慶応SFC添削コメント例[環境情報]15年

このコメントは、WIE小論文navi添削講座慶應SFC小論文で実際に行われたものです。


●詳しくはテキストの「解説」を参照していただきたいのですが、本年度の出題は、前年度と多くの共通点が見られるものの、「問題発見」と「課題解決」の自由度が大きい点に特徴があります。このことから、全体を俯瞰する思考が得意な受験生にとっては、前年度より解きやすく、一方で、積み上げ型の思考が得意な受験生にとっては、前年度より難しいと感じたでしょう。

●提出していただいた答案を拝見しました。全ての設問について、明示的に設問が要求している項目に応えた答案を作成することに成功しています。この点は高く評価できます。 以下では、残っている問題を指摘して参ります。

■ 答案に書き入れました赤字が改善すべき点です。abc……の記号に対応するコメントは下段に記入してありますので御参照ください。記号のない箇所については、単純な誤記や分量調節のためのものです。

設問1
 与えられた資料について、タイトルとサブタイトルを付けることが要求されています。一部、資料の読み取りに甘さがあり減点は避けられませんが、多くの資料について、最も重要となるキーワードを抑えることに成功しています。
 ここまでの水準のタイトルとサブタイトルを書けるのであれば、解答者の読解力は高いと断言できます。実際の試験でも、相当の高得点が期待できるでしょう。



a 設問の要求から外れたタイトルです。
 発明や創造の内容、あるいは、それが社会に与えた影響を説明してください。資料Bの説明に用いた「インターネット」や、資料Dの説明に用いた「3Dプリンタ」と同程度に具体的な概念を、資料Cを説明するタイトル・サブタイトルに盛りこみたいところです。
 結論からいうと、「半導体ヘテロ構造」が、胆となる具体的概念です。同種の技術にある程度明るくないと、資料Cの概要を短時間で把握するのは難しいでしょうが、資料Cは、「半導体ヘテロ構造」が開発され、この技術が基盤技術となり、様々なものに応用されていることが説明されています。ここでいう様々なものとは、資料冒頭で説明している、「マイクロエレクトニクスとフォトニクス(の初期の開発への貢献)」・「集積回路」・「チップ」・「レーザー」・「高速トランジスタ」といったものです。
 私がタイトルを作成するのであれば、「半導体ヘテロ構造」に必ず言及します。

b 資料Cは、「集積回路」の開発のみに言及しているわけではありません。「集積回路」はあくまで、「半導体ヘテロ構造」を利用した事例のひとつに過ぎません。

【答案例】
タイトル:半導体ヘテロ構造
サブタイトル:マイクロエレクトニクスとフォトニクス・集積回路・チップ・レーザー・高速トランジスタに利用される、現代社会の基盤技術

c 資料Fの全般部分はよく読めているものの、後半部分で言及している「フロン」の問題に触れていないのが難点です。

【答案例】
タイトル:飽食の時代を支えるコールドチェーンの光と影
サブタイトル:食の品質・価格・安全の追求と、フロン問題

※与えられた資料が、設問3-2にどのように生かせるか検討してみましょう。以下はあくまで考え方の一例です。

・資料A: 特定の技術について、より多くの人が利用でき恩恵を受けられるようにしていくことの重要性を学べる。
・資料B: 人間の知を共有できる「場」を作ることの重要性を学べる。
・資料C:将来の応用を見越した、基盤技術の開発の重要性を学べる。
・資料D:「(既存)技術」と、「思いつき」を組み合わせることで、素晴らしい製品ができることを学べる。
・資料E:廃棄物とされるものの再利用だけでは不十分であり、創造性(クリエイテイビティ)が重要であることが学べる。
・資料F:特定の技術の利用について、恩恵だけでなく、負の側面にも注目することの重要性を学べる。
・資料G:現代生活における公開鍵の重要性を学べる。/ 優れた発明・創造もその真価が理解されるには、相当の時間がかかることがあると学べる。
・資料H:起業家精神の有効活用、あるいは、周囲の人材(=仲間)をどのように巻き込んで問題を解決していくかを考えることの重要性を学べる。


設問2
 「問題発見」に成功しています。設問の要求に応えた文句なしの合格答案です。



a 設問の概念を適宜引用することで、答案の内容と、設問の要求の概念の関係が明確になっています。

b この設問は、解答者の考えを述べることが要求されています。従って、「考える」といった表現を盛りこんで、解答者の考えであることを強調する必要はありません。


設問3-1
 優れた告知文になっています。設問の要求に応えた文句なしの合格答案です。



※ 修正すべき箇所はありません。


設問3-2
 優れた講演資料となっています。ただし、与えられた資料A~Hを今一歩うまく利用できていないと申せます。その理由は、解答者がどの特定の「技術」に注目しているか言及していないからです。また、解答者がどの特定の「技術」に注目しているか言及していないため、設問が要求する「独自に生み出した発明や創造」が書かれていないとして、低く評価される答案になってしまう可能性があります。
 先に、設問1のコメントで資料から学べる点で述べたように、「技術のあり方」に言及しながら答案を作成すると、多くの資料との関係を示しながら答案を作成できます。
 環境情報学部は、多くの研究室で、特定の基盤技術について、その技術の社会的な位置づけや意味づけを考慮しながら開発を行ったり、あるいは、特定の(既存の)技術について、どのように社会に展開させていくかを検討する研究を行っています。そうしたことから、「社会と技術の関係のあり方」については、環境情報学部の小論文で多くの年度で隠れたテーマになっています。
 高得点を狙うのであれば、解答者がどの特定の「技術」に注目しているか言及しやすいテーマを設定して論じるべきでしょう。



a これが解答者の独自に考えた「発明や創造」にあたるでしょう。

b これが、解答者の考えた発明や創造の「原理や仕組み」に相当するものでしょう。ただし、解答者の説明した「原理や仕組み」は、特定の「技術」との関連がありません。これが原因で、多くの資料との関連を示しながら論じるのが難しくなっています。

c これは、事実かも知れませんが、SFCに「おべっか」を使っても小論文試験では、評価されません。SFCに言及しなくとも、資料Bとの関連を採点者は理解できます。

d システムの負の側面にも注意しながら議論を進めています。これにより、資料Fから学べることを生かして答案を作成していると、採点者は解釈します。

e 周囲の人材(=仲間)をどのように巻き込んでいくかに触れており、資料Hをある程度踏まえていると申せます。ただし、資料Hは、村民の優れた点(=起業家精神)を活用しているのに対して、提出していただいた答案は、「敷居を低くすること」だけに尽力しており、今一歩深く資料Hから学べていないと申せます。介護経験者の優れている点を見つけ出して、それを活用することに言及することができれば、現在の答案よりも、資料Hを深く踏まえた答案だと評価されるようになります。


 添削コメントは以上です。
 再提出の答案を心よりお待ちしています。

【通信欄の御質問について】
<設問1について>
 設問1についてですが、各資料を精読しているとそれだけで多大な時間を要します。この年度の小論文試験全体の時間配分を考えて、読解の精度や、読解にかけることができるおおよその時間を定めるようにしてください。

 次の手順で今回の小論文に取り組むべきでしょう。

(1)設問文を最後まで全部読み、設問全体の構造を把握する(=設問間の解答の整合性の考慮をする)と同時に、各設問にかけることができる時間の目安を決める。
(2)設問1から取り組む。設問全体の構造が理解できていれば、設問3-2に生かせる点を探す目的を持ちながら答案を作成できるはずです。読解の目的を把握しておけば、資料を読む時間を節約できます。もちろん、与えられた制限時間では、資料A~Hの精読は難しいでしょうが、各資料の最初と最後の段落を丁寧に読む時間程度はあるはずです(→注:最初と最後の段落には大事なことが書いてあることが多いので、必ず丁寧に読むこと。その上で、それ以外の段落を流し読みすれば、それほど精度を落とさず資料の内容の概要を把握できるはずです。

 SFCは、大量の資料から有用な情報を掴むことができる学生の入学を望んでいます。SFCは、受験生を大学で共に研鑽を学ぶ仲間の候補とみており、受験生を子供扱いしていません。最終的には受験生の能力を相対評価する他ないものの、SFC側が受験生に高い読解力を期待していることは確かです。
 不安に思う気持ちは痛いほどわかるのですが、解答者が、現在お持ちの能力を発揮して、制限時間内で試験問題と存分に格闘した跡を、答案に反映して大学側にアピールする以外のことはできません。
 答案を拝見する限り、解答者の読解力は決して低くないですから、現在お持ちの力を試験場で発揮することに専念するべきでしょう。不安に思うことは、合格する可能性を高める上であまり役立ちません。これからできる努力と準備をして入学試験に臨むだけです。

<設問3-2について>
 設問3-2についてですが、正式な論文を書くことを要求されているわけではないので、資料A~Hの中のどの資料に学んだかについて明示的に触れながら答案を作成する必要はありません。大学側の採点方法の詳細はわかりませんが、採点者が受験生の答案を読む際に、資料A~Hの内容との関係が読み取れた場合に、加点していったのではないかと思います。この採点方法は、どの採点者にあたるかで、運・不運が出やすい弱点があるのですが、今回の設問のように正式な論文を書くことが要求されていない場合は、採点基準がやや曖昧にならざるを得ません。
 なお、添削コメントでは、資料A~Hとの関連付けができる内容を答案に盛りこむことの重要性を中心に指摘しましたが、実際の入学試験では、それ以前に、設問文に明示されている設問の要求に応えることができていないという理由で、採点対象外、あるいは大きな減点となってしまう答案が実に多いと申せます。提出していただいた答案は、設問文に明示されている設問の要求には的確に対応しているので、間違いなく採点対象となる答案です。その点には自信を持って頂いて構いません。
 WIEの添削は、英語や数学といったSFCで課される一般教科の点数があまりよくなくても受験生が志望先に合格できる水準の小論文を作成できるようになることを目指しているので、受験生にとっては必要以上に厳しく感じるかも知れません。ただし、厳しく指摘しているのは、設問の要求や、採点基準の詳細を説明することで、小論文試験の全体像をより明確に受験生が理解できるようになると考えているからです。
 こうしたことから、WIEの指摘を全て答案作成時で実践できないと合格できないのではないかと悲観的になるのではなく、WIEの指摘を多く答案作成時で実践することでより確実に合格できるようになると考えていただきたいと存じます。決して受験生を不安にさせるのが目的でWIEが厳しい指導方法を採用しているわけではないので、この点はご了解していただきたいと存じます。


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