早大添削コメント例[社会科学部推薦]14年

このコメントは、WIE小論文navi添削講座「早稲田大学推薦AO入試小論文」で実際に行われたものです。


●引き続き早大社会科学部自己推薦の2014年出題に対する答案を添削いたします。
 先に2015年出題の添削をしました際に、出題傾向を見ましたが、本年も大きな差はありません。資料や課題文はなく、論題として「高度情報化社会」という概念が与えられています。ただし「長所と短所」とありますので、必ずこの二側面について述べなければなりません。

 お送りいただいた答案は、15年に続き、国語表現上の問題はほとんどありません。また、設問の要求は正しく理解しているようです。また、15年のように大きな論旨の破綻はありませんので、ギリギリですが合格圏と申せます。
 ギリギリと判断しましたのは、致命的な減点にはならないものの、いくつか改善すべき点があるからです。特に、持って回った表現や、ほぼ同じ内容を繰り返している箇所が散見されます。これらを整理しますと、数十字程度字数に余裕が生じます。逆に申せば、現在の答案は、分量の割に内容が薄いのです。
 したがって、改善の基本方針は、国語表現も含め記述を整理し、より簡潔なものにすることです。その上で、これによって生じた字数の余裕を用いて、新たな論点(重要概念)を盛り込むことで、さらに内容を豊富にしていきましょう。

 記号の使い方などは、15年出題と同じです。

(添削本文)


[解答は省略]


A:文意不通とまでは申しませんが、前後の関係がやや不明確です。基本方針とは逆に字数が増えますが、前後の関係付けをする語を補いました。概念の関係=論旨の問題は、1文(sentence)の中だけに限定されません。文相互、さらには文の集合としての段落(paragraph)間の関係も重要です。
a:持って回った表現です。簡潔に述べることが出来るにもかかわらず、わざわざ無意味な記述を連ねるのは、文の印象を大きく損ないます。これは、本来書くべき自分の主張や意見、またその論証が足りないために、無用な言葉を入れておいただけ、との印象を読み手に与えかねません。書くべき事柄は必要なだけ書き、無くてもかまわない=文意が変化しない事柄は一切書かない、これは論作文の大原則なのです。
b:現在の表現で誤りとは申しませんが、(小)論文とは、基本的に解答者の「思考」を書くものですね。したがって、特に混乱のない限り「思う」「考える」といった表現は不要です。
c:主部と述部が、正しく対応していません。
 文章を書き慣れていない方がよくしてしまう失敗のうち、文章構造について最もよく見られるのは、このような「文の構造・論理のねじれ」です。つまり、文章の主部(主語)-述部(述語)の関係や、修飾語-被修飾語の関係を記述する際、文法的に破綻してしまうことです。
 文章のうち、最も単純な形は、主部も述部も「1つの事柄」だけで出来ていて、その関係も主部-述部1つだけ、というものです。これを「単文」と言いますが、慣れないうちは出来るだけ単文で書くように心がけるべきです。
 にもかかわらず、重文(「AはB、CはD」のように、単文を「、」でつなげたもの)や複文(「AがBしているのはCだ」など、主部や述部そのものが複雑な構成になっているもの)を安易に用いてしまうと、おかしな文となって失敗してしまうのです。
 この原因は3つあります。1つめは、「自分は何を述べようとするのか」を、思いついたままに書こうとすることです。思いつきの段階では、述べようとする複数の事柄それぞれの間の関係は、なんとなく「あいまい」になっているはずです。それはおおかたの場合、「イメージ」すなわち「映像」になっています。それを適切に整理しないまま、直にことばへ変換しようとすると、つい「物事の相互関係」が曖昧なままで書いてしまうのです。
 2つめは、書いた後読み返さないことです。もう少し言いますと、「イメージ・映像」→「文章」へと変換した自分の文章を、「文章」→「イメージ・映像」へと逆変換することなく、なんとなく読み返しているからです。面倒でも読み返しの際は、DVDを頭の中で再生するように、「文章」=媒体→「イメージ・映像」への変換が必要なのです。
 3つめは、複数の文をつないで1つの文とする際、間をつなぐ適切な言葉を選ばない、ないしは全く用いないことです。
B:字数に余裕が出来ましたので、それを用いて「長所」をもう少し挙げましょう。自由に考えていただいて構いませんが、まず政治的な影響が挙げられるでしょう。例えば、国民に真実を知らせず、批判を許さない強権的な政治権力に対して、インターネットを通じて情報を得た国民が、政治改革に立ち上がった、というような例があります。また、ネットを通じて自由な議論が出来ることで、国際的な世論形成が可能となることなども長所と言えます。
 また、経済活動が活発になり、経済成長に寄与する、といった経済面などへの好影響も「長所」として挙げられるでしょう。また、現在の答案では、「外国とのつながり」を指摘していますが、文化交流などのより具体的な事象を挙げる事もできますね。
c:1文があまり長いと、概念の関係=論旨が読み取りにくくなります。私なら、ここで文を切ります。
d:1文があまり長いと、概念の関係=論旨が読み取りにくくなります。私なら、ここで文を切ります。
C:Bと同じ手続きで、「短所」をさらに考えてみましょう。広義ではプライバシーの問題ですが、他人に知られる、というだけではなく、政治権力による民衆統制・抑圧の手段になる可能性があります。実際、一部の国ではネット上での発言者を特定し、国家が拘束する、といった事態が起きています。また巨大企業が、個人のネット上での動向を監視し、集積したデータからさまざま勧誘を行う、といったことが可能になっています。
 不正確な情報の被害が個人レベルではなく、流言飛語となり、さらにはパニックになる、といった危険性も指摘できるでしょう。
 Bと併せ、高校の授業、例えば公民科などの内容から、より多くの長所・短所が挙げられると思います。


 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。


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