WIE小論文navi:慶応大添削コメント例[経済学部]05年(1)

このコメントは、WIE小論文navi添削講座「慶応大小論文(論述力試験・論文テスト)」で実際に行われたものです。


大学別小論文(慶應大・経済) 05年-1回目

  お送りいただいた小論文答案は、誤字脱字や主語述語の不適応といった問題は少なく、解答者の国語力は十分だと申せます。また設問の要求、課題文の内容も正確に把握しておられますので、初回提出から合格小論文答案と申せます。

  ここで、慶應経済の出題傾向について簡単に述べておきましょう。出題年度によって多少の変化はありますが、例年2つから3つの小問に分かれていることが特徴です。課題文はさほど難解ではありませんが、それだけに各小問の要求を的確に読み取りませんと、大きな失敗をすることになります。また、設問の要求に従って、課題文から重要概念およびその相互関係を抽出するのか、あるいは課題文を参考にして、解答者独自の概念を用意するのか、正確に判断する必要があります。したがって、課題文や資料を正しく読み取るための前提として、設問文を慎重に読むことが要求されます。
  全般的に大きな問題はありませんので、以下小問ごとに検討して参りましょう。

  答案に対するコメントは、小問ごとに解説の後にまとめてあります。abc……の記号は、小論文答案のものと対応しています。なお、特にコメントのない修正は、単純な語句の誤りや、分量調整のためのものです。

問1.
  お気づきのように、この設問は解答者(=F様)の見解を要求していません。「課題文全体に注意」して、課題文の挙げている「理由」を説明すればよいのです。したがって、課題文の中から、「インターネット」と「公共的な議論の場」に関係の深い重要概念を抜き出し、その相互関係(=論旨)を再現すればよいといえます。ただ、単なる抜粋(抜き書き)と異なりますのは、課題文の印象的な部分を答案に書き写すのではなく、あくまでも重要概念とその相互関係を正確に反映していなければなりません。
  今回の小論文答案では、この設問の要求は正確に理解しておいでですし、最重要概念およびその相互関係の抽出に成功していますので、初回提出から合格小論文答案と申せます。ただ、第二義的に重要な概念の中には、答案に盛り込まれていないものがあります。再提出では、その点を改善するようにしてください。

a 「インターネット」の普及に関しては、「低コスト」だけでなく「容易」「迅速」といった概念を課題文では使用しています。これを「簡単」という概念にまとめても誤りとまでは申せませんが、字数にまだ余裕がありますので、ここは課題文の重要概念をそのまま使用する形にしましょう。
   なお、これ以外にも課題文の重要概念を言い換えている箇所があるようです。制限字数超過にならない範囲で、できるだけ課題文の概念をそのまま使用するようにしてください。
b 1文があまり長いと、概念の関係=論旨が読み取りにくくなります。特にcの改善で分量が増えるでしょうから、私ならここで文を切ります。
c 合否に関わるような重要概念ではありませんが、課題文では*のような発信の問題だけでなく、「(情報を)主体的に選択できる」といった受信の側面も指摘しています。課題文が取り上げている順にしたがって、ここでこの問題に触れるとよいでしょう。
d マス目のある原稿用紙で、行頭のマスに句読点(。、)や閉じ括弧(」や』)だけが入るということはありません。その場合には前の文字と2文字一緒にして、前行の最後の1マスに書いてしまいます。
   このような原稿用紙の使い方につきましては、WIEのホームページから無料でご覧になれる、『WIE小論文公開講座』の第1回「ともかく書いてみよう」で少し詳しく説明していますので、ご参照ください(http://www.wie.co.jp/syo/kokai/index.htm)。
e このような記述があっても減点にはなりませんが、acなどよりは重要性の薄い箇所だと思います。acの改善で制限字数を超過するようでしたら、この部分で調整するとよいでしょう。

  以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。

問2.
  「説明」という設問の要求は問1と似ていますが、課題文には「デジタル・デバイド」に関する記述はありません。また設問文も、課題文からの読みとりは要求していませんので、小論文解答者の知識から設問の要求にそった事例を挙げることになります。ただ、あくまでも問題点が指摘できていればよく、解決策などがなくても構わないことになります。
  現在の答案では、デジタル・デバイドの例を挙げており、いずれも適切なものです。ただ、「パソコン」の入手と「アクセス」の技術の事例のうち、「技術」の検討がやや不十分だったと思われます。現在のままでも合否に関わるような重要な問題点ではありませんが、再提出の機会がありますので、この点の改善に挑戦していただきたいと思います。

a 誤字などの国語表現上の問題点に関する減点は比較的軽微ですが、概念の関係=論旨にまで影響するものは、論旨不整合と判断され、大きな減点に繋がります。提出前の見直しなどで、チェックするようにしてください。
b 現在の記述でも減点にはなりませんが、ほぼ同じ概念の関係をより短く書くことが可能です。
   小論文を書き慣れないうちは、課題文の内容把握であれ、解答者の見解であれ、書くことが見つからない=分量不足の問題が深刻です。しかし、小論文を書く力が向上してきますと、今度は「書きたいことの過剰」に悩まされることになります。初回提出から合格小論文答案の書けるF様は既にこの水準になると思います。
   この対策は、基本的には小論文構想メモの段階で、盛り込むべき重要概念の優先順位を考えることです。しかし、文章の技術として「短く書く」能力もありますと、取り上げている概念が豊富で、かつその関係付けが精密な文章が可能になります。いわゆる深い考察を示すことになりますね。
c 問1.のb同様、私ならここで文を切ります。
d 現在の表現で誤りとは申しませんが、小論文とは、基本的に解答者の「思考」を書くものですね。したがって、特に混乱のない限り「思う」「考える」といった表現は不要です。分量調節のためにも割愛しましょう。
e デジタル・デバイドの例として現在のままでも致命的な減点になることはありません。ただ、「アクセスする技術」に関しては、学校教育を含む社会的なインフラストラクチャーの問題ですね。それに対して「パソコンは高価すぎる」というのは、より個人的な所得(水準の低さ)の問題だといえます。
   bdの改善で字数に余裕ができると思いますので、このような「デジタル・デバイド」の原因まで踏み込んだ記述を考えてください。

  以上のコメントを参考にして、再提出してください。

問3.
  問2.同様、解答者の方で事例を用意する必要があります。こちらも、長所としての「内部告発」、「問題」として「中傷」「自殺の促し」「犯罪の促し」問「具体的な例」が挙げられています。
  したがってここも合格圏ですが、私(=西田)ならこうするといった点を中心にコメントをしますので、これを参考にして再提出をしてください。

a 問1.のdと同じです。
b cdの改善で字数に余裕が生じますので、この内容を*の事例に則してもう少し具体的にするとよいでしょう。例えば、企業に不利な情報を公表した人が、企業を解雇される、遠隔地に移動させられる、給与などの待遇を引き下げられる、といった扱いを受けることがあります。このような「会社(の内部告発)」における「身分や地位」の具体例を挙げますと、小論文解答者の見解により適切な論拠を示すことになりますね。
c 問2.のbと同じです。
d 問2.のdと同じです。
e b同様、「自殺の促し」「犯罪の促し」の事例をより具体的に書いてください。自殺の仲間を募集する、あるいは自殺方法を細かく紹介する、といったサイトがありましたね。また、殺人などの犯罪依頼を引き受けるサイトや、犯罪の共犯を募集するサイトが問題になったこともあります。
   もちろん、これは制限字数の許す範囲で結構です。

  以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。

西早稲田教育研究所
大学別小論文講座
  担当  西田 京一


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