WIE小論文navi:慶応大添削コメント例[文学部]06年(6)

このコメントは、WIE小論文navi添削講座「慶応大小論文(論述力試験・論文テスト)」で実際に行われたものです。


大学別小論文(慶大 文) 06年-2回目
(添削コメント)
  初回のコメントに沿って小論文を書き直して頂きました。格段の進歩が見られます。ただ、文句なしの合格小論文答案というわけではありません。修辞上の問題を解決し、さらに緊密な議論を目指し、設問との整合性を高めていくためのアドバイスをさせて頂きます。

  それでは以下、個々のコメントです。
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設問Ⅰ
  必要な概念は、全て小論文答案内に盛り込めています。ただ、修辞上修正が望ましい部分がありますので、その点だけ修正しました。

a:「測定社会」が主語となっているのですから、受動態ではなく能動態で示すべきでしょう。
b:「測定不能の生活破壊」がどこで発生したのかを明確にしておいた方が、読み手の理解が深まりますね。
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設問Ⅱ
  これはこれで1つの小論文解答として成立していますが、「失明」の解釈について、概念規定が若干不明確です。具体的にどういうことなのか、クロロキン被害者の例を持ち出すなどして、丁寧に説明して頂きたかったところです。
  今回はこれで合格小論文答案としますが、以下に小論文の別解を示しておきます。これが唯一絶対の正解ではありませんが、「失明した社会」を「自らの行為に目を向けられなくなった社会」と解釈し、その構造を明確に説明している点に注目して下さい。ここまで丁寧にする必要はありませんが、「なぜそのように解釈したのか」が明確な解答を目指して頂きたかったところです。

a:「社会の基礎となる個々人」なのですから、ここで「達」とすると文意が通じません。
b:読点が不足しています。読点(、)をどこで用いるか、との原則は難しいところですが、文脈が変わる箇所、主部と述部の間、目的語(「~を」で終わる部分)の後には入れておくのがセオリーです。また、一文の中で一カ所も読点がないのは、読み手に対する配慮を欠きます。よほどの短文でない限り、1つは入れておきましょう。論より証拠、一度この文を、お入れになった読点通りに、声を出して読んでみて下さい。おそらく口が渇くか、くたびれると思います。実際に音読してみれば、自然に息継ぎをする箇所が、記した箇所より多く出てくるでしょう。もちろん、論作文は声に出して読まれることはほとんどありませんが、それでも文字がぎっしり詰まった記述を見て、読み手は「うっ」と困惑するはずです。

【小論文解答例】(20字×20行)
  失明した社会とは、本来人間関係の基礎をなすべき信頼が失われ、社会関係さらには個人の断片化・無力化が進んだ結果、自らの行為の中身に目を向けられなくなった、現代の経済社会のことである。正負を問わず間断なく物を生みだしつづけることが経済成長の中身であるため、この社会では何かを作り出すことそれ自体が肯定的に捉えられ、逆に生み出さないこと、差し控えることは「無為」として否定される。課題文の例で言えば、クロロキンの薬害報告からその製造中止までの十年以上の間に、ある個人に対し数千錠が投与されたという。これは紛れもなく、企業・役所、病院などに所属する個人の行為の集積だが、こうした社会が前提となっているため、人々は自らの行為の中身に目を向けず、20世紀に特徴的な全体主義的思考のもと、患者を治癒すべき人間ではなく、一方的な根治の対象とみなしてその行為を徹底させていったのである。
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  以上です。

WIE西早稲田教育研究所
大学別小論文担当
太田 玲


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