WIE小論文navi:慶応大添削コメント例[経済学部]07年(2)

このコメントは、WIE小論文navi添削講座「慶応大小論文(論述力試験・論文テスト)」で実際に行われたものです。


大学別小論文(慶大 経済) 07年-1回目

  本年も小論文出題傾向に変化が見られました。まず資料に図表(グラフ)が加わりましたね。また、先にAで資料(課題文)の内容把握をさせ、問題を改めてBで解答者の見解を問うという形式になっています。06年の小論文出題よりは、05年に近いと申せますが、それでも資料や設問の要求はかなり異なっています。
  実際、この変化に惑わされて、設問の要求を正しく把握できなかった受講生が少なくありません。また、特にBでは、設問の要求に応えるために必要な視点が見つからない方も多いようです。そのため、全く見当外れの小論文答案を書いてしまう受講生がいます。ここまで練習をしてこられたA様は、比較的問題は少ないのですが、それでも設問の要求に応えるために、どのような概念(論点)とその関係付け(論旨の構成)が必要か、という点に問題がありました。


  冒頭で申し上げましたように、ここでは資料の内容把握(=要約)だけが要求されており、解答者の見解は基本的に不要です。現在の小論文答案は、設問の要求・課題文の内容ともほぼ正確に把握しておいでです。しかし、資料の内容を再現するところで、不正確な箇所がありました。したがって、合格圏小論文ではありますが、ギリギリということになります。

a 各図の表題から、「不活発型」などの重要概念を抽出していますので、現在のままでも大きな問題はありません。ただ、一般に複数の資料が与えられているときには、どの資料に基づく記述なのかを明確にするべきです。実際、「第一に」「第二に」……と、解答者が取り上げた順番を示すより、字数が少なくかつ整理された記述になりますね。
b 他の回でも指摘したかもしれませんが、原稿用紙の使い方に関する基本です。
   マス目のある原稿用紙で、行末に「や(だけが入るということはありません。その場合には、次の文字と2文字一緒に行末の1マスに書いてしまいます。このような原稿用紙の使い方につきましては、WIEのホームページから無料でご覧になれる、『WIE小論文公開講座』の第1回「ともかく書いてみよう」で少し詳しく説明していますので、ご参照ください(http://www.wie.co.jp/syo/kokai/index.htm)。
c ギリギリと判断しましたのは、この部分に問題があったからです。
   文章(課題文)ではなく、グラフなどの図表を読む場合には、その内容を示す的確な概念を見つけることがポイントになります。その方法の一つとして、図表の表題や項目に注目するとよいでしょう。例えば、グラフの横軸の項目は「学年」ですね。この概念を小論文答案に盛り込みますと、図の内容を正確に再現し、解答者の思考過程を示すことになります。読者(採点者)にも共有可能な理解を示すことができるのです。
   このようにしますと、*をしました「興奮型」「活発型」に対しても、同様の改善ができるでしょう。69年と79年では、同じ型が低い学年(=早い段階)で現れる、あるいは高い学年(=遅い段階)で現れる、といった比較検討ができますね。
   このようにしますと、より精密な図の読み取りが可能になるでしょう。
d ここまでの改善によって、全体としてどの型が多いかではなく、各型の現れる学年(年齢)の差異から、発達の遅速の問題を指摘できると思います。現在と同じ結論であっても、より確実な論証をしたことになりますね。

  以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。


  残念ですが、ここはあと一歩のところで合格圏小論文とは申せません。
  その第1の理由は、設問の要求に十分応えていないことにあります。設問では「変化の傾向」という概念が使用されています。「設問A」でA様は、「発達過程が遅くなっている」と述べておられます。この「変化の傾向」が続いている、と判断したのですから、79年以降も脳の発達は遅くなり続けている、と判断したことになります。
  ここまでの説明でお気付きのように、このような判断を示すためには、①脳の発達が、79年より現在の方が遅くなっていることを示す事例、②79年より現在の方が脳の発達を遅くする条件が増えている事例、といった論拠が必要になります。
  これに対して、現在の子どもの状況についての事例を示しておられますが、これだけでは、「変化の傾向」が続いている=79年時点より脳の発達が遅くなっている、と判断する論拠としては不十分です。
  しかし、①は、図1~3と同じ条件で行われた調査結果を知っているなどの特殊な場合を除いて困難ですね。そこで、資料2を使用することになります。資料2では、脳の発育を遅くする条件・要因を指摘していますね。この条件・要因が最近(厳密には79年以降)も増加していることを示せば、現在(79年以降)も脳の発達はさらに遅くなっている=「変化の傾向」は続いていることが論証できるでしょう。
  これ以外の論証方法もあるかもしれませんが、この方針で改善を考えてみます。

a この事例自体は使えるものなのですが、論旨の構成が不適切なため、小論文解答者の見解を論証する論拠になっていません。
   冒頭で申し上げました②の方針で改善をするのでしたら、次のような作業が必要になります。
   1)「学級崩壊」「家の中でゲームをする」それぞれが、*部分の「人と人とのふれあい」「運動不足」と対応していることを示す。なお、「学級崩壊」は、「脳の発達」を遅くする原因というより、その結果とすべきかもしれません。
   2)ここで挙げた事例が、最近(少なくとも79年以降)新たに加わった条件であることを示す。確かに、ファミコンの登場、パソコンの普及は80年代以降ですから、それ以外の条件が変わっていない限り、「脳の発達」を遅くする条件・要因は増加していると言えそうです。
   なお、それ以外にも、79年以降の都市化の進展により地域社会の弱体化、少子化による兄弟姉妹の減少なども、「脳の発達」をさらに遅くする条件といえるでしょう。
b 今回は、資料(課題文)が複数ありますので、どの資料を利用したか、明確にしましょう。また、設問文の概念をそのまま使用する、という原則にも従うことになりますね。
c 効果の速い遅いについては、特に設問は要求していません。字数に余裕があれば書いても構いませんが、他の改善で字数が増えると思いますので、ここで調整しましょう。
d aの改善によっては、「脳の発達」を遅くする要因が変わってくる可能性があります。aでどのような要因を挙げるかによっては、その解決策も変更になるでしょう。
e ここも、字数調整の必要があれば、省略可能です。

  以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。

西早稲田教育研究所
大学別小論文講座
  担当  西田 京一


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