WIE小論文navi:慶応大添削コメント例[法学部]07年(6)

このコメントは、WIE小論文navi添削講座「慶応大小論文(論述力試験・論文テスト)」で実際に行われたものです。


大学別小論文(慶大 法) 07年-2回目

  再提出して頂いた小論文を拝見しました。通信欄によると、「説得力ゼロ」とあり、実際に課題文の主張に対する反論としては、説得力が高いとまでは言えない小論文答案なのですが、論旨に破綻があるわけでもなく、最低限の出題の要求には応えた小論文を作成しています。このことから、ギリギリですが合格圏に到達しています。
  以下では、現在の小論文答案の方針で、より説得力を高めるにはどうすれば良かったかを検討して参ります。

  それでは、提出された答案に対して具体的な改善コメントを記していきましょう。

■ 答案に書き入れました赤字が改善すべき点です。abc……の記号に対応するコメントは下段に記入してありますのでご参照下さい。記号のない箇所については、単純な誤記や分量調節のためのものです。
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a 要約の部分は良く書けています。
b 小論文答案※部分の「不公平さ」とは何かを考察してみましょう。答案によると、国家間の約束の不公平さが念頭にあると思いますが、「不公平さ」は、国家間だけではなく、国内にも存在します。例えば、日本の国内問題として考えると、「日中戦争に参加した元軍人および、その家族・子孫(また、右翼の人々)」と、その他の多くの日本人では、「南京大虐殺」についての扱いは異なります。
  もしも尊敬するおじいさんが軍人で、日中戦争に参加していたとすれば、日本の軍隊が中国で蛮行をしたことはそう簡単には認めたくないと思います。一方で、日中戦争に参加した親戚や知り合いが回りにいなければ、「南京大虐殺」が中国の人々が主張しているように大規模であったとすることを認めても、いわば他人事なのであまり心が痛まないと思います。中国との経済的あるいは政治的に友好な関係を構築することを重視するのであれば、過去の戦争については譲れるべきところは譲ろうとするでしょう。これは、中国側から見ても同じだと思います。
  そうすると、戦争の直接の加害者・被害者およびその周囲の人々は、歴史的真実を明らかにすることを日中の経済的あるいは政治的に友好な関係の構築より優先することになり、一方でその他の人々は、日中の経済的あるいは政治的に友好な関係の構築を優先し、歴史的真実は軽視することになることになります。
  国家間の軋轢を解消しようとして早急に政治決着を図ることは、歴史的真実の追求を軽視することになります。歴史的真実の追及を軽視しすぎると、政治決着に不満を持つ人々が増えて、政権が転覆してしまう恐れすら出てきます。小泉政権当時に、中国で大規模な反日デモがありましたが、これは日中間が、歴史的真実の追及をうやむやにしたまま経済的あるいは政治的な友好関係構築を優先したからこそ起こったとも言えます。日中で細部まで共通の歴史認識があれば、あのように大規模な反日デモは起きなかったでしょう(逆に、歴史的真実の追求を重視していたら、日中間の経済的あるいは政治的な友好関係は築かれなかった可能性はありますが)。
  小泉政権当時に、中国で大規模に起きた反日デモを政治的正義の追求の失敗ととらえれば、例えば次のような文章を盛り込むことが考えられます。(考え方を伝えるための文案であり、字数制限は無視しています。)

【小論文答案例】
  課題文の筆者は、国家間の軋轢を解消するには、歴史的真実の追及よりも、法的真実を追究することで実現される政治的正義を重視すべきとしているが、私は同意できない。なぜなら、歴史的真実を軽視して実現する国家間の政治的決着は、国家権力同士にとっては都合の良いものにはなっても、歴史的真実を追究するべきと考える国内の人々の不満を招くからだ。過去の日中両政府は経済的あるいは政治的に友好な関係の構築を優先するあまり、共通の歴史認識を持つ十分な努力をしてこなかった。小泉政権当時に、中国で大規模な反日デモがおき、中国で活動する日系企業に被害が生じてしまったのはこのためだ。
  中国で起きた反日デモは収まったが、政府の姿勢に疑問を持つ人々が多数派になると、政権が転覆する恐れすら出てくる。パキスタン政府はアメリカとの関係を重視し、アメリカ軍の軍事行動を支援している。しかし、パキスタンの国民の多くは、イスラム教信者であり、イラクでのアメリカ軍の活動の正当性に疑問を持っている。最近、パキスタン大統領は憲法を停止して戒厳令を敷いたが、これは、パキスタン政府が国民の支持を失った証拠だ。このような事態になった原因は、パキスタン政府が、イラク戦争の歴史的真実を追求することを軽視したためだ。
  このように、歴史的真実の追求を軽視して早急に政治的正義を実現しようとする試みは、国家間の軋轢の本質的な解決に至らないのだ。(597文字)
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  添削コメントは以上です。
  入学試験では、地歴も課されるはずです。小論文以外の一般教科を勉強することが、小論文対策にもなりますので、そちらの勉強も頑張って頂きたいと思います。

西早稲田教育研究所
受験小論文講座担当
中島 泰平


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