコメントをしていきます。
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設問Ⅰ
  「衝撃」とは、「ショック」という言葉で代用できるように、精神的に強く動揺した、という意味です。一方、G様の小論文解答は、「この被害を率直に表した言葉だと感じたから」というものです。これでは、筆者が「なるほどうまく言い表しているなあ」と感心、あるいは納得したとしか読み取れません。
  再提出では、筆者が「測定不能」という言葉に「強い精神的動揺」を感じた、その理由を説明して頂きたいと思います。
 
a:課題文の内容をよく抽出できているのですが、欲を言えば、もう少し正確に表現して頂きたかったところです。「自己の欲望を貫こうとしたばかりに」とありますが、これでは、貫こうとして結局貫かなかったようにも読み取れてしまいます。実際は、自己の欲望を貫き、「その結果」生み出されたのが「測定不能の生活破壊」ということでしたね。
  また、「測定社会」がその欲望を貫いた結果、「測定不能」の状態が生じたというのは、非常に逆説的です。この関係も、字数に余裕があれば盛り込むとよいでしょう。
b:上にも述べましたが、この書き方ですと、なぜ筆者が「測定不能」を「衝撃的な文字」と受け止めたのか、説明できていません。「衝撃的に受け止めた」とあるからには、筆者は、その文字が自分を精神的に強く動揺させたと感じたのでしょう。
  この動揺の理由を、的確に説明しなければなりません。具体的には、この部分の記述を全面的に改め、「そのこと(Xで示した内容)に衝撃を受けたから。」などの記述で結ぶことです。
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設問Ⅱ
  ここは課題文の記述をもとに、「失明した社会」とはどのような社会のことか、ご自身の解釈を示すことが求められています。従って、現状のように、冒頭で課題文の内容をまとめていくのではなく、まずは「失明した社会とは、○○な社会のことである。」とご自身の解釈を述べて下さい。その上で、その解釈を裏付ける課題文の記述を、まとめて言って頂ければ、小論文解答として申し分のないものになります。

a:これは課題文の要約であって、「失明した社会」に対するご自身の解釈の裏付けとしては不十分でしょう。ご自身の解釈である「失明した社会=人を人と見ることができていない社会」という解釈の裏付けとなる記述を課題文から選び、根拠として提示して下さい。
  また、現状では、課題文の重要概念を一部だけ抜粋してしまったため、課題文の内容と異なってしまったところも見受けられます( 参照)。十分注意し、課題文の概念の再構成を行うよう注意して下さい。
b:まずはこの部分を、小論文答案冒頭で明らかにしましょう。「失明した社会」とあるからには、「何かが見えなくなった」、あるいは「何かを見る(感じる)力を失った」社会といったように、「失明」との関係性を明確に示さなければならないのですが、この点G様は配慮されているので、評価できます。
  あとは、このように考えた理由を裏付けるものとして、課題文の記述の中で該当するものを挙げながら、この「人を人と見ることができていない」ということは具体的にどういうことか説明して頂ければ、合格圏の小論文答案となるでしょう。 
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  以上です。

WIE西早稲田教育研究所
慶応大学小論文担当
太田 玲


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