WIE小論文navi:慶応大添削コメント例[法学部]06年(4)

このコメントは、WIE小論文navi添削講座「慶応大小論文(論述力試験・論文テスト)」で実際に行われたものです。


大学別小論文(慶大 法) 06年-2回目

  再提出して頂いた小論文答案を拝見しました。文句なしの合格小論文答案です。「問題意識」だけでなく、「問答の連鎖」にもふれながら答案を作成することに成功していますね。修正すべき箇所は残っていません。

  以下では通信欄に回答します。

【通信欄について】
  「難しい文章に反論するのはとても大変」とありますが、文章の骨子を理解しないまま、反論しても、全く評価されない答案になってしまいがちですね。市販されている小論文の参考書の中には、反論するのが小論文だと主張しているものもあるようですが、決してそうではありません。反論するように、設問で特に指定されていない限りは、課題文に賛同する立場であろうが、課題文に反対する立場であろうが、どちらでも構いません。課題文の内容が気に入った場合には、今回のように、賛成する立場で書いてしまって構いません。
  小論文で評価の対象となるのは、どのような自説を設定したかではなく、自説を適切に論証できたかです。従って、課題文に賛成する場合にも、賛成した理由を述べる必要があります。この理由は、課題文の筆者が自説の根拠として用いた理由とは異なるものを用意する必要があります。これには、「課題文と異なる事例を用意する」、あるいは、「同じ事例を異なる視点から説明する」などの方法があります。
  多くの受験生が誤解しているようですが、「小論文の独創性」とは、多くの場合、「解答者の立場(自説)が特殊」ということではなく、自説の論証の仕方に現れます。課題文に反論する場合は、自説を論証しようとすれば、ほぼ自動的に課題文とは異なる論証方法をとることになりますが、課題文に賛成する場合も、「課題文と異なる事例を用意する」、あるいは「同じ事例を異なる視点から説明する」などして、課題文の論証の方法とは異なるやり方をすることになります。課題文とは異なる論証の仕方をすれば、それで十分に独創性があると評価されるのです。
  ただ、ここで注意が必要となるのは、課題文の骨子を正確に理解できていないと、課題文の筆者に賛成したつもりで、課題文の筆者の見解を否定するような事例を説明してしまったり、あるいは、課題文の筆者の主張と少しずれた見解を論証してしまうことになります。従って、賛成する場合にも、課題文の骨子を理解しておくべきということになります。
  以前の小論文添削でも説明したかもしれませんが、優れた小論文を作成するには課題文の概念構造の把握(=課題文の骨子をつかむこと)が必須です。
  参考までに、私が小論文試験に挑む場合を紹介しておきます。私なら、なるべく賛成反対はあらかじめ決めておかず、課題文に現れている筆者の主張、あるいは筆者の問題意識を踏まえた上で、それが適用できそうな事例をまず探します。そして、その事例において課題文の筆者の主張を展開すると、うまくいくのか、あるいはうまくいかないのか、検討します。これは、小論文構想メモを作成して、重要概念の相互関係を検討するという作業です。
  大事なことは、自説が適切に論証できるかどうかですから、このようにやれば、自説が論証されずに失敗するという事態は避けられると思います。
  なお、これは蛇足ですが、役人が作成する道路整備等の予算案では、あらかじめ結論が決まっていて(=道路は必要)、後から無理やり論拠を探してくることも多いようですね。予算をたくさん引っ張ってくるほど、優れた役人として仲間内での評価は高くなるようです。そのため、どこからそんなに人がわいてくるのか素人には不思議でたまらない道路の利用者予測がされていたりします(→利用者がたくさんいることにしないと、予算がおりない)。
  役人に限らず、仕事の種類によっては、立場上結論が決まっていて、それに併せて、論拠を無理やり持ってこなければならない場合もあるのですが、大学受験の段階では、小論文解答者の立場は基本的に自由(志望する学部の研究を全否定する立場だけは例外)ですから、小論文解答者が論証しやすい立場を適宜選んでいくのが良いのではないかと思います。

  通信欄では、「WIEの合格小論文答案のレベル」について質問がありましたが、実際の試験では、設問の要求に正確に応えた答案は、難関大学でさえ、受験生の一割にも満たないという現実がありますので(『WIE標準テキスト』でこのことについて説明していますので、是非一度『標準テキスト』に目を通してみてください)、「WIEの合小論文格答案=設問の要求に正確に応えた小論文答案」であれば、合格最低点は余裕で越えていることになります。慶應大学法学部の小論文試験の場合には、小論文以外の他の科目の点数の比重が高いため、あまり正確なことは申せませんが、小論文の比重が高い総合政策、および環境情報の場合、コンスタントに合格小論文答案を作成できるようになった受講生の合格率は、9割以上(→英語や数学で足きりされない限りほぼ合格)ということになると思います。また、WIEの小論文添削指導では、一度も合格圏に達しなかった受講生でも、最後まで演習課題に挑み続けた受講生は、実際の試験では相当程度合格しています(全体で、7割を超える合格率)。
  慢心は禁物ですが、厳しいコメントにめげずに最後まで演習小論文課題に挑み続けたA様は、WIEの受講以前と比べて、大きく実力をつけています。この点では自信を持って入学小論文試験に挑んで頂きたいと思います。

西早稲田教育研究所
受験小論文講座担当
中島 泰平


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