WIE小論文navi:慶応大添削コメント例[法学部]06年(6)

このコメントは、WIE小論文navi添削講座「慶応大小論文(論述力試験・論文テスト)」で実際に行われたものです。


大学別小論文(慶大 法B) 06年-2回目

  再提出して頂いた小論文を拝見しました。前回よりもさらに概念の関係が明確にされて、高水準の答案になっています。

  前回の小論文添削コメントで、課題文の重要概念として、「問題意識」があると申しました。これよりも重要度は低いのですが、課題文には「問答の連鎖」という概念が登場するのでこれを補足説明しておきます。

  提出された小論文では、その時点で考えていることをうまく伝える能力が重要である旨が記されていますが、この能力は、既に明確になっている「問題意識」を相手に伝えるためだけではありません。課題文では、問題意識を明確にすることが重要だと述べていますが、実のところ、問題意識は、個々人の努力だけではどうにもならない面があるのです。それは、問題になっている領域について知らなければ、的確な問題意識を持てないからです。もちろん、質問をするときには、一定水準以上の問題意識まで高められている必要があるのですが、そこから先は、「問答の連鎖」の中で明確にしていくしかないのです。
  課題文では外国の授業風景が「問答の連鎖」として述べられていますが、今回取り組まれている添削課題も一種の「問答の連鎖」です。初回提出に対する小論文添削コメントでは、問題意識が今一歩明確に表現されていないことを指摘し、問題意識の候補をいくつか提示しました。偶然に、こちらが予想したものがあたっていましたが、あたっていなかったとしても、問題意識を明確にする上で役立ったと思います。これは当然ですが、小論文添削課題をM様が送って頂く前の段階で、M様の問題意識に対する答えを事前に用意することはできません。
  受験で扱う基本的な内容とレベルこそ違いますが、大学の教授と、生徒の関係もこれと同じ構造です。生徒が大学の教授をうまく使おうとすることの重要性を課題文は述べていますが、大学の教授も、全ての解答を知っているわけでありません。もちろん知識は豊富なのですが、その知識の多くは、「分析の方法」や「周辺知識」です。生徒側の「問題意識」と、大学の教授の「分析の方法」や「周辺知識」が融合されたときに、問題が明確になり、問題が解決されていくわけです。教授側が一方的に、知識を生徒に授けるわけではなく、生徒と教授が問答の連鎖を通じて、共同で問題解決にあたるということです。
  問答の連鎖とは、知識のある人が、無知の人に一方的に知識を伝えるというものではありません。受験勉強をしていると、全ての問題の解答が、解答冊子のごとく既に存在していると思いがちなのですが、ほとんどの問題は、明確な答えがあるのかどうかもわからない状態で、多くの人が共同で問題解決に挑んでいるというのが、実際のところなのです。

  これを今回の事例に当てはめると、下調べをして一定水準まで問題意識を明確にすることができても、その明確さには限界があるということになります。日本に住む外国人などにインタビューをする中で、返答を参考に、質問を組み立てなおすことまでできれば望ましいということです。問答をする中で、日本に住む外国人と共同で、文化摩擦を防ぐ方法を考えているとも言えるでしょう。これは非常に高度な能力で、実行できている人はあまりいないと思います。
  テレビで放映されるインタビューを見ている限り、これを実行できているインタビュアーはあまり多くありません(私が知っている範囲では、NHK「クローズアップ現代」の国谷キャスターと、現在病気療養中の筑紫哲也氏)。このほかにも実際には多くの優れたインタビュアーが存在するはずですが、テレビというメディアに限定した場合には、それほど多くなく、むしろ、悪い見本があふれているような気がしてなりません。

※ 提出された答案は文句なしの合格小論文答案で修正する箇所がありません。従って、小論文答案に沿った具体的なコメントは省略します。

西早稲田教育研究所
受験小論文講座担当
中島 泰平


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