添削例:筑波大学(理工学群社会工学類推薦:2019年)

●筑波大学理工学群社会工学類の推薦入試では、毎年のように数学や数値を道具として用いて、社会事象の分析及び未来予測をすることができる素養があるかどうかを試しています。これを実践するには、次の三項目が重要です。

(1)数学や数値を道具として用いる能力
 より具体的に説明すると、統計図表の正しい読み取りや、数式の処理を迅速に行うことです。

(2)数学的な処理の結果を、社会事象に適用できる視野の広さ
 いくら数学が得意でも、数学の世界の中だけで満足していれば、社会工学を志す者としては、適性がないことになります。数学的な処理の結果が、注目した社会事象の中でどのような意味を持つかを考察する姿勢が極めて重要です。

(3)取り扱われる社会事象について、最低限の一般知識を持つこと
 最低限の一般知識とは、高校を卒業した者なら当然定着していることが期待される知識という意味であり、具体的には、公民科の政経分野や現代社会分野の知識が該当します。なお、公民科の倫理分野の知識は、社会工学科では、問われないはずです。
 統計図表を読み取る場合は、その年度に日本社会でどのような大きな出来事があったか(例:2011年東日本大震災/1991~1993年バブル崩壊)を知っていると解きやすくなる場合があります。第二次世界大戦後の日本の歩みについて、公民科の政経分野や現代社会分野を利用して、ザックリと学習しておいてください。公民科の教科書や資料集を(繰り返し)流し読みしておくのがお勧めです。
 社会工学類の小論文で扱う社会事象について、専門家でないと知らないような高度な知識は、現時点で不要であるものの、最低限の知識がないと、統計図表の数値推移の背景や、数学的な処理の結果がもつ意味を、考察することができません。

●提出していただいた答案を拝見しました。概して優れた出来映えとなっています。ただし、この年度は、他の年度と比較して解きやすい問題になっているので、油断せずに対策を続けるようにしてください。

●それでは、早速ですが、提出していただいた答案に対して、設問ごとにコメントをして参ります。

■ 答案に書き入れました赤字が改善すべき点です。abc……の記号に対応するコメントは下段に記入してありますので御参照ください。記号のない箇所については、単純な誤記や分量調節のためのものです。

問1
図1に示されている政治形態の変遷が、実際の舗装道路ネットワークの変遷に影響したかを、仮想的な舗装道路ネットワークの変遷と比較しながら、論じることになります。提出していただいた答案は、ほぼ文句なしの合格答案です。

(解答本文は省略)

(添削コメント)
A 段落冒頭に、一マス分のスペースを設けてください。長文を書く際のルールです。

a 持って回った表現です。簡潔に述べることが出来るにもかかわらず、わざわざ無意味な記述を連ねるのは、文の印象を大きく損ないます。これは、本来書くべき自分の主張や意見、またその論証が足りないために、無用な言葉を入れておいただけ、との印象を読み手に与えかねません。書くべき事柄は必要なだけ書き、無くてもかまわない=文意が変化しない事柄は一切書かない、これは論作文の大原則なのです。

b 読点が不足しています。読点(、)をどこで用いるか、との原則は難しいところですが、文脈が変わる箇所、主部と述部の間、目的語(「~を」で終わる部分)の後には入れておくのがセオリーです。また、一文の中で一カ所も読点がないのは、読み手に対する配慮を欠きます。よほどの短文でない限り、1つは入れておきましょう。

問2(1)
 「道路支出指標」の定義に基づいて、指標の値の意味を考察することが求められています。提出していただいた答案は、ほぼ文句なしの合格答案です。

(解答本文は省略)

(添削コメント)
A 段落冒頭に、一マス分のスペースを設けてください。長文を書く際のルールです。

B 接続詞を入れることで、文と文の関係が明確になり、論旨が明瞭になります。

a 助詞の用い方を丁寧にしましょう。たった1字ですが、内容を読み手にわかりやすく伝えるための工夫です。

問2(2)
 図3を活用して、政治形態と道路支出指標の関係を考察し、説明することが求められています。提出していただいた答案は、ほぼ文句なしの合格答案です。

(解答本文は省略)

(添削コメント)
A 段落冒頭に、一マス分のスペースを設けてください。長文を書く際のルールです。

B 短い間隔で同じ助詞が連続すると、読み手が論旨を把握しにくくなります。この、問題を解決するため、代替表現を用いました。

a 読点が不足しています。読点(、)をどこで用いるか、との原則は難しいところですが、文脈が変わる箇所、主部と述部の間、目的語(「~を」で終わる部分)の後には入れておくのがセオリーです。また、一文の中で一カ所も読点がないのは、読み手に対する配慮を欠きます。よほどの短文でない限り、1つは入れておきましょう。

b 持って回った表現です。簡潔に述べることが出来るにもかかわらず、わざわざ無意味な記述を連ねるのは、文の印象を大きく損ないます。これは、本来書くべき自分の主張や意見、またその論証が足りないために、無用な言葉を入れておいただけ、との印象を読み手に与えかねません。書くべき事柄は必要なだけ書き、無くてもかまわない=文意が変化しない事柄は一切書かない、これは論作文の大原則なのです。

問3
 問2と似た問題ですが、注意すべき項目が増えて、より複雑な考察・説明が求められることになります。制限字数内に簡潔にまとめるのには、相当苦労する設問ですが、うまくまとめることができています。ほぼ文句なしの合格答案です。

(解答本文は省略)

(添削コメント)
A 段落冒頭に、一マス分のスペースを設けてください。長文を書く際のルールです。

a 読点が不足しています。読点(、)をどこで用いるか、との原則は難しいところですが、文脈が変わる箇所、主部と述部の間、目的語(「~を」で終わる部分)の後には入れておくのがセオリーです。また、一文の中で一カ所も読点がないのは、読み手に対する配慮を欠きます。よほどの短文でない限り、1つは入れておきましょう。

b 持って回った表現です。簡潔に述べることが出来るにもかかわらず、わざわざ無意味な記述を連ねるのは、文の印象を大きく損ないます。これは、本来書くべき自分の主張や意見、またその論証が足りないために、無用な言葉を入れておいただけ、との印象を読み手に与えかねません。書くべき事柄は必要なだけ書き、無くてもかまわない=文意が変化しない事柄は一切書かない、これは論作文の大原則なのです。

問4(1)
 与えられた文章の数式化と、証明が求められています。文句なしの合格答案です。

(解答本文は省略)

(添削コメント)
※このままで、模範解答と言えるレベルです。修正は不要です。

問4(2)
 数式を操作する能力が、主に求めれています。答案作成方針はこれで良いもののの、最後の最後に説明でミスをしています。答案作成が終わっても、時間の許す限り見直しを行い、ケアレスミスを減らすことに努めてください。

(解答本文は省略)

(添削コメント)
A 説明にミスがあるので、修正しました。
 以上を踏まえて答案を修正してください。
 再提出の答案を心よりお待ちしています。