WIE小論文navi:慶応大添削コメント例[経済学部]06年(4)

このコメントは、WIE小論文navi添削講座「慶応大小論文(論述力試験・論文テスト)」で実際に行われたものです。


大学別小論文(慶應大・経済) 06年-1回目

  05年の再提出をされていないようですが、06年の小論文答案をお送りいただきましたので、拝見いたします。
  テキストをご覧いただきますとお気付きのように、06年の小論文出題は、05年までと比べて、小問数や字数に変更がありました。04・05年の出題では、設問が3つの小問に分かれていることが1つの特徴でした。したがって、各小問の設問文をよく読み、何を書かなければいけないかを把握することが重要でした。しかし、今回は①②それぞれで問われる内容が大きく異なりますので、その危険性は低いですね。また、設問文が長い=設問の要求が詳細になっていますが、これは、小論文答案で書かなければならないことが明確に指示されている、ということでもあります。
  今回も各問の独立性が高いので、以下、小問ごとに検討して参りましょう。

  記号の使い方などは、前回と同じです。


  05年の問1とは異なり、今回が小論文解答者の見解を求めていますね。したがって解答者の方で、重要概念(論点)の設定とそれに対する関係付け=論旨の構成をしなければなりません。この点で、やや不十分な点がありましたので、今回はあと一歩ですが合格圏の小論文とは申せません。『小論文標準テキスト』などでも繰り返し述べましたが、概念の関係付けは小論文を書く際に極めて重要です。よく「論旨の明解な文章」とか「説得力のある論文」を書くように、といわれますが、これは「使用されている概念の関係が明確である」ということに他なりません。
  今回も国語表現に関する細かい指摘もしましたが、以上の点が改善の中心になります。

a 2箇所に指定をしましたが、それぞれ、課題文の内容紹介・「事例の中から一つを選」ぶ段階・それに対する「反論」と、内容が大きく変換する箇所ですね。ここで、段落を改めましょう。
   なお、よく「1段落は○○字程度がよい」とか、「全体が××字なら、△個ぐらいの段落に分けよう」といった指導をする添削講座や参考書があるようですが、段落の構成は、字数で考えるよりも、内容で考えてください。
b 現在の記述でも誤りではありませんが、改善によって分量が増えますので、その調節です。
c 前回も同様のコメントをしましたが、1文があまり長いと、概念の関係=論旨が読み取りにくくなります。
d 接続の言葉(文法上の接続詞に限りません)の使用には注意が必要です。「また」は、前文と後文が併置の形になる場合ですね。現在の小論文答案では、前文に対する対応・対策を後文で述べています。したがって、ここでは独立の概念(ないしその相互関係)を別途指摘する関係ではありませんので、「また」を使用するのは不適切です。
   接続の言葉が不適切ですと、概念の関係=論旨を大きく混乱させることがありますので、十分な注意が必要です。
e 「反論」なのですから、「思う」「らしい」と表現は不適切です。また、実際遺伝子診断に関してこのような指摘は存在しますので、その点でも不要な表現です。なお、これは、高校の公民科(特に『倫理』『現代社会』)で必ず触れる問題ですね。
f 今回最大の問題点はこの部分です。「差別」「ランキング」の結果、遺伝子に関する「個人の情報が流出」するのでしょうか。むしろ、「個人の情報が流出する」からこそ、「差別」などが起こるのだと思われます。また、*のように「一番問題」なのは、この「個人の情報が流出」することが、他の問題の原因になるからでしょう。
g 確かに、これによって「一番問題」である「個人の情報が流出」することは防げるでしょう。しかし、eの問題は、胎児の生存権が脅かされていますので、これでは解決しません。
   確かに、親の幸福を追求する権利と子どもの生きる権利の衝突ですので、この問題は難しいですが、少なくとも「情報の流出」を抑えることでは解決しません。逆に胎児には発言権はないのですから、「情報」を隠蔽されたのでは、生きる権利が守られなくなりますね。
   この問題については、高校の公民科の教科書などにもヒントがあると思いますので、それを参考にして「解決策」を示してください。結局、胎児を中絶する際の基準を誰がどのような形で定めるかという問題になると思います。

  以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。


  設問文は、①の「要約」を求めています。要約とは、対象となる文の重要概念とその相互関係を短く再現することに他なりません。制限字数が僅か40字ですから、よほど重要概念を絞り込みませんと、失敗することになります。
  現在の小論文答案では、①から重要概念を抽出し、その関係=論旨の再現に成功しています。ただ、①で重要概念が変更になりますと、この部分にも手を入れる必要が生じます。

a  短い文の場合には迷うかもしれませんが、マス目のある原稿用紙に書く場合には、「語」ではなく文であれば、最初の1マスを空けるのが原則です。
b ①のgの改善によっては、これが最重要概念ではなくなる可能性があります。その際には、何を①の中心概念とするか、再検討が必要になります。

  以上のコメントを参考にして、小論文の再提出をしてください。

西早稲田教育研究所
大学別小論文講座
担当  西田 京一


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