WIE小論文navi:慶応SFC添削コメント例[総合政策]05年(1)

このコメントは、WIE小論文navi添削講座「慶應SFC小論文」で実際に行われたものです。


慶応SFC小論文[総合政策]05年-1回目

  環境情報に引き続き、添削を担当する講師の中島です。よろしくお願いします。
  詳しくは「解説」にありますが、今回のものは前年の04年とは出題形式が大きく変わっています。特に04年が内容把握=読み取りの比重が高かったのに対して、今回は解答者の「考え」を論証する手続きが重視されています。また、資料の数も非常に多くなっています。
  このように、環境情報も含めSFCでは毎年のように出題形式が変わっています。従って、この対策として、テーマごとの模範解答をパターン化して、それを覚えていくという方法は有効ではありません。『小論文標準テキスト』などでも紹介していますが、設問の要求および資料(課題文)の内容を正確に把握し、それに従って論理的思考を進めていく、という基本を守っていただくのが一番だと申せます。

  提出して頂いた答案を拝見しました。細かい点では問題が残っているものの、いずれの設問の解答も初回から合格圏の答案です。
  すでに合格圏の水準ですから、更なる実力を養成して頂くため、通常の受講生よりも厳しくコメントをして参ります。この点を御了承下さい。

  それでは、提出された答案に対して具体的な改善コメントを記していきましょう。これを参考に、再提出に取り組んで下さい。

■ 答案に書き入れました赤字が改善すべき点です。abc……の記号に対応するコメントは下段に記入してありますのでご参照下さい。記号のない箇所については、単純な誤記や分量調節のためのものです。

問1
  設問文に提示のある条件を踏まえて、自説を展開しています。また、関連する資料を適宜明示しながら論じようとしている点も高く評価できます。実際の試験では、今の答案のレベルで問題なく合格したと思われるのですが、資料をより正確に読解した上で論述することを要求すると、自説の展開や資料への言及の仕方には、現在の答案でも問題が残っています。
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a答案波線部の「強制」は、今回の答案を作成する際には、細心の注意が必要となる概念です。なぜなら、教育委員会による教職員の処分の是非について複数の資料が触れていますが、処分を容認する資料を含めて、どの資料も、「教職員に思想信条の強制をしても構わない」とは述べていないからです。処分理由は、あくまで「職務規定違反」など「公人としての仕事をやっていない」ことであり、「教職員に思想信条の強制をしても構わない」とは述べていません。思想信条の自由を無視しているわけではなく、「思想信条にはあたらない」と評価しているのです。
   もちろん、最終的には、現在の答案のように、教育委員会の方針を思想信条の強制に相当するとする立場で論じて構わないのですが、同一の事例について資料の中で複数の解釈が存在することを踏まえると、なぜ思想信条の強制にあたると○様が判断したのか、併せて述べる必要があります。
   また、この部分の強制が、何の強制なのか、補って説明しないと、思想信条の強制なのか、それとも、他の項目の強制なのか読み手には今一歩良くわかりません。
b資料番号を明示して下さい。また、なぜ、○様がその見解に賛成したのか理由を述べて下さい。
cどの資料が処分を容認しているのか、明示しながら論じたいところです。
dなぜ、思想信条を強制されていると、○様は考えているのでしょうか。理由を述べて下さい。例えば、「教職員の個人的な思想信条に従って国旗国歌についての指導を放棄すると、処分されるから」といった簡単な理由で構いません。
e自説を論証しようと試みていますが、今一歩説明が不足しています。ここで問題になっているのは、「思想信条の自由」ですから、「思想信条を理由に職業選択の自由を奪うのは、思想信条の自由を抑圧することになる」といった主張を補って説明すれば、論証が完了します。現在の記述だと、国旗国歌の指導をしても構わないと考える在日外国人には通用しない議論なので、説得力が不足するのです。
f何の強制か明示しながら論じるようにして下さい。例えば、「思想信条の強制」あるいは、「国旗国歌の尊重を態度として示すことの強制」とすれば明確な議論ができます。
   また、答案では、愛国心の育み方に言及していますが、卒業式等の式典での国旗掲揚や国家斉唱も、愛国心を育む教育の一つと言えるのではないかと思います。そうすると、生徒はともかく、教職員については、児童生徒に、愛国心を育む環境を提供を果たすべきではないかという反論が考えられます(なお、この反論は必ずしも正しいというわけではありません)。教員の処分を容認する立場の資料では、私人として教職員がどのような思想信条を持つことがあろうが自由だが、公人はそうではないとしています(詳しくは資料を読み直して下さい)。
   こうしたことを踏まえると、愛国心を育む環境の提供が、どの程度までなら、思想信条の強制にあたらないのかということが論点の一つとなります。
   先に述べたように、現在の答案はすでに合格答案に達しているのですが、資料を正確に読むと、より踏み込んだ議論が可能となるのです。
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  以上のコメントとテキストの「解説」を参考にして、答案を修正して下さい。

問2
   国旗国歌の運用について、資料では学校以外の例は少ないのですが、スポーツの競技者および観戦者の問題が扱われています(資料9・11・12)。今回の答案では、これに言及しながら論じています。また、自説の論証にも成功しています。このことから実際の試験では今の水準で問題なく合格していたでしょう。ただし、最後の段落(=「幸いにも、・・・」)がここまでの段落とどのような関係にあるのか不明確なので、論文としてのまとまりが今一歩悪くなっています。せっかく再添削の機会があるので、「合格圏の答案」ではなく、WIEでの最高水準の評価である「文句なしの合格圏の答案」を目指して頂きたいと思います。
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a何についての強制か明示したいところです。
bできれば例を出して下さい。また、提示する例が思想信条の強制になっていないことも併せて述べたいところです。
c論旨の中でのこの最終段落の役割が今一歩不明確です。ここまでの段落との対応関係を示しながら論じて、論をまとめるようにして下さい。対応関係さえ示せれば、現在の記述は活かせます。○様は相当の実力者なので、対応関係の示し方については、ノーヒントとします。
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  以上のコメントとテキストの「解説」を参考にして、答案を修正して下さい。
  再提出の答案を楽しみにお待ちしています。
 
西早稲田教育研究所
慶應SFC小論文講座
担当 中島 泰平


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