WIE小論文navi:慶応大添削コメント例[法学部]05年(2)
このコメントは、WIE小論文navi添削講座「慶応大小論文(論述力試験・論文テスト)」で実際に行われたものです。
大学別小論文(慶大 法) 05年-2回目
再提出して頂いた小論文答案を拝見しました。修正するべき箇所が残っているものの、把握しなければいけない最低限の設問の要求をおさえています。このことから、WIEの基準ではギリギリ合格圏の小論文です。なお、実際の試験では、現在のA様の小論文答案の水準と同等の方からも、合格した方は多数いたと思われます。
以下では、残っている問題点を指摘して参ります。
それでは、提出された小論文答案に対して具体的な改善コメントを記していきましょう。
■ 答案に書き入れました赤字が改善すべき点です。abc……の記号に対応するコメントは下段に記入してありますのでご参照下さい。記号のない箇所については、単純な誤記や分量調節のためのものです。
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a 課題文の要約はこのままでいいでしょう。
前回課題文の内容に補足説明しましたが、更に追加して補足説明をしておきます。
ドイツのワイマール憲法は、世界に先駆けて「普通選挙」という優れた仕組みを導入したのですが、それにもかかわらず、ナチスの暴走が起きてしまいました。このナチスの暴走、あるいはドイツのファシズムについて、多くの研究者が、その原因を探っており、様々な説が唱えられています。例えば、当時のドイツが第一次世界大戦に敗れ、多額の賠償金の支払いに苦しめられていたことなど、当時のドイツが抱えていた社会不安が背景にあるのではないかなどです。
さて、課題文の筆者は、「いくら優れた仕組み(=政治制度)を作っても、魂がこもらなければ(=共通善を志向しなければ)うまく機能しない」という視点で、ナチスの暴走を解釈しています。また、課題文では、この「共通善」の視点から、現在の日本の政治の問題点についても指摘しています。
そうすると、課題文の筆者の見解に厳密な意味で賛成する小論文なら、「政治制度の仕組み」と、「政治制度の適切な運用の仕方(=共通善を実現するための国民の意識の持ち方)」を分けて論じるべきだということになります。
b 江戸時代は、封建体制であり、国民主権ではありませんでしたので、国民が主体になって、共通善を目指した政治を幕府に行わせることは不可能でした。課題文に従うと、政治制度が整っているだけでは、共通善が実現しないことになるのですが、江戸時代は、国民の政治に対する意識の持ち方を論じる以前に、国民が主体になって政治を動かす方法(例:選挙制度)さえなかったことになります。
課題文の筆者は、「政治制度の仕組み」と、「政治制度の適切な運用の仕方(=共通善を実現するための国民の意識の持ち方)」を分けて論じていますから、こうしたことを小論文答案の中で言及するべきです。
以上を踏まえると、小論文答案のこの部分は、例えば次のように変えるべきです。
【答案例】
このように、江戸時代の封建体制は、思想信条の自由といった共通善を目指す上で欠かすことのできない国民の権利が守られておらず、まだ、共通善を目指した政治を行うように国民が権力に要求する制度も整っていなかったのだ。(106文字)
c この部分に次の文を盛り込んでみたらどうでしょうか。
【答案例】
明治維新後、封建体制は解体していったが、当初は、思想信条の自由も認められていなかった。しかし、自由民権運動を通じて、言論の自由が認められるようになり、また、大正デモクラシーを通して、選挙権が拡大し、納税額に関係なく、成人男性に選挙権が与えられるようになった。当時の選挙権が男性に限られていた点では問題があるものの、広い国民の意見が政治に影響するようになったことで、国民の意向の下で共通善が達成することが可能な体制が整ったと言える。(215文字)
d cの部分の記述と現在の違いを述べると例えば次のようになります。
【答案例】
また、男性だけでなく、女性を含めて成人した国民に選挙権が与えられるようになり、
e 参考までに、筆者の述べる「共通善」の考え方に賛同した上で、現在の日本の諸問題を分析した例を紹介しておきます。
【答案例1】
郵政民営化が争点になった前回の衆議院選挙は、経営効率化を図る改革者としての「民営化論者」と、旧来の利権にしがみつく「抵抗勢力」の単純な対立の図式として多くの国民に捉えられた。郵政民営化の実現は、国民全体にとっての望ましい通信事業のあり方を検討するなどといった「共通善」の考え方が欠けた「暴政」であったのに、多くの国民はこのことを見抜けなかったのである。
【答案例2】
イラクへの自衛隊の派遣は、イラク特措法に基づき実施されたが、このイラク特措法は、憲法9条に違反している疑いがある。憲法9条には、他国を攻撃するための軍隊を所有しないことが記されており、これは、世界平和を願う世界の多くの人々から尊敬の念を持って受け入れられていた。
しかしながら、憲法9条を軽視して、自衛隊をイラクに派遣してしまったことで、中東を始め世界の多くの人々が日本が本当に平和を願っているのか疑問を持つようになってしまった。これは、日本国民全体にとっての不利益である。こうしたことから、イラクへの自衛隊の派遣は、日本国民全体の共通善に反した政治選択であったと言える。
(念のため申しておくと、特定の政治思想を勧めるわけではありません。大事なことは、論旨に矛盾が起きないような事例を持ってくることです。)
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厳しいコメントが続きますが、小論文答案の水準は、昨年10月ごろに提出されたものと比べて著しく向上しています。この調子で頑張って下さい。
次回の小論文答案提出を心よりお待ちしています。
西早稲田教育研究所
受験小論文講座担当