添削例:北海道大学(理学部AO:2018年)

 文科省の要請で、一般入試と、AO入試の二回の試験を実施しているだけで、北海道大学の理学部地球惑星学科のAO入試は、一般教科の学力試験とさほど違いがないと申せます。特殊な対策があることを期待せずに、理科(物理あるいは化学)や数学といった、一般教科の学習を進めることが肝要でしょう。
 
●それでは、設問ごとに検討して参ります。

■ 答案に書き入れました赤字が改善すべき点です。abc……の記号に対応するコメントは下段に記入してありますので御参照ください。記号のない箇所については、単純な誤記や分量調節のためのものです。

問題1
 数学の問題は、必ず、解答することになっています。

解答本文は省略)

(添削コメント)
問1
 確率の分野からの出題です。受験生の思考力を試すのに、確率分野は適していると申せます。

a 肩慣らしの問題です。落ち着いて解答してください。(1)の解答は、これで良いでしょう。正解です。

b 白球「1回」の確率ですが、白→赤→赤の確率しか計算しておらず、赤→白→赤や、赤→赤→白の確率を計算していません。三倍すれば、求めたい確率が出ます。同様に、白球「2回」の確率についても、三倍すれば、求めたい確率が出ます。計算が煩雑になるものの、この二箇所を直して計算すれば、求めたい期待値がでます。
 なお、各回の期待値の独立性に気づけば、一瞬で解答できます。別解を参照してください。場合分けをして、煩雑な計算をした時も、最終的な期待値が、(9/10)と同じ値になることを、御自身で確認してみてください。

c (3)については、正解です。状況を整理して理解できれば、一瞬で解答作成が終わりますね。

d (4)については、白球を(3+x)、赤球を(7-x)として立式すれば、後はなんとかなります。条件を整理すると、(3+x)(7-x)(6-x)=16となるのですが、ここからは、因数分解をせずに、x=1,2,3・・・と順番に値を入れて右辺が16になるxの値を求めると楽でしょう。

問2
 いろいろな数学の分野からの出題です。

a (1)は、パズル的な問題で、嵌まりこんでしまうと、入試の短い制限時間では、答えがでないことになりそうです。すぐに解ける見通しが立たないときは、諦めて次の問題を解いた方が良いと思います。
 参考までに、解答例を示しました。私が答案例を作成する際には、式の値が「-1」となるときに、a+b+c=0となることに注目し、(a+b+c)が登場するように、与えられた式を変形するようにしました。このように、結論から逆算すると、証明形式の問題は、説きやすくなることがあります。
 なお、他の方針でも解答が作成できそうですが、すぐにはその方針は思い浮かびませんでした。

b  論理学からの出題です。高等学校の数学で学習する範囲で、解答できるでしょう。解答者が選択した(イ)で正解です。

c  図形を把握する能力が問われています。提出していただいた答案は、出題の要求する手続きに従って、答案を作成できていません。完答できなくても、出題の要求する手続きに従って途中まで解答できれば、相当の部分点ももらえるので、できるところまで確実に出題の要求に従ってください。大学受験の試験は、満点を取ることをそもそも期待されていないので、部分点狙いも立派な戦略です。
 提出していただいた答案は、条件Pを図示していないのが問題となります。条件Pを図示したので、参考にしてください。円を描くだけでなく、円内に斜線を引いて領域を示すことが肝要です。
 なお、提出していただいた答案は、条件Qも正確に図示できていません。円を描くだけでなく、円内に斜線を引いて領域を示すようにしてください。

 提出していただいた答案は、条件Qの円のX切片を利用して、aの条件を求めようとしているものの、これでは、正しいaの条件を求めることはできません。なぜなら、条件PとQの円が接するときには、条件Pの円のX切片の外側に、条件Qの円のXの切片がくるからです。解答者が作成した図に、「すきま」と書いたのは、このことを示します。
 数式だけで考えるのではなく、図形としてふたつの円の関係を正確に認識できないと、この問題で完答することは難しいでしょう。私なら、二つの円が接するときに、各円の中心と、接点が一直線になることを利用して解答を作成します。(他の方法で、答案作成をする方法もあるかもしれません。)
 最終的な解答は、今回は示しません。ここまでのヒントを参考に、再度考えてみてください。


問題2
 解答者は、問題3の物理分野からの出題ではなく、問題2の化学分野からの出題を選択しました。

(解答本文は省略)

(添削コメント)
a 肩慣らしの問題です。落ち着いて解答してください。問1の解答は、これで良いでしょう。正解です。

b 解答提出がなく、どこでつまずいたのかわかりません。落ち着いて、与えられた条件を把握し、順番に考えるだけで正解にたどりつきます。計算はせずに、思考のプロセスだけ示しました。後は、自力で計算してみてください。

c 該当分野の知識が定着していれば、すぐに解答できるでしょう。全問正解です。

d これも、該当分野の知識が定着していれば、すぐに解答できます。全問正解です。

e 窒素酸化物は、(人為的な)高温での燃焼や、過剰な化学肥料の散布により、自然界にばらまかれるものであり、典型的な人為起源の大気汚染物質だと言えるでしょう。正解です。

f 計算が煩雑なものの、該当分野の学習ができていれば、立式まではできるはずです。解答のプロセスのみ示したので、参考にしてください。(計算はしていません。)なお、提示した数式をみても何を説明しているか全くわからないようであれば、状況は相当深刻です。該当分野の化学を基本から学習し直してください。

g 知識問題です。解答例を示しました。高等学校で学習する範囲であるものの、忘れてしまった場合は、考えてもどうにもならないので、諦めて別の問題を解くべきでしょう。

h 解答がありませんでした。人間が直接関与せずに、二酸化炭素を排出するものであれば、なんでもよいです。解答の容易な設問が後の方にあることがあることもあるので、途中に解けない設問があっても、忘れずに全部の設問に目を通してください。

解答例:「野生の動植物の呼吸」「日照りが続くことによる、森林火災」
 以上を踏まえて答案を修正してください。
 再提出の答案を心よりお待ちしています。