WIE小論文navi:慶応SFC添削コメント例[環境情報]05年(1)

このコメントは、WIE小論文navi添削講座「慶應SFC小論文」で実際に行われたものです。


慶應SFC小論文(環境情報) 05年-1回目

  総合政策に引き続き、小論文添削を担当する講師の中島です。よろしくお願いします。
  今年度は、前年度の環境情報の小論文問題と同様に、資料で提示された概念を満たす事例を探し、説明することが求められています。今回資料で提示される概念である「アフォーダンス」をあらかじめ知っておく必要はありませんが、資料を読み取って初見の重要概念をその場で理解して正しく使用することが要求されています。
  また、今回の設問もそうでしたが、「社会に適合する科学技術のあり方(あるいは、社会と科学技術の関係のあるべき姿)」が多くの年度で問われています。環境情報の小論文は、出題形式が年度ごとに大きく変化するのを一つの特徴としているのですが、大学側が小論文の試験を通して、受験生に問うている能力自体は、実のところそれほど変化していません。 

  提出して頂いた答案を拝見しました。
  まず、問1ですが、アフォーダンスの意味を正確に理解し、これを利用して現実世界の問題を的確に分析できています。文句なしの合格圏と申せます。
  次に、問2-1ですが、現在のレベルの小論文答案が書ければ、実際の試験では、全く問題なく合格していたと想定されるレベルに到達しています。WIEの採点基準でも、合格圏の答案です。ただし、せっかく再提出の機会があるので、現在のものより上のレベルの答案を目指して検討します。
  最後に、問2-2ですが、提出されたものは、出題意図の把握が不十分なため、あと一歩合格圏には至っていません。ただし、これは昨年度にWIEの小論文講座を利用してSFCに合格された方も含めて苦戦している問題で、受験生にとっては相当の難問のようです。受験生を選抜する試験問題としては、うまく機能しなかったのか、大学側も、この年度以降は、このレベルの出題を避け、易化しています。
  ただし、大学進学以降は、これよりも難しいことを勉強することを踏まえると、是非とも受験生の段階で、本設問のように重要概念の関係の込み入った問題でも理解できるようになって頂きたいと思います。この年度の小論文問題作成者は、受験生を困らせようとしてわざとこの問題を作成したわけではなく、このレベルの問題に解答ができる受験生の入学を望んでいたのでしょう。X様は、受験生を相対評価した場合には相当の実力者に位置することとなりますが、それでも、大学側が欲している十分な学力には、いまだ至っていないということです。
  受験勉強の第一義は、もちろん志望大学に合格することですが、大学進学以降の学業を有意義なものとするためにも、WIEの小論文講座などを利用して、更なる学力向上に努めて頂きたいと思います。また、これが「運よくたまたまの合格」ではなく、「より確実に合格」するための受験勉強となります。

  それでは、提出された答案に対して具体的な改善コメントを記していきましょう。これを参考に、再提出に取り組んで下さい。

■ 答案に書き入れました赤字が改善すべき点です。abc……の記号に対応するコメントは下段に記入してありますのでご参照下さい。記号のない箇所については、単純な誤記や分量調節のためのものです。

問1
  「アフォーダンス」という概念をあらかじめ知っている受験生はほとんどいなかったと思われますが、資料を読解して、この概念を正確に理解して使用できることを要求しています。
  資料1にもあるように、アフォーダンスが大きな問題になるのは、「明快に認識できるアフォーダンスが一つあるのに、それが間違った操作につながる」場合です。従って、この条件を満たす事例を小論文解答で提示したいところです。なお、「アフォーダンスがないため使いにくい例」を提示することを解答としても結構です。
  提出されたものは、いずれも、「明快に認識できるアフォーダンスが一つあるのに、それが間違った操作につながる」例に相当しますね。

※ 文句なしの合格答案であり、修正するべき箇所はありません。この設問に関しては、再提出の必要はありませんが、再添削の機会が残っていますので、別の例を探してきて、答案を提出して頂ければ、拝見します。

問2-1
  「ヒューマンインタフェース」が重要になってきた理由は、①技術が進歩して②日常生活で使われるようになってきたものの、③「普通の消費者」がうまく使いこなせないからです。
  提出された答案は、上記の3つの点を全ておさえており合格圏と申せます。ただし、ヒューマンインタフェースの概念がどのようなものか詳しく説明していないので、ヒューマンインタフェースを適切に扱うとなぜ、現在の問題が解決するのか今一つわかりません。
  ここまで説明すれば、文句なしの合格小論文答案となります。
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a このままでも間違いではないのですが、bの部分を修正すると、字数調整が必要となります。より短くまとめるようにして下さい。
b 設問文で説明されているように、「ヒューマンインタフェース」は、人と機械の接点にある(機械側の)機構ですが、これは同時に、製品の「機能(高機能・多機能)」と、「操作性(使いやすさ)」を関係付けるものでもあります。従来は、「便利さ」や「利便性」といった概念で、「機能(高機能・多機能)」と「操作性(使いやすさ)」は明確に区別されずに、扱われていたのですが、この「ヒューマンインタフェース」の概念を導入することで両者の区別の重要性が認識されるようになりました。
   資料2には、「複雑さ」あるいは、「複雑化」という概念が登場しますが、これは、機能と操作性の区別がされていない概念であるため、これを用いてそのまま小論文答案を作成すると、「ヒューマンインタフェース」の価値を今一歩読み手に伝えることができないと思います。
   例えば低機能で単純な機能の製品にすれば、「ヒューマンインタフェース」を考慮しなくても、使いやすい製品を作成することは容易だと思います。ただし、進歩した科学技術の恩恵を十分に受けることができませんね。
   「ヒューマンインタフェース」を考慮しないと、高機能・多機能の製品は、操作性が悪いものになりがちです。「ヒューマンインタフェース」を考慮することで、進歩した科学技術の恩恵を、技術に対する忍耐力の低い人々(=答案では、「高齢者」等がこれに該当)でも受けられることになることになります。
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  以上のコメントおよびテキスト「解説」を参考にして、小論文答案を修正して提出して下さい。

問2-2
  図の横軸は「忍耐力」であり、縦軸は「支払い能力」です。従って、忍耐力のみを論じるのではなく、ユーザーごとの「支払い能力」の差にも注目して答案を作成する必要があります。
  また、図には「目盛り」があるわけではないので、相対的な位置関係のみしかわかりません。二種類以上の同じ分野の製品(あるいは社会システム)を提示して、相対的な関係を述べるか、一つの製品(あるいは社会システム)について、今後どの方向に移動するべきかを論じることができれば、更に好ましいこととなります。
  簡単に、本設問の要求をまとめると、特定の分野の製品や社会システムを取り上げて、「忍耐力」と「支払い能力」、そして「あるべきインタフェース」の関係を論じることということになります。
  さて、提出された小論文答案ですが、重要概念である「支払い能力」を無視して答案を作成しています。これについても検討しないと、出題意図に応えたことにはなりません。「小論文答案に不備があること」までは、X様も気づかれたようですが、その原因までわかるようにならないと、問題は解決しません。
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a この分野に注目しました。通信欄によると、ジャンル(=分野)の設定に問題があると感じたようですが、この分野で合格小論文答案を作成することは十分に可能です。
b 狭い意味では、「ヒューマンインタフェース」は機械の機構ということになりますが、システムと利用者の接点ととらえれば、医者をインタフェースと考えることも可能ですね。なお、医療と患者のインタフェースとしては、「医療情報を得る方法全般」も、インタフェースに相当することになるので、医者や看護士などの医療関係者だけでなく、医療情報を伝える媒体(=テレビやインターネット等のメディアなど)もこれに含めることができるでしょう。適切な例が浮かばないようなら、現在の小論文答案のように人に限定せずに、こうしたものを含めて広く考えてみて下さい。
c 「忍耐袋の境界線を越える」問題は、製品の場合は、利用しないこと、サービスの場合は、提供するものをうまく利用できなくなるということでしょう。答案のように、「医者側に任せてしまうこと」とすると、何が問題なのかよくわかりません。治療の意味はわからなくても、医者に任せて病気が治る場合もあるでしょう。
   例えば、「治療の必要性を認識できず、面倒くさくなって途中で通院をやめてしまうこと」・「与えられた薬を怖がって飲まないで、症状が悪化すること」といったことを説明すれば、「忍耐袋の境界線を越える」問題を適切に扱ったことになります。
d 「インフォームドコンセント」は、医療におけるインタフェースを改善する一つの方策ですね。これと、設問の重要概念の一つ「忍耐力」の関係を論じているのは評価できます。ただし、インタフェースを改善する方策と、設問のもう一つの重要概念「支払い能力」の関係を論じていません。インタフェースを改善することで、医療システムの利用者(患者)が医療行為に支払う費用はどのように変化するか考察してみたらどうでしょうか。例えば、「人件費が上昇」→「高い支払い能力が必要」、あるいは、「人件費が上昇」→「政府の助成を増やす」→「治療効果が増す」→「病人が減り全体として治療費抑制」とすれば、ユーザーに高い支払い能力が必要とされなくなるので、金持ちではない患者でも、十分な「インフォームドコンセント」を受けられることとなります。
   なお、後者が実現すれば理想的であり、今回の小論文設問に応える上ではこうしたことを説明すれば十分なのですが、残念ながら現実には、このようにうまくいっていませんね。 政府の財政は逼迫しており、政府が支出する医療費は抑制する方向で現在の行政は動いています(病院の看護士の数が少ないことの問題は、ニュース等で聞いたことがあると思います)。これは、医療系の学部を受験する予定のないであろうX様が知っている必要があるほどのことではありませんが、「予防医療」など、病気が悪化しないように早めに対策をすることで、医療費を抑制することも検討されています。
   この方法でも、複数の利害関係が絡むので、問題の解決はそれほど簡単ではないのですが、(例:病気が悪化しないと、医者は儲からない)現実の問題を検討するときに、設問で与えられた重要概念を利用することで、現実世界の問題が分析できることがわかると思います。
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  以上のコメントおよびテキスト「解説」を参考にして、小論文答案を修正して提出して下さい。
  再提出の答案を心よりお待ちしています。

【通信欄について】
  上記コメントでも説明しましたが、設問の要求に応えることができなかった理由は、重要概念に「支払い能力」があることを理解できなかったためでしょう。グラフが与えられる出題の場合、軸に記されている項目が重要概念になることが非常に多いので、こうしたことを知っておくと、同種の問題に対応しやすくなると思います。
  なお、問2-2では、「忍耐力」と「支払い能力」の双方が重要概念であることを理解しているだけでは、まだ不十分であり、同時に両者の概念を扱うことが要求されるところにこの出題の一番の難しさがあると言えるのではないかと思います。例えば、「インフォームドコンセント」の影響を考えるときに、忍耐力だけでなく、支払い能力に対する影響も同時に考察することが要求されるということです。
  この両者を扱う概念操作については、昨年度WIEの小論文講座を利用されてSFCに合格された方のほとんども、初回提出答案ではうまくできていませんでした。従って、X様が今回の提出で問2-2で合格小論文答案を作成できなかったことは、実際の試験で合否を左右するような深刻な学力不足の問題ではない可能性が高いということになります。ただし、冒頭でも申したように、大学ではこうした問題以上に高度で複雑な概念操作を扱います。現在の学力に甘んじることなく、更なる勉学に励むことを期待します。

西早稲田教育研究所
慶應SFC小論文講座
担当 中島 泰平


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