WIE小論文navi:慶応大添削コメント例[経済学部]06年(2)
このコメントは、WIE小論文navi添削講座「慶応大小論文(論述力試験・論文テスト)」で実際に行われたものです。
大学別小論文(慶大 経済) 06年-1回目
前回から少し間が空きましたが、06年の初回小論文答案を添削いたします。
テキストをご覧いただきますとお気付きのように、06年の出題は、05年までと比べて、小問数や字数に変更がありました。04・05年の小論文出題では、設問が3つの小問に分かれていることが1つの特徴でした。したがって、各小問の設問文をよく読み、何を書かなければいけないかを把握することが重要でした。しかし、今回は①②それぞれで問われる内容が大きく異なりますので、その危険性は低くなりましたね。また、設問文が長い=設問の要求が詳細になっていますが、これは、小論文答案で書かなければならないことが明確に指示されている、ということでもあります。
以下、小問ごとに検討して参りましょう。
①
05年の問1とは異なり、今回が解答者の見解(「反論」)を求めています。
現在の小論文答案は設問の要求に従って、課題文の主張(=重要概念)を取り上げ、それに対する解答者の「反論」を述べています。初回提出から、ギリギリですが合格圏と申せます。
ただ、概念の関係付け=論旨の構成に改善の余地があります。いずれも致命的なものではありませんが、再提出の機会がありますので、手を入れるようにしてください。
a 国語表現が不適切なために、概念の関係=論旨が不明確になっています。誤字脱字といった国語表現の誤りは、一般には大きな減点にはなりません。しかし、このように概念の関係=論旨に影響するものは、答案全体の評価に大きく影響します。
b 設問の要求は、課題文が「大きく貢献する」としている事例の中から、一つを選ぶよう要求しています。したがって、「そのこと」(=遺伝子上の疾病に関することを知る)が「科学的知見の飛躍」かどうかではなく、課題文の言う「貢献」を明確にしなければなりません。
なお、*部分で「課題文」を主語にしますと、「筆者」という概念が不要になるなど、字数に余裕ができますね。このように制限字数に注意しながら、課題文の言う「貢献」を示してください。
c bと関係しますが、この部分で「貢献」を示したつもりかもしれません。しかし、波線部のような語尾では、ここが解答者(=A様)の見解のように読み取れます。
例えば、第1段落全体を、「課題文は、~に貢献すると述べている」といった記述にして、課題文の主張する「貢献」を明らかになるようにしてください。
d 現在は、この部分があるために、課題文の見解と解答者の見解が区別されていますが、bcの改善によって、課題文の見解(=「貢献」)がより明確になれば、ここは不要になるでしょう。
e 現在のままでも減点にならないかもしれませんが、「筆者」という用語は、この小論文答案の筆者(=A様)と誤解される可能性があります。また、「課題文」と「筆者」と同じ内容の概念を混用しますと、論旨が読み取りにくくなります。設問文に「課題文」とありますので、こちらで統一しましょう。
g この限定がありますと、**のような事態は起きないことになります。
むしろ、当初は(重大な)遺伝病に限定されていても、親の「心配」といった条件で、中絶を認めていると、重大ではない、さらには疾病とさえ言えない場合でも、「遺伝情報」によって中絶が認められるようになる、ということが問題なのでしょう。
h g同様、この限定によって、小論文解答者の見解が不明確になっています。「全てを~すべきではない」というのでは、一部は公表しても良いのでしょうか。もしそうなら、公表しても構わない範囲や条件を明確にしませんと、結局「男か女か」といった情報でも妊娠中絶ができることになるでしょう。
あるいは、遺伝情報を全く開示しない、ということなのでしょうか。この場合にも、やはり問題が生じます。例えば、胎児の異常によって、出産の際、母親が死ぬ危険がある場合なども考えられます。このような重大な危険があるにも拘わらず、これを本人(母親)に知らせないまま、出産をさせても良いのでしょうか。あるいは、母親の危険を避けるための中絶でも禁じてよいでしょうか。
結局、「遺伝情報」をどこまで公開するかを明確にしませんと、小論文解答者の見解(=「反論」)は曖昧なままとなってしまいます。
以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。
②
設問文は、①の「要約」を求めています。要約とは、対象となる文の重要概念とその相互関係を短く再現することに他なりません。制限字数が僅か40字ですから、よほど重要概念を絞り込みませんと、失敗することになります。
現在の小論文答案では、①から重要概念を抽出し、その関係=論旨の再現に成功しています。ただ、①で重要概念が変更になりますと、この部分にも手を入れる必要が生じるでしょう。
a 短い文の場合には迷うかもしれませんが、マス目のある原稿用紙に書く場合には、「語」ではなく文であれば、最初の1マスを空けるのが原則です。
b ①のgの改善によっては、ある条件では公表することになるかもしれません。
以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。
西早稲田教育研究所
大学別小論文講座
担当 西田 京一