WIE小論文navi:慶応SFC添削コメント例[総合政策]07年(2)

このコメントは、WIE小論文navi添削講座「慶應SFC小論文」で実際に行われたものです。


慶応SFC小論文[総合政策] 07年-2回目

  再提出して頂いた小論文答案を拝見しました。資料を踏まえて答案を作成しようと努力した跡がみられるものの、前回同様に「議論の本位」を理解できないまま小論文答案を作成しているので、残念ながら合格圏外です。

■ 答案に書き入れました赤字が改善すべき点です。abc……の記号に対応するコメントは下段に記入してありますのでご参照下さい。記号のない箇所については、単純な誤記や分量調節のためのものです。

問1
  資料1・2・3を利用して、議論の本位の満たすべき条件をおさえておこうとしたことは評価できます。ただし、せっかく冒頭の段落で、資料1・2・3を利用して、議論の本位について議論したのに、議論の本位を資料4・5・6それぞれ別のものとして設定したために、資料を肯定するか否定するか決められない事態に陥ってしまいました。
  前回の添削コメントでも述べましたが、議論とは、異なる意見を持つ者が、意見を戦わせる行為であり、単独の資料一つでは、それは一つの意見に過ぎず、議論の材料に過ぎません。今回の議論は、3つの資料を比較検討する場ですから、原則として、議論の本位は、3つの資料に共通に存在するものとして設定する必要があります(例外として、議論の場に加えるのが不適切と判断できる資料があり、その理由を示せるのであれば、その資料については、議論の本位が含まれていないとしても構いません)。
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a このことから、議論の本位を一つに決めないと、議論ができないことになります。
b 複数の資料が共通して解決しようとする問題を提示しないと、「議論の本位」にはなりません。X様は、「議論の本位」を「特定の立場」と誤読してしまっています。
c 同じく、特定の立場を議論の本位と勘違いしています。
d 特定の立場を議論の本位と勘違いしています。
e 議論の本位の意味を理解できていません。

※ 資料を踏まえているのならば、どのような「議論の本位」を設定し、また、どのような「議論の箇条」を設定しても構いません。ここでは、資料5に登場する3つの概念「人口容量」・「生活水準」・「許容人口」に注目して全体の資料を整理してみる方針で作成した小論文答案例を提示します。

【答案例】
  資料1・2・3では議論の本位について論じている。特に、資料2では、相対的な考えから生じた「事物の利害得失」の判断において、正しく問題を設定する営みとしている。また、異なる意見を持つ者同士の合意を作り出すことで、議論の箇条を減らせることを指摘している。
  f正しく問題を設定するためには、資料5に登場する「人口容量」の概念を正確に理解する必要があり、これがひとつめの議論の箇条となる。資料5では、人口容量が国土の自然・社会環境をいかなる文明で利用するかで決まり、現代の日本は加工貿易文明により1億2800万人の人口容量だとしている。また、生活水準を一人あたりの容量とし、全体の容量が限界に近づくと、許容人口は生活水準が高ければ少なく、水準が低ければ多くなることを指摘している。このことから、gそれぞれの資料に現れる具体的な少子化対策において、生活水準および許容人口がどのように扱われているかをふたつめの議論の箇条に設定し整理すれば、人口容量の観点から、対策の実現性が評価できることになる。

  まず、資料4で挙げられている少子化対策「子ども・子育て応援プラン」では、政府が主体となって若者の経済的な自立支援を推進し、また子育て世代の経済的負担の軽減を図っていることを述べている。これは、国民の生活水準を上げることで、出生率が高まり、許容人口が増えるとする考え方だ。
  次に、資料5では、資料4にあるような政府による少子化対策を非難しているものの、それに代わる少子化対策の代替案を提示していないので、ふたつめの議論の箇条に触れていないことになる。
  最後に資料6だが、少子化の原因を過去の社会制度の矛盾から生じた現象の一つとし、この対策として、質の高い保育サービスの量的な拡充を、公務員主体の高コストで低水準の現在の保育所から、一定の公的助成を受けつつ、利用者の需要に応じて供給する「保育サービス」に転換するべきとしている。これは、規制緩和により、保育にかかる費用を低減しながら、保育の質を高めようとする考え方であり、経済的な意味での生活水準は低下させ、許容人口は増やそうとするものだ。
  以上より、i人口容量の範囲内で、どのような具体的な少子化対策を行えば、出生率をあげることができて、実際に少子化問題が解決する見込みがあるのかというのが、議論の本位となる。(970文字)

【答案例について】
f ここでは、まず、資料5に提示されている概念の関係(【人口容量】=【生活水準】×【許容人口】)に注目してみました。
g 資料5の議論の枠組みを他に適用するには、他の資料で、資料5の重要概念に対応するものがどのように扱われているか検討すればいいことになります。
h 資料の紹介の仕方は、議論の本位や議論の箇条の設定の仕方により異なります。ここでは、「生活水準」と「許容人口」の扱いがどうなるかという視点で資料を整理しています。
i ここでは「議論の箇条」を先に述べてから、その後で「議論の本位」を述べましたが、もちろんこれとは逆の順番で提示しても合格小論文答案は作成できます。
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問2
  前回同様に問1で、全体をまとめる視点としての「議論の本位」を設定しなかったことが影響し、この設問は採点対象外(=0点)です。
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※ 設問の条件を満たした議論の本位が問1で設定されていないので、議論のスタート地点にまで、まだ到達していません(=採点対象外)。従って、資料への賛否を論じても全く評価されません。
※※ 問1の小論文答案例に、対応する形の答案例を提示します。ここでは、資料6に賛成する方針で答案を作成しましたが、異なる議論の本位や議論の箇条を設定すれば、他の資料に賛成する方針で小論文答案を作成することが可能です。

【答案例】
  まず、資料4に登場する政府の少子化対策「子ども・子育て応援プラン」は、国民の生活水準を上げることで、出生率が高まり、許容人口が増えるとする考え方だが、資料5にあるように、人口容量には限りがあるので、生活水準と許容人口を共に増やす方法はうまくいかない。従って、資料4の主張には同意できない。
  次に、資料5は、具体的な少子化対策を挙げていないので、賛成できない。
  最後に、資料6であるが、「保育サービス」の考え方は、経済的な意味での生活水準を低下させつつ、許容人口は増やそうとするものであるから、人口容量の拡大を必要とせずに、実現する可能性がある。このことから、少子化対策としての実現性は高く、私は資料6に賛同する。
  なお、資料5では、豊かさを経験すると生活水準の低下を避けようとすると指摘しているが、これは乱暴な議論だ。許容人口の考え方では、生活水準は、計測可能で総量が限定できるもの、例えば、経済的な意味での生活水準に限定される。総量を計ることが不可能な生活の精神的な満足度が向上するのならば、資料6のように、経済的な意味での生活水準が低下しても何も問題はないのである。(488文字)

【答案例について(補足)】
  資料5の議論の枠組みを利用しながら、資料5ではなく他の資料に賛成する小論文答案なので、概念構造が複雑な答案となっています。
  資料5に賛同しないとするならば、前回の小論文添削コメントでも説明したように、「【人口容量】=【生活水準】×【許容人口】」の枠組み自体を否定してしまった方が、概念の関係が複雑ではない答案を作成できるので、合格小論文答案は、書きやすいと思います。
  ただ、あえてここに、複雑な概念構造の答案を提示したのは、ここに扱われている少子化の問題について資料で説明されている以上にたくさんの知識がない場合でも、資料に登場する概念の関係の考察だけで、高く評価される小論文答案を作成できることが可能であるということをご理解いただくためです。
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  添削コメントは以上です。良く復習しておいて下さい。
  設問の要求を的確に把握しないと、大学側に評価される小論文は作成できません。このことを肝に銘じて頂き、小論文対策を行うようにして下さい。
  次回の答案提出を心よりお待ちしています。

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