早大添削コメント例[政治経済学部グローバル推薦]14年

このコメントは、WIE小論文navi添削講座「早稲田大学推薦AO入試小論文」で実際に行われたものです。


●早稲田大学政経学部AO入試対策講座を担当いたします西田と申します。よろしくお願いいたします。
 今回が初めての提出ですので、簡単に出題傾向の分析をしておきましょう。
 本年の課題文は、これに先立つ12年・13年出題の課題文が、経済学など社会科学を題材にしていたのとはやや異なり、(自然)科学的データの理解・解釈に関わる問題を取り上げています。科学的・客観的に発表された知見であっても、それが正しく理解されず、不適切に利用されることを指摘しています。しかも、それは利用者の悪意や虚偽に基づくとは単純には言えないとしています。その一方で、どのような視点でデータを集めるかによって、そこから導かれる科学的知見も異なるとも述べています。
 19世紀的な科学観では、科学的真理は人間の主観からは独立した客観的かつ普遍的なものとされてきました。この考え方に立てば、一つの事情に対してさまざまな見解があるのは、まだ真理に到達していないからであって、いつかは不動の真理が明らかになるはずでした。しかし、現代では科学的認識は、対象に対して認識者が一定の視座から働きかけた場合にのみ、観測・認識できると考えます。
 したがって、視座の前提によって「複数の真理」があり得ることになります。そのとき何をよしとするかは、純粋に科学的な方法で解決しないことになります。その一方で、科学の個別細分化・専門化が進み、科学的知見の真偽・有効性の判断は難しくなっています。この時、政治学の見地から科学的知見をどう政治的実践に活かすかは、自由でありまた難しい問題になります。それだけではなく、政治学・経済学という(社会)科学を学ぶものとして、そこで提起される知見に対してどう向き合うかも考えなければなりません。今回の課題文は、こうした問題に手がかりを与えてくれると言えるでしょう。
 このような視点に立ちますと、出題側が受験生に要求している能力は、この14年出題でも、13年以前と共通していると申せます。

 出題の分析はこのぐらいにして、ここからはお送りいただいた答案を拝見して参りましょう。答案は、誤字脱字や主語述語の不適応といった問題は少なく、解答者の国語力は十分だと申せます。また設問の要求も基本的に正しく把握し、対応できています。いくつかの小問に関しては、初回提出から合格圏と申せます。また、惜しくも合格圏を逃した箇所も、前年までの受講生でめでたく合格された方がこの段階で提出されていたものと比べて、全く遜色はありません。
 その一方、やはり改善すべき点が散見されます。特に、今回は大きな減点にはならなかったミスでも、条件によっては致命的な失敗に繋がる可能性のあるものもありました。いずれも細かい問題ですが、今回の添削で克服していきましょう。
 なお、通信欄で頂いた質問は、問題4に関わるものですから、該当箇所で検討することにします。少し先回りしておきますと、長文の国語表現に問題があるというのではなく、もう少し内容に関係する、論旨構成の問題だと思います。この点でも、直接関係する設問と併せて考えるようにします。

 答案に対するコメントは、小問ごとに添削本文の後にまとめてあります。abc……の記号は、答案のものと対応しています。なお、特にコメントのない修正は、単純な語句の誤りや、分量調整のためのものです。

問題1
 課題文の一部を下線で指定し、その部分に見られる内容の「説明」を要求しています。このような設問は、課題文の内容把握=要約を要求するものですから、ここで解答者独自の主張や見解・解釈などを書きますと、大きく減点されます。
 現在の答案には、こうした大きなミスはなく、しかも課題文の論旨=概念の関係をほぼ正確に再現しています。初回提出から、ギリギリではありますが、合格答案と申せます。ギリギリと申し上げましたのは、致命的な減点にはならないものの、いくつか改善すべき点があるからです。いずれも細かい問題ですので、答案の該当箇所に即して指摘いたします。

(添削本文)


[解答は省略]


a:文章の書き出しを含め、段落の冒頭は1字空けるのが原則です。答案用紙にマス目がなく、罫線だけの場合でも、この原則は同じです。 短い文の場合には迷うかもしれませんが、マス目のある原稿用紙に書く場合には、「語」ではなく文であれば、最初の1マスを空けるのが原則です。 
 なお、近年では携帯メールの普及で、限られた画面で、しかも受信側の機種や設定によって、段落位置がずれてしまうことが多くなっていますので、1字空けをせず改行だけにする表記法が増えています。そのため、特に解答が一段落に収まる場合には、冒頭の1字空けをしなくてよい、という指導をする参考書や予備校があるようです。
 しかし、私の大学教員をしている友人達の話からは、1字空けをしていなくて減点になることはあっても、1字空けをして減点になることはないそうです。安全策のためにも、1字空けの原則を守ってください。
A:大きな減点にはなりませんが、この数値が何の値なのか、不明確です。課題文では、「被爆(線)量」といった概念がありますね。b・c等の改善で出来る字数の余裕を用いて、課題文からさらに重要概念を抽出するようにしてください。
b:現在のままでも誤りとは申せませんが、横書きの場合アルファベットやアラビア数字は1マスに2字ずつ(ワープロソフトの場合、半角文字)書く方が一般的です。1マスに1字(全角)でも減点にはならないでしょうが、字数の節約になりますね。
c:現在の記述でも減点にはなりませんが、ほぼ同じ概念の関係をより短く書くことが可能です。
 小論文を書き慣れないうちは、課題文の内容把握であれ、解答者の見解であれ、書くことが見つからない=分量不足の問題が深刻です。しかし、小論文を書く力が向上してきますと、今度は「書きたいことの過剰」に悩まされることになります。
 この対策は、基本的には構想のメモの段階で、盛り込むべき重要概念の優先順位を考えることです。しかし、文章の技術として「短く書く」能力もありますと、取り上げている概念が豊富で、かつその関係付けが精密な文章が可能になります。いわゆる深い考察を示すことになりますね。
B:Aと同様ですが、こちらの方がより大きな減点になります。まず、課題文では「著者」という概念を使用していますので、「作者」としたのでは、課題文の論旨=概念の関係として正しくないことになります。受験テクニック的な指摘になりますが、設問文・課題文の重要概念はできるだけそのまま使用するのが、設問の要求に的確に応えるコツといえます。
 次に、こちらがAと同じ問題ですが、何の「著者(作者)」なのかを明示しましょう。ここまでの改善で字数に余裕が出来ているはずですので、例えば「下線部」といった設問文の概念を用いる方法があります。


 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。と申しましても、内容的に再考していただく要素はほとんどありませんので、お急ぎなら再提出を省略されても構いません。

問題2
 Aは珍しくグラフを書かせるものですが、その精度は問題にされていません。13年の出題にも同様の例がありますが、問題2同様、課題文の内容を別の形で表現できるか、という応用力が問われます。ただし、多少の理系的センスが必要になります。今回、関数のうち一つの変数だけが変動し、その関数値が一定(例えば0)の場合、グラフとしてどう表現されるかに関して、勘違いしておいででした。このため小問Aは、合格圏とは申せません。
 もっとも、グラフへの表現には失敗しましたが、小問Bに関しては、合格答案と申せます。したがって、大きな減点になる箇所がありません。細かい国語表現の問題を中心に、私ならこうするといった指摘をしましたので、再提出の参考にしてください。

(添削本文)


[解答は省略]


A:閾値なしモデルは問題なしですが、閾値ありに関しては、厳密にはこれでは不正解です。文章で説明するのは難しいのですが、閾値未満の値でも被曝線量は存在します。つまり、発ガン率は0のまま、100ミリシーベルトまで横にグラフが存在し、100ミリシーベルトのところで垂直に0.5%までグラフが立ち上がる、いわば逆L字型になります。課題文を再読していただきたいのですが、「影響はゼロ」ということは、閾値以下のグラフが存在しないのではなく、発ガン率の変化が0という値を採るグラフが存在するのです。
B:問題1のaと同じです。
a:答案を拝見していますと、読点(、)が若干少ないようです。読点の使い方については、簡単なようでなかなか難しく、すぐに覚えられるようなものでありませんが、以下に簡単な用例を示しますので、参考にしていただければ幸いです。
①助詞の前には原則として入れない。
→新宿には、山手線、中央線、埼京線、が通っている。
②主部の直後に入れる。
→山本君は、畠山君、沢田君に次いで優秀な学生である。
  主 部
③述部を修飾する部分の、ブロックごとに入れる。ただし最後のブロックの後と、極度に短いブロックの後には入れない。
→むかしむかし、あるところに、おじいさんと、おばあさんが住んでいました。
   ブロック1  ブロック2  ブロック3  ブロック4  述 部
注意:例文は各ブロックが短すぎるので、本来ここまで読点を入れる必要はない。
④強調したい言葉の直後に入れる。
→大阪は、東京と並んで経済活動の中心となる都市である。(大阪を強調)
 →大阪は東京と並んで、経済活動の中心となる都市である。
(東京と大阪は拮抗していることを強調)
→大阪は東京と並んで経済活動の中心となる、都市である。(経済活動の中心であることを強調)
⑤文の論理が変わるところで入れる。
→田中さんと、山田さんの娘と、息子が同行した。
C:問題1のcと同じです。
b:1文があまり長いと、概念の関係=論旨が読み取りにくくなります。私なら、ここで文を切ります。
D:cにともない、この部分で前後の関係付けが必要になります。これは御自身で考えていただきましょう。
E:問題1のbと同じです。


 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。

問題3
 ここは、字数こそ多いものの、問題2よりは問題1に近い、純粋に課題文の内容把握を問う問題です。ただし、設問の要求に直結する内容は課題文にはないので、課題文の重要概念を使いながら、課題文の論旨から推定される記述を再構成する必要があります。課題文の内容把握=要約問題と呼ぶべきですが、こうした解答者の解釈を一部導入することになります。
 ここは、最重要概念(論点)は正しく抽出されており、その相互関係もほぼ正確に再現されています。しかし、第2義的に重要な概念で見落とされているものがあります。文章を整理して、字数を節約し、こられの概念も答案に盛り込むようにしましょう。

(添削本文)


[解答は省略]


A:問題1のaと同じです。
B:問題1のbと同じです。
C:大きな減点にはならないでしょうが、この課題文の重要概念を補った方が、正確です。
D:問題1のcと同じです。現在の記述だと減点になる、というわけではありませんので、最終的に字数に余裕が出来るようなら、適宜復活していただいて構いません。
E:問題2のbと同じく、ここで文を切りましょう。その上で、*の部分から、ICRPに関する記述をここに移動しますと、前者・後者といった概念を用いなくても良くなります。なお、自分との接続にも注意してください。


 内容的には大きな問題はないのですが、重要概念の補充と文の構成を変更していただくのが主たる目的です。

問題4
 本年の出題は5つの小問から構成されていますが、その中で字数が多いこともあり、もっとも小論文らしい解答が求められる設問です。今回は、実際には十分合格可能な水準ですが、WIEの基準では合格圏とは申せません。もっとも、この原因は設問文にあり、これをどう解釈するかが難しいからです。端的に申せば、設問の要求をどう解釈するか、大きく2つに分かれるからです。
 一つは、これからリスク評価をする場合に、どちらを採用すべきか、といった一般的な問題として得失を考える、というものです。もう一つは、どう対応するかを考えるというもので、個別の事象に対して危険か安全かといった評価が2つの方法で大きく異なる場合です。
 ただ、下線部(4)では「一つに決まるはずだ」という記述があり、それを前提に「態度」を問うているのですから、異なる調査結果が出た場合の態度決定が問われていると考えます。
 このように考えますと「中立的」という現在の答案では、原則論を述べるだけであり、実際の判断基準として無力だと申せます。現実の問題として、こうした相対立する見解に対して、「中立的」対応として判断保留が行われ、決定・決断が出来ない、ということがあります。
 そこで、今回は今一歩踏み込んでみることを合格答案の条件にします。
 なお、通信欄で「歪な文」になった、と述べておいでですが、これは答案の分量が原因ではないと思われます。設問の要求する「態度」が、結局、態度を決めないという態度、といった構造になり、明確な論旨構成が出来なくなったためだと思います。

(添削本文)


[解答は省略]


A:問題1のaと同じです。
B:C以下の改善によっては「中立的」という概念が適当かどうか、遡って再検討していただく可能性もあります。
C:大きく取消線をしましたので、ガッカリされたかも知れません。しかし、ここで採り上げている諸要素は大部分改善後も活かせます。
 現在の答案は2つの見解に「相互補完的」な関係を認めていますが、それぞれどのような条件で、この「補完」が行われるのかを考えてみましょう。
 例えば、ICRPの基準が原爆被害という短期大量の事例に準拠しています。その一方で、細かく個々人を診療する、という点ではECRRの評価の方が、よりていねいで慎重な分析と言えるでしょう。
 そこで、原発事故が発生した場合のように、緊急かつ大量の症例に対応する場合には、多少大雑把でも明確な基準が得られるICRPのものでないと、対応が手遅れになると言えるでしょう。その一方で、長期的な政策の立案に際しては、出来るだけ詳細な予測を立て、将来の危険を最小にすべきでしょう。その点、ECRRの評価が適していると言えるかも知れません。
 もちろん、これはあくまで一例ですので、これ以外の「補完」関係をICRP・ECRRに見出しても構いません。この補完をどこで認めるにせよ、次のような答案構成が考えられます。
 ○○の場合には、ICRPの評価を優先し、それに従うべきである。なぜなら、……
  ・・・・・・
 それに対して××の問題では、ECRRの評価に従うべきである。なぜなら、……
 この改善をしますと、「歪な文」という問題は解消すると思います。


 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。もっとも、先に申しましたが、ここでCの様な踏み込んだ「態度」を述べた答案は、少なくとも初回提出ではありませんでした。難しいかも知れませんが、是非再提出に挑戦して見てください。

問題5
 ここは、問題2・3同様、課題文の内容把握を要求しています。答案の一文単位で見ますと、課題文の重要概念およびその相互関係はただしく抽出・再現されています。しかし、文相互の関係付けが不適切なので、合格圏ではありますが、ギリギリという評価になります。

(添削本文)


[解答は省略]


A:問題1のaと同じです。
B:問題1のbと同じです。
C:いずれも内容的に問題はありませんが、一文が長すぎ、文意が読み取りにくくなっています。問題2のb等でも指摘しましたように、文を分割すると良いでしょう。ただし、単純に文を切るだけですと制限字数を超過する可能性があります。*等を参考にして、出来るだけコンパクトに表現するようにしましょう。


 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。
 冒頭でも申し上げましたが、初めて過去問に挑戦した答案としては、大変高い水準でした。そのため、難しい改善をお願いしましたが、再提出答案を拝見するのを楽しみにしています。


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