京都大学小論文講座(特色入試)

京都大学の入試過去問(特色入試)に取り組むことで、合格を目指します。
学びの設計書など、事前提出書類の添削もいたします
新年度版(2025年入学者対象)は、現在準備中です。
閉講後に教育学部:総合の添削を希望される方は、問題持込小論文添削問題手配依頼小論文添削をご利用ください。

合否報告をいただいた2023年度受験生の合格率は100%です(合否のお問い合わせにお答えいただいてない方2名は除外しております)
合否報告をいただいた2021年度受験生の合格率は100%です(合否のお問い合わせにお答えいただいてない方3名は除外しております)。

使用教材や添削回数については、大学別対策講座一覧を御覧ください。

難関の京都大学特色入試ですが、全課題を提出した受講生の合格率は7~80%と、WIEの大学別講座の中でも最も高くなっております。「学びの設計書」の指導例も豊富です。ぜひ合わせてご利用ください。

国公立大学前期日程の合格者発表後から、後期の対策を始める方にもお勧めです。

京都大学(特色入試)合格へのタイムスケジュール

 春休み~1学期前半は、入門小論文に取り組むことをおすすめします。
 また、学習方法に迷われている方には、志望学部・学科の実力診断がおすすめです。


基礎学習を希望される方は、入門小論文講座を受講されるか、自習用教材のご利用をお勧めします。
昨年度の実績では、「入門小論文」を受講してから大学別講座を受講された方の合格率は、大学別講座だけを受講された方よりも、10%から20%高くなっています。

WIE受講者の合格実績はこちら

現時点での実力を知った上で、受講講座を決めたい方のために、実力診断を行っています
入門小論文など基礎学習から始めるべきか、すぐに過去問演習を始めるべきか迷っている方におすすめです。

実力診断の内容             アコーディオンで開閉します。

今、志望大学・学部を受験したら、どの程度のできるのだろうか。また、合格するためにやるやるべきことは何か。過去問に挑戦して頂くことで、経験豊富なWIE添削陣が的確な診断と助言をいたします。
大学別講座で扱う過去問の前年出題を教材にしております。
 
①WIEの大学別講座から、診断を希望する大学・学部・受験型を選んでください。
②お申込ボタンをクリックし、手続きを進めますと、レジ画面が表示されます。その下の方に備考欄がありますので、そこに①で選んだ「大学・学部・受験型」を記入してください。
③入金確認後、①の過去問1年分をwieからお送りします。
④③の解答を作成し、WIEに送ってください。
⑤通常添削と同じ期間で診断をお返しします。
 1)これまでの受講生・合格者の答案と比べてどのような位置にあるか
 2)1) で指摘した問題点。課題を克服すための方法
  ・wieのおすすめ講座/・関連する高校教科など
料金は問題の難易・答案字数の多少に関わらず一律5500円です。

上記の内容で利用を希望される方は、こちらからお申込みください。
※試験日まで1ヶ月半を切っている場合には、実力診断を受けずに、大学別対策講座に進まれることをお勧めします。大学別対策講座でも、基本的な知識の不足やその克服方法など、小論文以外にも補足的な指導を行っております。

下記講座から1つ選びレジ画面備考欄に記入 WIEが選定した過去問1年分 ¥5,500

開講講座と料金・お申込

お申込メールをWIEで受信しますと、自動返信でお振込先等をご案内いたします。
(自動返信が届かない場合の対処方法はこちら。)

講座名:京都大学小論文講座(特色入試) 添削問題数 料金 お申込
総合人間学部文系 3年分 ¥51,200 準備中
文学部(22・23年度分) 2年分 ¥43,200 準備中
文学部:学びの設計書に関連する論述 1年分 ¥10,200 準備中
教育学部(22・23年度分) 2年分 ¥53,500 準備中
教育学部:学びの報告書 1年分 ¥18,400 準備中
法学部(20・21・23年度分) 3年分 ¥57,500 準備中
医学部人間健康科学科(21・22年度分) 2年分 ¥57,500 準備中
農学部応用生命科学科(20・22・23年分) 3年分 ¥49,300 準備中
農学部森林科学科(22・23年度分) 2年分 ¥43,200 準備中
農学部食料・環境経済学科(22・23年度分) 2年分 ¥43,200 準備中
農学部地域環境工学科(21・22年度分) 2年分 ¥57,500 準備中
薬学部(22・23年度分) 2年分 ¥43,200 準備中
学びの設計書:総合人間学部文系 1年分 ¥10,200 準備中
学びの設計書:文・育・経・医・農・薬 1年分 ¥18,400 準備中
上記以外の応募書類・提出書類の添削     こちら

※*マークがついているものは、課題文の出典しか示されていませんので、wieで出典を入手し、出題時の形に再現しています。
※お申込の際は、通販法表記を必ずご確認下さい。
※リストにない学部学科の添削を希望される方や、大学別講座の受付終了後に添削を希望される方は次の方法で対応しております。
 ●添削を受けたい過去問(課題)をお持ちの方:問題持込小論文
 ●過去問(課題)の入手と添削を依頼したい方:問題手配依頼小論文
 いずれの講座も、お急ぎの方のため特急添削・急行添削を設定しています。試験までに一回は過去問の添削を受けましょう。

合格の声(クリックで詳細を表示します)

※最新年度の合格者のコメント・体験記(全大学)はお客様の声にあります。

M・Yさん(2021年京都大学 文学部合格)

 今回、お蔭様で、京都大学文学部に特色入試で合格することができました。佐々木先生には、いつも丁寧かつ的確に添削して頂き、しっかりと小論文の基礎を身につけることができました。本番は、自分の学びたい分野に関する論文が出題されたこともあり、実力を十分発揮することができました。私はこの試験の準備をするまで小論文を書いたことが全く無かったので、ここでしっかりと論理的な文章の組み立て方を身につけられたことは、大学入学後にもプラスに働くと思います。
 本当にありがとうございました。ようやく大学入学というスタート地点に立てたので、ここから更に学びを深めていきたいと思います。

K・Mさん(2021年京都大学 経済学部合格)

 今回、京都大学の経済学部に特色入試で合格することができました。
 小論文対策をしていただいた西田先生によろしく申し伝えください。

Y・Uさん(2020年京都大学 法学部合格)

 私は、東京大学受験後からWIEで添削指導を受け始めました。英語の課題文と日本語の課題文とを踏まえる形式の問題のため、学校の先生よりも特色入試に特化した方の指導を受けたいと思ったからです。それまで小論文を書いた経験がほとんどなかったため、WIEから送られてきたガイダンスに従って小論文のノウハウ本に目を通しつつ、過去問の添削を受けていました。その際には、西田先生の指導通り合格答案を作ることを念頭に過去問演習に取り組み、詳細で適確な添削を受けて再提出を行いました。 
 一方、過去三年分のいずれも時間内に解ききることが出来ず、精神的な負荷はかなり感じていましたが、先生にはメンタル面でも支えていただき、落ち着いて本番の試験に取り組むことができました。本番は練習に比べてかなり精度を落としてしまったように感じ、合格する自信はありませんでしたが、結果的に合格することができたのは高水準の添削指導のおかげです。また、指導の中で培った自身の意見を明確かつ簡潔に伝える力は、受験のみならず今後にも活きてくるはずです。短い期間でしたが、WIE には本当に感謝しています。

K・Aさん(2020年京都大学 薬学部合格)

 私は、学校以外に特色入試に向けて指導をしていただけるような機会がなかったため、不安を感じていたことがきっかけで、WIEさんの過去問添削の講座に申し込みました。
 京大薬学部の論文試験は、(過去問では)実際の英語の論文を用いた問題と、実験の過程を追って、結果を考察する問題が出題されており、普段の勉強とは異なるため、対策が難しかったです。WIEさんの添削で特に助かったのが、まず特色入試の添削をしていただけたということです。過去問の自分の答案が妥当なのかどうか、プロの方にも見ていただきたいと思って、調べたところ、やっていただけるのがWIEさんだけでした。また、実際に指導を受けてみて、私の答案に真剣に向き合って、最適なアドバイスをしていただけたと実感しています。 
 さらに、私の相談に親身になって応えていただけたのが助かりました。わからないことばかりだったのですが、WIEさんのおかげで、2次試験で落ち着いて力を発揮することができたと思います。ありがとうございました。

I・Aさん(2020年京都大学 医学部人間健康科学科合格)

 お陰様で、第一希望の、京都大学医学部人間健康科学科の特色入試に合格し、春から京都大学への進学が決まりました。また、併願校として出願した、慶応義塾大学 看護医療学部・聖路加国際大学 看護学部にも合格し、結果として、出願したすべての大学からの合格をいただけたこととなりました。このような満足いく結果になったのも、小論文の書き方を一から丁寧に教えてくださり、毎回ありがたい励ましのお言葉を送ってくださった先生方のおかげです。本当にありがとうございました。 
 初回は、今までほとんど対策をしてこなかったがゆえに×が多くついた答案に焦りを感じましたが、回を重ねるごとに、〇がたくさんの解答を作ることができるようになり、小論文を書くことに楽しさを感じるようになりました。 添削を担当してくださった中島先生に、どうぞよろしくお伝えください。

A・Iさん(2017年京都大学 法学部合格)

 前期入試の出来が思わしくなく、3月になってこちらの講座に申込み、指導していただきました。案の上前期入試は不合格で、結果的にWIEのおかげで京都大学に合格できました。また、私は申込みの時期が後期日程ギリギリだったため添削が返ってくるかどうか不安でしたが、後期日程までに提出したすべての答案を添削してもらうことができました。 京都大学の後期日程は、課題文が膨大で難しく、さらに去年から特色入試という形になったため、自分では過去問の分析も不十分で、受かる自信はありませんでした。しかし、西田先生の指導は的確で分かりやすく、書き切ることに精一杯で見落としていた設問のポイントや解答で用いる公民の知識の誤りを丁寧に指摘していただきました。よって、演習した問題数は2題でしたが、再提出を含め徹底的に指導していただくことで、京都大学に合格する必要十分の知識を得られたと思います。

H・Yさん(2016年京都大学 経済学部合格)

 私はこれまで、いくつかの所で小論文の添削をしてもらいましたが、WIEさんほどに添削が細かく行き届き、質問にも親切に答えていただいた所はありませんでした。他所の添削では、「どうしてここが直されてしまったのだろう」と疑問が残る時がありましたが、WIEさんではそのようなことは全くありませんでした。また、同じ問題を再添削してもらえたり、自分で問題を持ち込むことができたりするのもWIEさんの大きな魅力だと思います。このように、WIEさんの添削は、他の添削会社と一線を画していると言えます。 
 私がWIEさんに添削していただいた問題は二年分とあまり多くはありませんでしたが、回数を重ねるたびに小論文の力がついていく実感がありました。私が合格できたのは、ひとえにWIEさんのおかげです。西田先生をはじめとする先生方にはとてもお世話になりました。本当にありがとうございました。

Y・Yさん(2016年京都大学 経済学部合格)

 まさか私が京都大学に合格できると思ってもいなかったので、本当にびっくりしています。特別小論文が書くのが上手かったわけではなく、京都大学の他大学に見られないほどの長くて難解な課題文を正確に読解することも出来ていませんでした。しかし西田先生は細かなところから文と文のつながりの大きな構造も指導してくださるだけでなく、私の読解の不十分なところまで指摘していただけました。1回の添削で答案に対する問題点や改善点をA4用紙6~7枚分の量で指摘されるので、1回1回の添削で学ぶことが非常に多かったです。センター試験が終わってから本番までの短い期間でしたが格段に表現力、読解力が上がったと思います。 
 京都大学の小論文は決して付け焼刃で合格の答案は書けないと思います。私は市販の参考書のような広く社会科学系小論文を扱ったものでは不十分な部分が多いと思います。しかし、WIEでは京都大学に特化した対策ができるので非常に役に立つと思います。 
 最後になりましたが、ご指導いただいた西田先生、本当にありがとうございました。

 

添削主任より:京都大学を志望される皆さんへ

 2016年度入学者選抜試験から、京都大学は特色入試を実施しました。詳しくは大学のホームページなどを参照して頂きたいのですが、学部・学科ごとに実施する試験問題には、小論文形式が採用されています。
 ただし、各学部・学科ごとにそれぞれ個性的な出題になっています。例えばほとんどの学部で課題文あるいは資料として英文を読ませていますが、文系学部では大学受験としては非常に分量が多くなっています
 これに対して理系学部では、高校の授業でほぼ触れることのない自然科学を題材とした英文が出題されます。また理系学部では、高校理科・数学の知識を前提にしている出題が見られます。
 このため、WIEでは各学部ごとのサンプル問題を含む過去問演習をすることが、最も確実な入試準備になると判断しています。なお、一部理系学部で出題される、数学・理科の記述問題は、小論文とはいえませんので、当講座では取り扱いません。
 なお、出願時に提出する「学びの設計書」などに関しても、これまでの実績を踏まえた添削が有効です。そのため、通常の「問題持込小論文講座(学部・文系)」とは別に、本講座の一部として取り扱います。

この講座の添削例(クリックで詳細を表示します)

経済学部2020年度入試

受講生による答案本文は割愛しております。
ABC等の記号は、添削コメントが答案本文のどの箇所に対応しているか、示すために用いているものです。

 さて、今回もテキストの傾向と対策と重複する部分もありますが、簡単に出題傾向を分析しておきましょう。まず、最大の相違点は、英文課題文が課されるようになったことでしょう。語彙や文法といった教科としての英語で重視する点では、さほど難しいものではありません。しかし、内容的にはかなり学術なものですから、概念の関係=論旨を慎重に追いませんと、正確な理解はできません。大学のゼミで外国語文献を読む際に必要となる能力が求められます。もう一つの特徴は、18年以前の出題には存在した、解答者独自の主張・見解を問う小問がありません。すべての設問が、「著者によれば」「説明しなさい」「訳しなさい」といった課題文の内容把握を要求するものか、英文和訳となっています。
 19年過去問が完全な形で公開されていないので、断言はできませんが19年からの傾向というべきかもしれません。いずれにしても、京大経済学部が、読解力・要約する力を重視しているとは申せます。
 今回の答案では、日本語課題文の内容把握に関しては、問題はありません。また日本語課題文も、短文単位での訳出はできています。そのため設問1・2は初回提出から合格圏と申せます。しかし、英文課題文の全体的な論旨が正しく把握できていません。そのため、設問3~5は合格圏とは言えません。
 他の受講生も苦戦していますが、英文読解に関して、長文全体の論旨構造を理解するよう、丁寧な読みが必要です。

設問1

 出題傾向の分析で述べましたように、課題文の内容把握=要約問題です。ご質問の考え方でよく、この点に誤解はありません。しかし、設問の重要な指示に十分に応えていませんので、合格圏ではありますがギリギリです。詳しくは答案の該当箇所で申し上げますが、「会社の構造」について課題文の論旨が省略されすぎています。
 なお、この改善をしますと字数が増えますので、その調整が必要になります。これも併せて考えましょう。

添削コメント

A:取り消し線をしましたが、課題文に対応する記述があり、設問の要求する「株主主権」と関係していますので、誤りではありません。
 しかし、課題文では「法人化されていない企業」(=単なる企業)と「法人化された企業(会社)」との相違を指摘したうえで、個人事業主(例:八百屋)の平屋に対して、法人である会社(例:デパート)を「二階建て」の「構造」だと述べています。そのうえで、法人として会社組織(二階)を所有するのが株主であり、一階部分では今度は会社がヒト(法人)として会社資産を所有している、という構造を指摘しています。課題文4ページでは、これを図示しています。
 現在の答案では、この「二階建て(構造)」が正確に答案に盛り込まれていません。今回ギリギリと判断したのはこのためです。
B:Aで字数が増加した場合には、ここで調整するとよいでしょう。ただし、どの程度調整すべきかは、Aの改善結果次第ですから、短くした例を示すだけにしておきます。


 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。

設問2

 純粋な下線部和訳問題です。特に難解な単語はありませんし、仮に訳語の選定に迷うような単語でも、〔A〕を参照すれば、適訳が見つかるでしょう。
 現在の答案では、重要概念(論点)の訳出とその相互関係(論旨)の再現はできていますので、合格圏です。ただし、大学入試レベルでここまで要求するのは難しすぎるとおもうものの、日本語として改善すべき点があります。また答案用紙にも改善点があります。

添削コメント

A:これまでの添削で指摘してきましたことと重複しますが、答案が語句ではなく、文になる場合には、書き出しを1字空けます。
B:誤訳ではありませんが、~ only if…… という形であることがやや曖昧になっています。「~なのは、……場合に限られる」という訳になりますね。ちなみに、if / only ifは、論理学の用語で言えばそれぞれ「十分条件」と「必要条件」を表す表現であり、論理展開を把握するために非常に重要ですので、英語課題文を読む際には注意してください。
 ここで、訳の順番を変更して、the executive is exercising~なのは ……のときだけである。という構文にしてみましょう。

 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。

設問3

 この設問はさらに二つの枝問から構成されています。(1)は部分和訳、(2)は課題文の内容把握を要求しています。しかし、 (2)は課題文には下線部以外にa free societyを使用していません。つまり課題文には設問の最重要概念対する直接の「説明」=概念規定がないのです。このため解答者自身が「フリードマン」の考えを再構築する必要があります。
 答案の評価は、(1)(2)とも残念ながら合格圏とは申せません。これは、課題文全体の構造的理解に関係します。答案の該当箇所で詳しく見ていきましょう。

添削コメント

A:この部分、Becauseで始まる節が、何の理由なのかで、解釈が分かれます。現在の答案は、inconsistentの理由だと判断したようです。しかし、この節はcall (on)の理由でしょう。「~だから(=Because)、……するように要望するのはinconsistentである」とい構文です。このinconsistentは次の下線部(c)で理由が示されています。
B:課題文に対応する記述があり、一応「自由」には関係しますので、書くと減点になるとまでは申せません。しかし、課題文では、こうした個人の信条や行動にとどまらない、自由の議論をしています。
 ここで注目するべきは、課題文の冒頭にあるfree-enterprise=自由企業という概念です。この自由企業のあるべき姿として、社会の基本的なルールを守りながらも、make as much money as possible といった諸原則を打ち出しています。こうした自由企業がその本体の姿で活動できる社会が、a free societyなのでしょう。
 したがって、まずはこうした自由企業に許される「自由」についての議論を紹介したうえで、a free societyと関係づけることになります。それでもまだ字数に余裕があるようなら、現在の個人に関する記述を取り入れましょう。


 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。

設問4

 ここも設問の構成は、設問3と同じく、部分和訳と内容把握との二つの枝問から構成されています。(1)は文句なしの合格答案です。それに対して、(2)は合格圏ではありますが、ギリギリという評価になります。(2)では、「フリードマン流の会社の社会的責任」に関して見落としがあり、不十分な記述となっているからです。

添削コメント

A:設問2のAと同じです。
 なお、ここを正しく訳出できていますので、inconsistentが、社会通念上の会社の「社会的責任」を「見せかけの偽善」と批判しておきながら、その克服のために「社会的責任」を要求していることだと理解できるでしょう。
B:この部分、「社会通念上の会社の社会的責任」と「フリードマン流の会社の社会的責任」を取り違えています。
 設問2で正しく解答できていますので、会社の所有者(株主)や消費者・非雇用者の利益に反するような行動を、〔B〕(の著者であるフリードマン)は、「社会的責任」と述べています。これは最終的に否定されるべきものであって、フリードマン自身が主張する責任ではありません。
C:Bでお気づきだと思いますが、こちらがフリードマンが遵守すべきだと主張する「責任」ですね。
 実は現在までのところ、受講生の半数以上が「社会通念上の会社の社会的責任」と「フリードマン流の会社の社会的責任」を逆に理解しています。その原因は、フリードマン自身は、自分が主張する責任については、socialをつけずに、ただresponsibilityとしています。しかし、他にはフリードマンが主張する責任はないので、これが「フリードマン流の会社の社会的責任」となります。
D:結論から言いますと、ここは「フリードマン流の会社の社会的責任」なります。しかし、A~Cの改善に伴って、ここも再検討が必要です。
その際、注意すべきことは下線部の“social responsibility”にはクォテーションマークが付されていることです。丁寧に読みますと気がつくと思いますが、フリードマン自身は、自分が重視する「責任」に対しては、Cで述べましたように“social responsibility”としてはいません。
 そこで、下線部の“social responsibility”は、フリードマンが考える果たされるべき責任に対して、皮肉を込めて否定されるべきsocial responsibility(=「社会通念上の会社の社会的責任」)という語に“”を付けて用いたのだと言えます。
 つまり、この部分は素直な論旨の流れではなく、皮肉といった修辞法上の問題を理解できないと、解答できないのです。教科としての英語の問題ならともかく、小論文の出題としては、いささか不適切だと思われます。それに対して、現在の答案がギリギリですが合格圏と言える水準です。他の皆さんが苦戦しているのも、やむを得ないと思います。

 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。

設問5

 ここは、課題文〔A〕〔B〕双方の正確な読解が求められます。また、比較する概念が、〔A〕のいう「企業の社会的責任」、〔B〕にある「フリードマン流の会社の社会的責任」、「社会通念上の会社の社会的責任」の3つあることになります。
 比較する概念の数が増えますと、飛躍的に複雑になります。①②2項しかなければ、比較は1回ですが、①②③と3つ項目があれば、①と②、②と③、③と①の3回比較を行うことになります。
今回の答案では、まず設問4での失敗が影響して、〔B〕の中にある「フリードマン流の会社の社会的通念」が正しく示されていません。この「フリードマン流」が設問の要求する「〔B〕の著者が」「主張する会社の社会的責任」ですね。まずはこれを明示することです。
少し先回りをしますと〔A〕〔B〕がそれぞれあげている「社会通念上の会社の社会的責任」は類似しています。まずはこれを指摘しましょう。
そして、この両者に共通した「社会通念上の会社の社会的責任」に対して、〔A〕〔B〕の主張がどのような関係かを示すとよいでしょう。

添削コメント

A:まずは〔A〕〔B〕が挙げる「社会通念上の会社の社会的責任」を対比しましょう。企業として収益を上げること以外の問題であるなど、両者の共通性が指摘できると思います。そうしますと※部分およびBの記述は、主としてここで扱うことになるでしょう。
B:大きく取り消し線をしましたが、設問4の改善と併せて、〔B〕が「社会通念上の会社の社会的責任」としているものを再検討してください。さらにこれはAの位置に移動して、〔A〕における「社会通念上の会社の社会的責任」との対比をしてください。
ださい。
C:ここは、課題文〔B〕の内容として正しくありません。設問4で「フリードマン流の会社の社会的責任」を確定したうえで、その概念をここでも用いるべきです。
D:ここまでの改善によって、ここも見直しが必要になるでしょう。

 

法学部2020年度入試

受講生による答案本文は割愛しております。
ABC等の記号は、添削コメントが答案本文のどの箇所に対応しているか、示すために用いているものです。

●京都大学法学部特色入試を担当する西田と申します。入試本番まであまり時間がありませんが、よろしくお願いいたします。
 ここで、お送りした教材にあります「傾向と対策」と重複しますが、簡単に京大法学部特色入試の特徴を分析しておきましょう。
 ここまでの出題は、サンプル問題も含め大学学部入試の小論文問題としては、一般的な出題形式です。そのポイントは、次の三点といえるでしょう。
1)①~③の3つの課題文を読ませる。
2)問1は課題文①を、設問の指定する内容に関して課題文を要約させる。
3)問2は②③の内容把握を前提とするが、解答者独自の見解を述べることを主眼としている。
 といったものです。(2)の要約問題では本年のように英文課題文を対象にすることが多く、英文読解力も同時に問われています。課題文の内容把握=要約を問うた上、それに対する解答者の主張・見解を要求する、という出題は、受講生の皆さんが一般的にイメージする入試小論文の形式でしょう。ただ課題文が長大で英文を含みますので、相当の難問であり、さすが天下の京都大学だと思わせるものがあります。
 現在の答案は、設問の要求・課題文の内容を踏まえて答案を作成しておいでです。こうした基本を無視した、いわば見当違いの答案が少なくないなか、この点は高く評価出来ます。実際、いずれの小問も、初回提出答案から合格圏と申せます。しかし、改善すべき点が散見されますので、ここからは、小問ごとに検討して参ります。
 答案に対するコメントは、小問ごとに添削本文の後にまとめてあります。ABC……の記号は、答案のものと対応しています。なお、特にコメントのない修正は、単純な語句の誤りや、分量調整のためのものです。

問1

 課題文中の重要概念(論点)を指示し、それに対する「説明」を要求する出題です。これは、課題文の内容把握=要約問題といえます。このような出題に対しては、解答者独自の見解はもとより、独自の解釈なども書きますと、「説明」の域を超えているとして、減点の対象となります。ただし、英文課題文に対して日本語で解答するのですから、翻訳という解釈が介在することは避けようがありません。その意味で、課題文から重要概念(論点)を抽出し、その相互関係(論旨)を短く(=制限字数以内で)再現するという要約の原則から、多少ズレることはやむを得ないでしょう。
 今回の答案は、こうした設問の要求に正確に対応しておいでです。課題文の内容理解もほぼ正確で、論旨の再現に成功しています。ギリギリですが合格圏と申せます。ここで、ギリギリと判断しましたのは、課題文の最重要概念ではなく、類似してはいますが第二義的に重要な概念の方を採用しているためです。これは、致命的な減点にはならないでしょうが、改善すべき箇所です。
 細かい国語表現なども指摘しましたが、以上の点が改善のポイントになります。

添削コメント

a:現在の記述でも減点にはなりませんが、ほぼ同じ概念の関係をより短く書くことが可能です。
 小論文を書き慣れないうちは、課題文の内容把握であれ、解答者の見解であれ、書くことが見つからない=分量不足の問題が深刻です。しかし、小論文を書く力が向上してきますと、今度は「書きたいことの過剰」に悩まされることになります。
 この対策は、基本的には構想のメモの段階で、盛り込むべき重要概念の優先順位を考えることです。しかし、文章の技術として「短く書く」能力もありますと、取り上げている概念が豊富で、かつその関係付けが精密な文章が可能になります。いわゆる深い考察を示すことになりますね。
A:課題文に忠実に対応させてますと、これは第1段落でnudgeの説明をしている部分の訳ですね。そこではlibert-preservingといった概念は登場しますが、これを「完全な自由」とするのは言い過ぎだと思います。「完全な自由」を扱うのは、次のBがよいでしょう。
B:今回、ギリギリと判断しました最大の理由が、この部分です。課題文が"freedomof choice"に最初に言及しているのは、問題冊子2頁第3段落です。そこでは、preservefull freedom of choiceの具体例としてGPSをあげ、liberty to select their own route insteadと説明しています。すなわち、GPSの示唆・提案に対して、人々が「完全な自由」を持っている例となっています。
 この部分は訳しにくいのか、多くの受講生が無視したり、強引に意訳していますが、設問の要求する"freedomofchoice"にもっとも的確に対応する部分ですので、ぜひ答案に盛り込むようにしてください。
C:この部分は、課題文に対応する記述がありますので、答案に書いても減点にはなりません。しかし、nudgeを運用する際の留意点というべきものでしょう。設問が指定する論点である"freedom of choice"との関係は比較的薄いといえます。
 むしろ、Bの直後にあるweatherに関する記述を補う方が良いと思います。これも設問の要求に応える上で必須とは申せませんが、environment(social architecture)の存在を指摘し、これを理由として、weatherもnudgeの1つだといっいます。ここで、全体的な制約要因とおもわれる天候ですら、"freedom of choice"の対象であることを指摘しているのだと思います。
 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。

問2

 ここは通信欄でご質問をいただきましたので、そちらからお答えします。説明(=課題文の内容把握/要約)と自身の意見(解答者の主張・見解)合わせて900字程ということになります。ですから、課題文の内容紹介の部分を短くしませんと、解答者の見解を述べるのが難しくなります。
 さてこの問2では問1とは異なり、「あなた自身の考え」が要求されています。ただし、「課題文①と、課題文②・課題文③の関係を踏まえ」とありますので、課題文①~③に言及する必要があります。
 現在の答案では、課題文②③への言及は明示されていますが、課題文①に対応する記述は存在するものの、曖昧な形になっています。あたかも、解答者が独自に思いついたかのような書き方になっています。これは意外なほど大きな減点につながります。なぜなら、入試小論文に限らず、およそ論文においては、資料その他の「他者の見解」と、「論文筆者の見解」が明確に区別されていなければならないからです。そうでなければ、単に「課題文が読めていない」という減点だけではなく、最悪の場合、盗作・剽窃と判断されかねません。今回、一定の配慮はしておいでですが、やや不十分です。
 次に、より根本的な点で設問の要求に対応する点でも、不十分な記述が見られます。詳しくは答案の該当箇所で述べますが、要求されているのは「課題文②・課題文③で論じられている問題点」に対する解答者の「考え」です。しかし、現在の答案では課題文①に対する「考え」になっています。
 問題の難しさからいって、以上の問題点は致命的な減点にはならいと思われます。しかし、優秀な受験生が殺到する京大入試ですから、合格を確実にするためにこれの課題を克服しいきましょう。

(添削コメント)

A:現在の答案でも、課題文②③の要約部分は明示されています。しかし、D以後の部分は、それらと課題文①との関係づけをしている部分ですから、厳密には解答者の解釈であって、課題文②の内容ではありません。したがって、Dと併せて、この両者の位置付けが違うことを明示する方が正確です。
B:いずれも課題文②にある概念ですので、言及しても誤りではありません。しかし、相対的な優先度は低いといえます。他の改善で字数が増えるようでしたら、割愛しても良いものです。
C:問1aと同じです。ほぼ同じ内容をより短く表現しました。
D:Aでも触れましたように、ここから課題文②の内容ではなく、課題文①の重要概念である「ナッジ」と「関係」付ける部分ですね。
E:この段落は、答案の第一段落で課題文②と①を関係付けたのと、同一の作業を課題文③と①に対して行っています。A~Dを参考にして、この関係を明確にするとともに、必要に応じて字数の調整をしてください。
F:課題文②③は「ナッジ」について言及していませんので、この問題設定は厳密に言えば設問の要求に対応していないことになります。
 これを改善するには、課題文②③の重要概念を論点にすることです。
 例えば、近代民主主義社会の主権者である「個人」の問題と設定することができるでしょう。課題文②が指摘するように個人が所属性の集積に還元されてしまう状況で、あるいは化課題文③が指摘するように専門家ではない「大衆」の判断力が信用できなくなっている状況で、近代民主主義の主権者はどのように振る舞うべきなのか、とった問題です。ここで、個人の主体性や判断力に疑義を持つのであれば、課題文①の「ナッジ」は、主権者に苦痛を与えない政策手段として評価されることになるでしょう。
 一方、専門家による支配に疑義を抱き、よき意味でのアマチュアリズムを称揚するのでしたら、「ナッジ」は否定ないしは厳重に制限されるべき手法となるでしょう。ビッグデータの利用は、あくまで主権者である大衆個々人の判断材料の提供に留めるべきであって、それ以上の誘導や教唆があってはならならい、といった議論が可能です。
 もちろん、これ以外にも「問題点」を設定することは可能でしょう。
F:大きく取り消し線をしましたが、現在の問題設定を前提にすれば、大きな問題のない記述です。ただ、Eの改善で議論の主題が変更になれば、それに対応してこの部分も再検討が必要になります。

 

医学部2020年度入試

受講生による答案本文は割愛しております。
ABC等の記号は、添削コメントが答案本文のどの箇所に対応しているか、示すために用いているものです。

大問 1

★添削と事務処理の都合上で、大問1のみを、まずは添削します。

●提出していただいた答案を拝見しました。大問2・3と比較すると、芳しくない出来映えとなっています。このようになってしまった原因として、大問1そのものが難しいことが、まずは挙げられるものの、それ以外に、落ち着いて解けば、間違いようがない設問で、ケアレスミスが原因で、誤答になってしまったことが挙げられるでしょう。
 難問を解けなくても、他の受験生とあまり差はつかないものの、比較的解きやすい設問で間違えると、他の受験生と大きな差になってしまうので、気をつけてください。
 早速ですが、以下では、設問ごとに検討します。

 この出題では、文章1の読解を通じて、スクリーニング検査を評価する指標である、感度・特異度・陽性的中率といった専門用語を理解して、活用できるようになるかを試しています。また、感度・特異度・陽性的中率といった専門用語の理解を前提に、文章2の趣旨を、理解できるかどうかを、試しています。

問1

★これは、落ち着いて解答すれば、間違いようがないでしょう。全問正解です。解説は、省略します。

問2

★引用した英文を活用して、丁寧に説明しています。文句なしの合格答案です。もちろん、修正は不要です。

問3 

A パーセント表示をすることが求められていないので、100を掛けると間違いになります。なお、実際の試験であれば、救済措置で部分点を与えられる可能性があります。

問4(1) 

B c以外は、誤答になっています。恐らく、ケタの計算を間違えてしまったのではないかと思います。泥臭いですが、「10万人の1%は、1000人」→「10万人の0.1%は、100人」→「10万人の0.01%は、10人」といった要領で、一つ一つ確認しながら計算していえば、「a=25」となることを、間違えないと思います。
 別紙に、計算過程を記したので、参照ください。

問4(2)

C 設問(1)の結果を活用すれば、容易に計算できます。別紙に、計算過程を記したので、参照ください。

問5

★英文2の内容を正確に把握するのは、受験生にとって相当大変かも知れません。受験生の英文読解力の差が、得点差に表れやすい設問になっています。

D 答案の内容と、設問の要求との対応関係を明示しながら、論じたいところです。

E ここまでの修正に対応した修正です。

F 英文の読解が雑です。文章2冒頭のパラグラフの該当箇所では、副作用(side effects)が、スクリーニングの利益(the benefits of screening)を、上回る(outweight)ことがあってはならない(must not carry)としています。英文の細かいニュアンスはともかく、「副作用」と「スクリーニングの利益」が比較されていることについては、必ずおさえておきたいところです。
 なお、文章2のこの箇所の内容を理解できていないと、文章2の最終パラグラフの概要を理解できない事態に陥ります。

G 答案のこの箇所の説明は、適切です。

H 文章2冒頭のパラグラフで説明されている、「副作用」と「スクリーニングの利益」の関係を理解できなかったことが影響し、文章2の最終パラグラフの概要を理解できていません。
 文章2の最終パラグラフでは、有病率により、「副作用」と「スクリーニングの利益」の関係が変わってしまうことが説明されています。医学の素人である、私からみると、いろいろと難しい専門用語が挙げられているものの、結核に注目して読んで行けば、(結核の)有病率が低下することで、massでの胸部X線検査(注:現在の日本の一般的な健康診断では、胸部X線検査が項目に含まれています。)の中止が正当化されることを、説明しています。正当化される理由の詳細は、「スクリーニングの利益=結核患者をみつけること」が、明確に「副作用=微量の放射線を浴びることの悪影響」の利益を上回るとはいえなくなってしまったからです。
 ここでは、「副作用」と「スクリーニングの利益」が「質」の問題として比較されているのではなく、「量」の問題として比較されていることに注意する必要があります。これが理由で、結核の有病率次第で、「副作用」と「スクリーニングの利益」の大小関係が変化してしまうのです。
 英文では、簡略に説明されているので、受験生が英文の主張の詳細を理解することは、決して簡単ではないものの、大学側は、ここまで受験生が英文の主張の詳細を理解できるかどうか、試しているのでしょう。

問6

I この予測そのものは、正しいと申せます。

J 不要な情報が多く書き込まれており、思考を今一歩整理されていません。また、英文の内容を正確に把握することができていません。陽性的中率の定義a/a+bから、a(=真陽性)とb(=偽陽性)の割合の変化のみを検討すれば良く、これに言及している英文2の内容を探すと、次のものをみつけることができます。

・If the prevalence is low then there are more false positive results than true positives.
有病率が低ければ、真陽性よりも、偽陽性が多くなる。
(注)答案を拝見する限りでは、解答者もこの箇所に注目しているようですが、正しく英文の内容を理解できていません。

 これを逆に考えれば、有病率が高くなるほど、真陽性に対する偽陽性の割合が低下することになります。与えられた表で考えれば、真陽性(true positives)がaにあたり、偽陽性(false positive)がbにあたるので、aに対するbの割合が低下することで、陽性的中率の値(a/a+b)は、増加することになります。
 以上より、日本と比べて、有病率が高いエスワティニでは、陽性的中率の値(a/a+b)が、日本と比べて高いことになります。
 以上を踏まえて答案を修正してください。
 再提出の答案を心よりお待ちしています。

【通信欄の御質問に関して】

<解答用紙の形式について>
●原稿用紙の使い方で、合否が分かれるような試験ではないので、あまり神経質にならなくても大丈夫です。読み手が答案を読みやすいように、文章を書くことだけを心がけてください。京都大学の入学試験の問題用紙を見たことがないので、はっきりしたことは申せませんが、制限字数のない設問は、大学側が、答案の総字数を確認する必要がないので、罫線のみの答案用紙の可能性が高いと申せます。
 参考までに、私がかつて受験した大学では、罫線のみの解答用紙が与えられ解答したのですが、答案用紙が足りない場合は、手を挙げれば、追加の解答用紙をもらえるようになっていました。これは、随分と昔のことであるものの、大学入試の答案用紙は、今も昔もほとんど変化がないはずです。

<過去問演習が終わった後の試験対策>
●最優先に取り組むべきことは、取り組んだ過去問の復習です。その中で、答案作成の手順を確認するだけでなく、制限時間内で、どの程度まで解けそうかも、確認してください。次の3つに分けることが肝心です。
(1)必ず、完答しなければならない設問
(2)部分点狙いとなる設問
(3)手を付けてはいけない設問

 (3)を排除した上で、(1)・(2)を解くのに、どのような時間配分をすれば良いかを、シミュレーションしておくと良いでしょう。これにより、試験本番での想定外の状況に、慌てて、実力を発揮できなくなるリスクを回避することができます。

●過去問演習をする中で、これからの伸びしろがあると思えた部分については、別に演習をしておくことも検討すると良いでしょう。解答者は、京都大学の受験生としては、英語がそれほど得意な方ではないでしょうから、英文を読む訓練を続けるべきだと思います。センター試験対策としても英文を読むことがあるでしょうが、それよりも難しい英文を読むことに慣れておくと良いでしょう。大学進学後は、嫌でも英語の文献を読むことになるでしょうから、今から英文を読むことに慣れるように訓練しておくことは、決して無駄にはなりません。
 知らない単語があっても、前後の文脈から英文の内容を推測する能力を鍛えると良いでしょう。これまでに提出していただいた答案を拝見する限り、解答者は、日本語の読解力が相当高いでしょうから、英文を読む際に、知らない単語があっても、前後の文脈から内容を推測する能力を、短期間に鍛えることができるはずです(→日本語の読解力で、英語力をある程度補うことは可能)。英文を読む際に、わからない単語があっても、すぐに辞書を引かずに、単語の意味を類推する習慣をつけることが肝要です。文章全体の構造から、細部を推測する訓練をするということです。
 確かに、英文のニュアンスを正確に理解するには、最終的にその意味を正確に理解できる英単語を増やす努力が必要となるものの、これを実現するには、相当の時間が必要となります。従って、解答者自身として、他の受験生と比較してズバ抜けた記憶力があるとの自負がないのであれば、新しい単語帳に、今から手を出すことはお勧めしません。解答者が現在使っているであろう単語帳を、繰り返す程度に留めておくのが良いかと思います。これから、一ヶ月弱で成果が出ることに絞って、訓練をするべきです。

●なお、どうしても、未知の問題の答案を作成する訓練を続けたいのであれば、本講座で扱っていない2018年度以前の添削を受講する方法もあります。(ご希望の場合は、古い年度の問題をWIEが所蔵しているかどうか、WIE事務局に確認してください。)ただし、京都大学側が受験生の能力を把握できていなかったのか、古い年度のものほど、問題内容がやたらと難しくなり、解答者が自信をなくすだけの可能性が高いので、あまりお勧めしません。挑戦するとしても、2018年度までで、それ以前は、挑戦しない方が良いです。

<その他>
●これは、最終回の添削で説明しようと思っていたのですが、入学試験本番の直前は、学力向上よりも、体調管理を優先し、本番で現在の能力を存分に発揮できるように準備すべきです。目安としては、一週間前位からでしょうか。このことから逆算すると、学力向上に使える期間は、それほど残っていない(三週間程度)ことになります。こうしたことからも、あれもこれもと、新しいことに手を付けるのは、収拾がつかなくなるだけでなく、自信をなくすだけなので、好ましくないと申せます。やるべきことを厳選して、入学試験本番の準備をして参りましょう。

大問2

★引き続き、大問2と大問3を、添削して参ります。

●提出していただいた答案を拝見しました。大問2・3については、概して優れた出来映えです。本番の試験でも、この水準と同程度に優れた答案を作成出来た方は、合格者を含めて、少数派だったはずです。

 文章1では、「チーム医療」を把握する上で重要な4要素として、「専門性志向」・「患者志向」・「職種構成志向」・「協働志向」があることを紹介しています。答案作成にあたっては、文章2と文章3をヒントに、この4要素の関係を考察することが求められています。

問1(1)

★「専門性志向=リーダーシップ」・「協働志向=フォロワーシップ」といった、隠れた概念の関係を読み取り、さらに、「専門性志向」と「協働志向」の間の相克関係を克服する手段としての「オープン・マインド」の役割を理解した上で、答案に反映することに成功しています。文句なしの合格答案です。修正は不要です。

問1(2)

★「専門性志向=ナンバーワン」・「職種構成志向=オンリーワン」といった、隠れた概念の関係を読み取り、さらに、「専門性志向」と「職種構成志向」の間の相克関係を克服する手段としての「ニッチ」の役割を理解した上で、答案に反映することに成功しています。文句なしの合格答案です。修正は不要です。

問1(3)

★番号①を選択した場合、「患者志向」と関連する記述が、文章2・文章3にないので、答案の作成方針が悩ましいと申せます。そうした中で、解答者は、文章2・3に登場する概念をうまく活用して「専門性志向」を説明しつつ、この説明と、「患者志向」の関係を示す説明を用意することに成功しています。読解力と、思考力を有機的に連携して議論を構築しており、大変素晴らしいと申せます。
 文句なしの合格答案です。修正は不要です。

問2

★制限字数が400字と短いので、重要概念をうまく盛り込んで、議論を構築するのに、相当苦労します。そうした中で、解答者は、相当に善戦しています。実際の試験でも、この設問は、9割以上の得点をもらえることが期待できる、高い水準の答案です。

A 設問文が答案に盛り込むように要請している、4つのキーワード全てを、無理なく答案に盛り込んでいます。

B 文章1では、「チーム医療」を把握する上で重要な4要素として、「専門性志向」・「患者志向」・「職種構成志向」・「協働志向」があることを紹介しています。従って、答案作成にあたっては、この4要素全てに、できれば触れるようにしたいところです。
 提出していただいた答案では、「専門性志向」・「職種構成志向」・「協働志向」の三要素に触れる一方で、「患者志向」に触れていません。
 確かに、設問文が、「患者志向」に触れるように要求していないので、触れていないことが致命的な減点にはならないもののの、「患者志向」は、「チーム医療」の4要素の一つなので、忘れずに触れたいところです。
 どのように、答案の中で、触れるか難しいのですが、私なら、「チーム医療」の4要素を冒頭で紹介し、その中で、形式的に「患者志向」に触れます。これに伴い、答案の字数調整が必要となりますが、説明の仕方を工夫すれば、なんとかなると思います。

 【答案構成例】
(ⅰ)チーム医療を、「専門性志向」・「患者志向」・「職種構成志向」・「協働志向」の4要素の相克関係として説明
 ↓
(ⅱ) 相克関係の詳細例として、「リーダーシップ」や「フォロワーシップ」の概念を活用して、専門性志向と、協働志向の関係を説明
(注)後で「ニッチ」の概念を活用するので、専門性志向と職種構成志向の関係も詳細例として説明するべき
 ↓
(ⅲ)「オープンマインド」や「ニッチ」の概念を活用して、相克関係を克服し、望ましいチーム医療を実現する方法を議論

大問3

文章1では、「コンパイル」と比較する形で、「エディット=エディティング」の概念を説明しています。文章2は、赤ん坊や幼い子どもが言葉を学び活用を試みる過程を説明していますが、出題側は、その中で、赤ん坊や幼い子どもが「エディット=エディティング」や、「コンパイル」を、どのように発揮しているかを、推測させようとしています。

問1

★下線部①に、「半分はそうなのである」とあるので、私なら、次の文章構造の答案を作成する方針が、最初に思いつきます。
【答案骨子】
 編集は、●●という意味で、思索や表現と同じであり、区別できない。一方で、編集は、●●という意味で、思索や表現と異なり、区別できる。

 文章1の関連箇所を読み直して、伏せ字になっている部分に盛り込む内容を精査することになります。その過程で、上記の【答案骨子】の説明方法だと今一歩整理しにくいのであれば、説明方法を微修正することになるものの、おおよその答案作成方針は、上記の【答案骨子】に従えば、問題ないでしょう。

A これは、ひらがなの「ひ」であるものの、字体の癖が強くアルファベットのuやvの筆記体にも見えます。解答者の書く他のひらがなは、問題なく判読できるものの、ひらがなの「ひ」についてだけは、癖を少し弱めた方が、良いのではないかと思います。
 私も、字体の癖が強くゆがんだ文字を書きがちであり、受講生に御迷惑をかけているので、こうしたことを指摘するのは、大変心苦しいのですが、このことは棚に上げると、癖のある文字を誤読されて損をするのは、解答者なので、ひらがなの「ひ」についてだけは、字体の癖が強すぎないか、答案を作成した後で、確認することをお勧めします。

B この設問の答案全体のバランスを考慮すると、「区別できない点」の説明に、字数を割きすぎている印象があります。より簡潔に説明するべきです。

C 一文が長くなりすぎると、論旨がわかりくくなるので、私なら一度ここで文を区切ります。

D この設問の答案全体のバランスを考慮すると、「区別できる点」の説明が、短すぎます。より多くの字数を割いて、丁寧に説明したいところです。

E 設問の表現に対応して答案を作成しようとして、体言止めで文章を終わらせたのではないかと推測します。しかし、言い切る形(終止形)でまとめてしまっても、全く問題ありません。また、言い切る形で文を終わらせることで、一文が長いときに、途中で文を区切ることが容易になります。

問2

★ 大学側が、この設問について、どのように採点基準を設けたか、その詳細はわかりかねますが、次の3項目を考慮して、採点基準を設けたはずです。

(1)ターゲットとなる「ネケ」と、ABCDの4つの「モノ」の共通点を説明できていること。
(→これは、答案作成の最低限の条件))
(2)ターゲットとなる「ネケ」の特徴を抽出していること。
(3)カテゴリーの規定をなるべく狭くしていること。

 提出していただいた答案は、この3条件を満たしていることから、文句なしの合格答案とします。
 なお、写真を見る範囲では、ネケとA・Bはそこそこ似ているものの、ネケとC・Dの似ている点がよくわかりません。確かに、Cについては、目がついている点で、ネケと共通点は見られるものの、Dに至っては、全くネケと共通点がないように思えます。
 これはあくまで私の想像に過ぎませんが、つるつる・ざらざらといった、「肌触り」や、「弾力性」=「ぬいぐるみ、あるいはおもちゃらしいハリ」が似ているという理由で、Dをネケと似ているとした子どもがいたのではないかと思います。ただし、こうした論点まで考慮すると、写真情報を前提に考えることが要請されている、この設問の出題意図からは、逸脱してしまいます。

問3

★設問の要求に応えた、文句なしの合格答案です。もちろん、修正は不要です。
 以上を踏まえて答案を修正してください。
 再提出の答案を心よりお待ちしています。

【通信欄の御質問について】

 <大問3の問1について>
 説明が長くなる説明問題では、体言止めで文末処理をするのではなく、言い切る形(=終止形)で文末処理をするのがお勧めです。これにより、一文が長くなってしまうときに、容易に複数の文に分けることが可能となります。

<字数制限がない設問の答案の文字数>
 字数制限がないことから、答案の字数そのものは、採点の対象となりません。出題意図をどの程度理解した答案を作成できたかで、点差が付けられます。
 こうしたことから、出題意図を深く理解できた確信があるときは、多めに書き、出題意図をあまり理解できていないと感じた時は、部分点狙いや救済処置狙いで、何でも良いので、簡潔に何かを書いておくべきでしょう。難問でも、設問と戦う意志だけはなるべく見せたいところです。数学系の超難問だと、手を出さない方が賢明な設問があり得るものの、解答者の志望先は、こうした数学系の超難問が出題される可能性は極めて低いと申せます。こうしたことから、難問についても最初から諦めずに、理解できた範囲で、何かしらの内容を答案として記しておきたいところです。
 なお、本番の入学試験では、制限時間があるので、ひとつの設問だけに多くの時間を費やしすぎることは好ましくありません。制限時間と設問の個数を考慮すれば、ひとつの設問の検討時間(=答案作成の準備)は、5~10分程度が目安となるので、この時間の範囲で整理できる思考の範囲で、答案を書いてしまうべきでしょう。
 具体的な答案の字数ですが、体感としては、200字程度がひとつの目安になるでしょうか。もちろん、出題意図を深く理解できた確信があるときは、そのことを採点側にアピールするために、300字程度以上書いても良いですし、逆に、難問で何を書けば良いか困ってしまったときは、部分点狙いや救済処置狙いで、100字程度の答案になってしまっても構いません。参考までに、提出していただいた答案は、概して適切な字数の答案だと申せます。
 そもそも満点を狙う試験ではないので、解答者の現在の能力を、設問と格闘する姿を通じて、採点者である大学側に伝えるつもりで、答案を作成すると良いでしょう。

受講の概要

  • ご入金の確認とともに、教材一式を発送します。教材と受講要領をご覧の上、教材のページ順に解答して、WIEまでお送りください。
  • 教材発送の方式は、郵送とEメールによる電送のどちらかをお選びいただきます。電送の場合は、PDF形式のファイルでの送信となりますので、5MB程度のファイルが送受信可能なメールアドレスをご用意ください。
  • WIEは答案受付後、通常4~5営業日、最大7営業日以内に添削文を発送します。なおまとめ出しの場合など、必ずしもこの時間内に発送できない場合があります。詳細は「受講期限と添削所要時間」のページでご確認下さい。
    ※お急ぎの方は、教材をお求めの上、問題持込小論文の特急・急行をご利用下さい。
  • 受講期間中は、メールにて、添削のほか学習上の質問にもお答えします。
  • 受験に関する疑問や学習上のハードルなど、学校の先生に相談する感覚で遠慮なくご質問ください。担当講師から、メールか、添削返却時に回答があります。