現在の大学入試では、学科試験中心の一般入試よりも、推薦・総合型選抜での合格者のほうが多くなっています。1〜2日の筆記試験だけで合否が決まる一般試験に対し、高校生活全般を評価してもらえる推薦・総合型選抜を有利と考える受験生が増えています。一方で、誤解や思い込みによって失敗する例も少なくありません。
ここでは、推薦・総合型選抜の対策として何が必要か、誤解されやすい点を中心に解説します。
Ⅰ 推薦・総合型選抜は、一般入試より簡単で合格しやすい。
一般論としてはそう言えますが、例外も多くあります。
推薦・総合型選抜は一括して語られがちですが、選抜基準の観点からは大きく3つに分かれます。それぞれ合否の決定方式が異なるため、以下で見ていきましょう。
1)指定校推薦
大学と高校の強い信頼関係が前提となります。高校は大学の求める水準を満たす生徒を、定められた人数内で推薦し、大学も原則として不合格にしません。
形式上は試験が行われますが、主な目的は高校側の評価が正しいかの確認や入学後の指導に必要な情報把握です。したがって、推薦枠に入れば合格はほぼ確実です。
2)公募推薦
指定校推薦と同様に高校の推薦が必要ですが、どの高校からでも、人数制限なく出願できます。その分「選抜」としての性格が強く、学力不足や大学生活への適性が乏しいと判断されれば不合格になります。
課外活動などが有利に働く場合もありますが、一般入試より合格しやすいとは言い切れません。また、評定平均や履修科目の条件が付されることが多く、満たさないと出願できません。
3)総合型選抜
かつてのAO入試で、保護者にはこの呼称のほうがなじみ深いかもしれません。大学が公表するアドミッションポリシー(選抜基準)に合致する学生を選ぶ方式で、出身高校の推薦は原則不要です。
その代わり、アドミッションポリシーとの適合度を測るため、筆記以外の多様な試験を課すことがあります。高校での評価にとらわれず勝負したい受験生には有利な方式と言えます。
「推薦・総合型選抜は一般入試より簡単」といわれる背景には、第一に①の指定校推薦では不合格者が非常に少ないこと、第二に③を早くから導入した大学が主に非難関校だったこと、第三に教科試験を重視しない傾向があったことという、3つの重要な原因があります。しかし現在は旧帝大や早慶など最難関校も積極的に導入しているため、特に②③は「一般より簡単」とは言えなくなっています。
Ⅱ準備はいつから?
推薦・総合型選抜では、高校での成績や部活動、独自の活動成果などが評価対象になります。そのため、高校入学直後から志望校を意識して生活するのも有効です。
しかし、多くの人は高校での体験を通して将来像が見えてきます。むしろ高校3年前半までは、興味を持ったことに積極的に取り組むほうが、選抜でのアピール材料になります。
ただし、授業は真面目に受けてください。指定校・公募推薦では教科成績が重要で、評定などの条件を満たさなければ出願できません。総合型選抜でも基礎学力を重視しますので、高校の授業内容程度は抑えておきましょう。
大学・学部ごとに評価基準は異なるため、志望校が固まらなければ本格的な対策は困難です。そのため、まずは高校2年生の終わり頃から、志望理由書の書き方や小論文の基礎演習など、どの大学でも必要となる部分に取り組むとよいでしょう。そして志望校が見えてきたら、それに対応した演習を徹底的に行うとよいでしょう。
Ⅲ 推薦・総合型選抜で評価される内容は、大きく3つある。
1)活動報告書・志望理由書など事前提出書類
高校時代に何に取り組み、どのような成果を得たか、なぜその大学・学部を志望するのか、進学後や卒業後に何をしたいか、などを記述します。
活動報告では経験の派手さよりも、それを将来にどう結びつけるかという分析力が重視されます。特別な経験でなくても、自分の言葉で整理できているかがポイントです。
志望理由では、「教育理念に共感した」などの一般的な表現では不十分です。教員の専門分野や研究内容、入学後のテーマを調べ、自分の将来像と具体的に結びつけて書くことが重要です。
大学によっては内容の指定が細かかったり、長文を求められたりします。事前に確認しておきましょう。これらの書類は面接の材料にもなるため、十分時間をかけて準備してください。
2)筆記試験(小論文・総合問題)
一部では書類と面接のみですが、多くの大学・学部で筆記試験が課されます。高校3年の時点という配慮から、教科試験は少なく、小論文が中心です。ただし近年は、複数教科の基礎知識を問う総合問題も増えています。
小論文を「国語の作文の延長」と考えると失敗します。特に理系では、小論文の形式でありながら教科知識を問う場合が少なくありません。化学論文を読ませて構造式を書かせる、文系でも長い英文を読ませるなどの例があります。
そのため、過去問を確認し、出題傾向を把握した上で対策することが不可欠です。志望校決定後では遅く、受験を検討した段階で過去問を見ておくべきです。解いてみることで志望校選びの判断材料にもなります。
3)面接・プレゼンテーション
面接では姿勢や話し方よりも、質問の意図を理解し、自分の考えを論理的に説明する力が求められます。そのため、想定される質問への考えをまとめておくと有利です。多くの大学が事前提出書類を中心に質問するため、書類の内容と向き合うことが重要です。
また、筆記試験で書いた内容について質問されることもあります。これは、暗記した模範解答をそのまま書いた受験生を見抜く意図があります。専門分野に関する時事的な質問が出る場合もあり、筆記試験対策とあわせて準備できます。
いずれも大学ごとに大きく異なるため、受験を検討したらすぐ情報収集しましょう。募集要項の確認やオープンキャンパスへの参加が有効です。
冒頭でも述べたように、推薦・総合型選抜は決して易しい試験ではありません。しかし、大学ごとのユニークな選抜方式を理解し、適切な対策を行えば非常に有利になります。一般入試では届かない志望校にも挑戦できるでしょう。