WIE小論文navi:慶応大添削コメント例[法学部]07年(3)

このコメントは、WIE小論文navi添削講座「慶応大小論文(論述力試験・論文テスト)」で実際に行われたものです。


大学別小論文(慶大 法) 07年-2回目

  続いて、07年の小論文答案を検討して参ります。
  再提出して頂いた小論文答案は、一部要約に減点される記述が含まれていますが、設問の要求に応えた合格圏の小論文答案です。今回は特に設問の要求が難しかったのですが、良く対応することができました。
  以下、簡単ではありますが、提出された小論文答案に沿って、コメントします。

■ 小論文答案に書き入れました赤字が改善すべき点です。abc……の記号に対応するコメントは下段に記入してありますのでご参照下さい。記号のない箇所については、単純な誤記や分量調節のためのものです。
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a 基本的に、要約はよく書けているのですが、この部分は問題のある記述です。答案※の「それ」が何を指しているのかわかりません。
   この部分に対応する課題文の記述は、以下の部分です。

   争われているのはじつは歴史的真実の問題ではなく、それとは異質の、政治的正義の問題なのだということを見誤っている。そのうえ、そこには政治的正義の本質についても素朴な誤解があって、政治的正義は世界にただひとつしかなく、譲れない真実にもとづくものと信じられているように見える。そしてその譲れない真実こそ、歴史についての正しい認識であり、学問的真実だと思いこまれているように見える。

   課題文では、「政治的正義の本質についての素朴な誤解」を説明しており、この中で、「譲れない真実=歴史についての正しい認識=学問的真実」としています。この点では要約には間違いはありません。
   次に、「政治的正義は譲れない真実にもとづく(という誤解)」があることを課題文は指摘しているのですが、これは、「『政治的正義』の根拠が『譲れない真実』である(という誤解)」ということであり、「政治的正義=譲れない真実」と主張していないことに注意する必要があります。このことについて現在の要約ではうまく説明できていません。

   以上を踏まえた修正例を提示します。
  【修正例】
   筆者は次のように述べている。現在の中国韓国などとの対立において、争われているのは、歴史的真実の問題ではなく政治的正義の問題だ。しかしながら、日本に対する外国の非難に反発する人々は、歴史についての正しい認識こそ譲れない真実であり、この学問的真実にもとづき、政治的正義が実現すると誤解している。

b 小論文の出題者側としては、取り上げる事例は、国際政治の軋轢とその解消に関連する事例(例:ヨーロッパでの国境確定など)を挙げることを想定しているのですが、設問文でそのような限定がなされていない以上、課題文の重要概念「法」「政治」「歴史」を利用して考えることができる小論文の問題設定をしても構わないということになります。そうすると、「薬害の問題」は、解答者の立場を支持する根拠として適切な事例ということになります。
c 法的真実と歴史的真実の違いは、「真実が確定したとされるまでの時間」ですね。薬害の問題ならば、はやめに賠償しないと、治療が遅れて亡くなってしまう場合もありますから、法的真実の追求が適切な問題解決の手法ということになります。
   課題文に登場する重要概念を理解した上で、自説(=課題文の筆者主張に同意)の論証に成功していると申せます。
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  添削コメントは以上です。
 
【通信欄について】
  A様の場合、法学部志望としては、少し知識が不足しているところがあるものの、それを補う「柔軟な思考力」をお持ちです。入学試験の小論文は、今年も多くの受験生にとっては、投げ出したくなるような難しい問題が出題されると予想しますが、それでも、設問文をヒントに課題文を読めば、なんとか小論文の作成方針が思い浮かんでくるはずです。そのためには、通信欄にあるように、「あきらめず、強い気持ちで」、小論文試験問題と格闘していくことが大事です。
 
西早稲田教育研究所
受験小論文講座担当
中島 泰平


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