昇進昇格試験 AIが作成した解答とその添削

AI作成の解答と、WIEの添削・解答例


近年、ChatGPTなどAIを使用して、過去の出題例に対する解答を作成し、それを覚えることで試験対策をする方が増えています。WIEのAIに対する考えは、就活や昇進昇格試験の答案をAIで作成することについてにまとめてあります。
実際にAIに解答を作成させ、それに対する添削をして見ました。

出題

 A係長は、X課Y係の係長2年目である。部下はB主査(40 代)と C主任(30 代)の2名であったが、今年4月の人事異動で、新たにD係員(新卒)が配属されることとなった。
 A係長は、B主査・C主任とも話し合い、前年度にC主任が担当していた業務をそのままD係員に担当させるとともに、C主任にD係員の指導役を任せることとした。C主任も自信満々であった。D係員の配属後は、C主任が担当業務の引き継ぎを一通り行い、あとは仕事をしながら覚えていく感じで、その後も逐一丁寧に指導する姿が見られていた。
 異動から2か月程経ったある日、C主任と2人で残業する機会があり、D係員の成長具合を何気なく聞いたところ、「D係員の成長がほとんど見られず、指導に行き詰まっています。何回指導しても、メモは取らない、自分で考えない、確認不足でミスは多いといった状況で、つい叱ったところ、だんだん私ではなくB主査を頼るようになってきています。もう少ししたら繁忙期に入るので、このままだとフォローしきれるか不安です。」と悩みを打ち明けてきた。
 どうやら、D係員の回ってない業務をC主任が引き取って処理することもあったようである。
このような状況で、あなたがA係長であれば、今後どのように対処していくか、係長の果たすべき役割を踏まえたうえで、考えを1000字以内で述べなさい。

AIの作成した答案と。それに対するWIEの添削

全体的な講評
 誤字脱字などの国語表現の問題はなく、題意に沿った解答ができています。受験者の平均ないしはそれよりやや上の水準と評価できます。しかし、確実な合格を目指すには、いくつか改善すべき点があります。
 詳しくは、答案の外交箇所でコメントしますが、1)係長がすべてを抱え込み、業務過多となっている、2)1)と関連して係員相互の協力関係構築が不十分、3)次世代の指導者・管理職が育て難くなっている、といった問題があります。
 また、このこと自体は減点要因ではありませんが、一般的・常識的な解答ではあるものの、解答者の具体的な勤務先に最適なものかどうかという点で疑問が残ります。設問文は解答者の具体的な職場状況を問うてはいませんが、これを盛り込むことで、他の受験者よりも高い評価が期待できる答案になるでしょう。

 答案に対するコメントは、添削本文の後にまとめてあります。abc……、ABC……の記号は、答案のものと対応しています。なお、特にコメントのない修正は、単純な語句の誤りや、分量調整のためのものです。

添削本文(AIによる解答)


 A係長として、まず認識すべきは、D係員が十分に成長できていない背景に、本人の姿勢の問題だけでなく、指導方法や組織としての育成体制の不十分さも含まれているという点である。係長の役割は、単に部下に業務を割り振るだけではなく、チーム全体が安定して成果を出せるよう環境を整えることにある。そのため、個々人の課題を把握しつつ、チーム全体の力を引き出す調整役として行動する必要がある。
まずD係員に対しては、仕事に必要な基本姿勢を改めて確認することが重要である。メモを取らない、自分で考えないといった行動は、指導を受ける側の基本が欠けていると言える。私は定期的な個別面談を設定し、D係員自身に現状の課題を自覚させ、改善の行動目標を小さく区切って提示する。例えば「必ず指示内容をメモに残す」「業務前に手順を自分の言葉で確認する」といった具体的な行動習慣を指導する。その上で、達成状況を定期的に振り返り、できている点は承認し、改善点は明確に示すことで自律を促していく。
 次にC主任に対しては、単に指導役を任せきりにするのではなく、係長として支える姿勢を示す。指導に苦慮し精神的に疲弊している様子が見られるため、まず努力を評価し感謝を伝える。その上で、指導の仕方を一緒に検討する場を設ける。例えば、一方的な叱責に偏らず、「できた点を褒め、できない点を一緒に整理する」指導法や、難しい業務をいきなり任せるのではなく段階的に習熟させる方法を共有する。また、D係員がB主査に頼るようになっている点を前向きに捉え、チームとして多面的に支える仕組みを作るよう促す。こうした対応により、C主任の負担軽減と成長意欲の維持を両立させる。
さらにB主査には、D係員が相談している実情を把握したうえで、意識的にサポートを依頼する。年長者として経験豊富であり、D係員にとっても安心できる存在となり得る。B主査には、直接的な業務指導だけでなく、仕事の姿勢や心構えを伝えてもらうことで、D係員の意識改革を促すことができる。
 最後に、係長として最も重要なのは「繁忙期に入ってもチームが機能不全に陥らない体制づくり」である。そのためには、D係員の成長速度に応じて業務の分担を柔軟に調整し、フォロー体制を明確化する。併せて、定例のチームミーティングを設定し、進捗や課題を全員で共有することで、指導の偏りや負担の集中を防ぐ。こうした取り組みを通じ、部下一人ひとりの成長を支えつつ、チーム全体として成果を出せる組織づくりを実現することが、係長としての責務である。
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A:業務知識の豊かな先輩が、知識の不十分な後輩に接する態度としては申し分のないもです。したがって、この部分だけであれば、特に減点の対象にはなりません。 しかし、管理職=一部署の長として部下全員を指導していく立場としては、やや不十分です。次のBと関連しますが、部下相互の関係や役割分担にも踏み込んだ記述が望まれます。
B:この部分、確かに管理職の役割として、次世代の管理職を養成する、という側面があります。その点では適切な行動です。しかし、現在のように係長の指示・注意だけでは不十分な場合もあります。Cの年齢(30代)ですから、現在の方法が無理とまでは申しませんが、より負担の軽い、常時相談できる方法を提案するとよいでしょう。
C:制限字数がありますので、あまり詳しくは述べられないでしょうが、それでも抽象論・一般にとどまっており、有効な提案となりません。より具体的な対応を考えてください。
D:B・Cと関連しますが、ここも注意・監督だけですと、体系的・総合的な指導・教育としてやや効率が悪いと思われます。 そこで私なら、CとD、さらにはBとCに同一業務を担当させる、チーム方式を提案します。これですと、同じ業務を先輩・上司と担当することで、一貫した流れが理解できるでしょう。また、疑問を即座にかつ具体的な業務に即して解決していくことで、自信も生じることでしょう。さらに業務の属人化を予防することも期待できます。
 なお、現在Dの能力が不十分であるにもかかわらず、業務の遅滞等は見られないようです。繁忙期前の現段階であれば、チーム制導入当初の業務効率低下は十分吸収できると思われます。
E:これも一般論としては問題のない記述ですが、他の改善で指摘したように、より具体的な対策に踏み込んだ方が、高い評価が期待できます。
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 以上のコメントを参考にして、手入れたものを再提出してください。

 なお、これらのコメントを取り入れた解答例は、次のようになります。

 課題文の状況を招いた原因は、本来係長の責任で係全体で行うべき新人教育をC一人に任せたことである。また、OJTに不可欠な同時に担当する期間を設けずに、引き継ぎだけでDに業務を移行したことも不適切であった。このため、Cによる説明だけではDは実務が理解できなかった。そのため要点が分からず、メモが取れなかった。これでは、何を自分で考えるのか、ミスを防ぐ要点はどこか分からず、これがCには成長がないと見えた。この状況で叱責されたため、DはCに苦手意識を持ち、Cを避けてBを頼るようになった。
 以上の原因に対する解決策の一つとして、A係長の責任で、CとDに同一業務を担当させる。これによって、Dに適切な業務を体験でき、効果的なOJTとなる。同一業務二人体制となり非効率的だが、これまでY係は3人体制で、Dの配属後も業務量の急増はないので、対応可能である。実際、現在もDの業務をCが引き取っているので、同一業務にCとDを同時に配置しても、時間外勤務の増加はないと思われる。
 これともに、BにもCの業務を一部二人体制として手伝うようにする。このことで、CがDの指導に注力することで増加する負担を、BがCの業務を支援することで軽減する。しかし、もっと重要なことは、現在Dが信頼を寄せているBの業務指導・後進教育を、Cにも体験してもらうことである。したがって二人体制とする業務は少なくて良い。Cの業務量軽減は限定的でも、CのDに対する指導力の向上させる効果があれば良い。
 さらに係全体として、現時点でCとDの間にある緊張関係を緩和する必要がある。そのためには、A係長の主催で、業務の引き継ぎに関する係全体の会議を週一回、30分程度でも良いので定期的に行う。これによって、DがCの指導に迷った時や、逆にDがCの指示ややり方に疑問を感じた時に、係全体で情報を共有し、話し合える場を作る。現在のように、DがCを経由せずにBと相談することで生じるCとDの間の不信感を解消するができ、また全般的な業務改善の施策も生まれやすくなるだろう。A係長の役割は、同一業務二人体制の目的と期待される効果をB・C・Dに丁寧に説明し、また彼らの意見を取り入れ、この体制導入に対する同意を得ることである。
 また、係全体の会議では、議題の設定や議事進行を工夫し、特に新人のDが発言しやすい場とすることが必要である。(979字)