早大添削コメント例[政治経済学部グローバル推薦]15年

このコメントは、WIE小論文navi添削講座「早稲田大学推薦AO入試小論文」で実際に行われたものです。


●14年に続き、15年出題に対する答案を提出して頂きましたので、早速拝見いたします。私が、14年初回添削を終えてから間をおかずにこの答案をいただきましたので、14年の添削結果はまだご覧になっていないと思われます。そのため、特に答案の形式面に関して、14年初回添削と同じ指摘をすることになります。予めご承知おきください。
 今回も、簡単に出題傾向を見ておきましょう。14年が放射線の被曝量といった、それ自体は科学的に定量可能な概念を対象にしていました。主な問題点は、それを社会政策的な材料として利用・加工する際の、政治性・イデオロギー性でした。
 本年も、政策判断・決定の材料となるデータの性格付け、あるいは限界といったものを問題にしています。その意味では、14年出題と共通しています。早大政経学部の卒業生であれば、遅かれ早かれ組織の指導者として、判断・決断をしなければならない立場に立つでしょう。あるいは、少なくとも重要な意志決定に関して、助言を求められることでしょう。そのとき、データそのもの信憑性やその限界について、基本的な考え方を身につけていて欲しい、という出題意図がうかがわれます。
 ただ、昨年と異なりますのは、今回はデータの対象が、幸福感という人間の意識・心のあり方だという点です。これを計測する基本的な方法は、質問法(アンケート)になりますが、これが曲者です。課題文中にもありますが、「どちらでもない」という選択肢を設けるかどうかなど、質問の構成によって調査結果が大きく異なります。
 また、今回特に問題にしているのは、人々の心の問題が最終目的だとして、それに直接働きかけることが適当かどうか、という問題も提起しています。課題文は直接言及していませんが、心を外部から操作しようとする考え方は、危険だと思います。極端な例を挙げれば、強制的な洗脳によって幸福感を植え付ける、あるいは幸福感を感じる薬物を投与する、といった方法も幸福感の増大として許容することになってしまいます。
 少し脱線してしまいましたが、早大政経学部を含め、難関といわれる大学・学部の入試問題は、単に学力差を測定するためだけではなく、大学・学部の問題意識、研究の方向性を示す、という機能もあります。今はそのような余裕はないかも知れませんが、入試が終わってからでも、課題文それ自体を味読してみると良いでしょう。

 ここからはお送りいただいた答案を拝見して参りましょう。引き続き、国語的な問題はほとんどありません。また、設問の要求を正しく把握し、それに対応して答案を作成する、という基本が出来ています。14年出題同様、多くの小問に対して、初回提出から合格圏と申せます。
 ただ、14年の初回添削結果をご覧になっていないのですから、同様のミスが見られます。それらも含め、早速小問ごとに検討して参りましょう。

 記号の使い方などは、前回と同じです。

問題1
 14年の問題1と類似した問題です。もっとも、前年の「説明」に対して、今回は「要約」という概念が用いられています。しかしいずれにしても、解答者独自の見解ではなく、課題文の論旨を再現することが求めらています。
 現在の答案は、この基本を守っておりますので、ギリギリ合格答案と申せます。ギリギリと判断しましたのは、答案下線部では「幸福」が重要概念になっているのに、要約部分は「豊かさ」についての記述である、ということです。一般に設問文が、下線部などで課題文の一部を指定している時には、その部分も設問文の一部と考えます。そうしますと、厳密に言えば設問が「幸福」について問うているのに、「豊かさ」を答えている、ということになってしまいます。
 もっとも、昨年を含め、この点をうまく処理できた受講生は今までいません。100字という制限字数でこれをまとめるのは、実際の試験場ではほぼ不可能でしょう。しかも「本文」に即して「要約」といっていますので「豊かさ」という課題文の概念をそのまま使っても、減点の要因には出来ません。
 実際の試験場で現在以上の答案を書こうとするのは非現実的かも知れません。ただ、思考の訓練として再提出に挑戦して頂く価値はあると思います。

(添削本文)


[解答は省略]


A:14年課題でも同じ指摘をしましたが、解答が語句ではなく文になる時は、1字空けをしましょう。
B:前回指摘した原則に沿って、読点(、)の位置を修正しました。
C:これも14年の添削と重複しますが、文を切ります。
D:いずれも課題文と対応しており、要約として問題はありません。ただ相対的に重要性の薄い部分ですから、他の改善で字数が増えるようなら、ここで調整しましょう。逆に最終的に字数に余裕が出来るのであれば、現在のままでも構いません。
E:課題文では、国が定義してしまうとして問題視しているのは、「豊かさ」です。これと設問の要求する「幸福」との関係は、どうなのでしょう。一応*に言及がありますが、①「豊かさ」は「幸福」を構成する一要素、②国が定義すべきではないという点で、「幸福」は「豊かさ」と同じ性格である……、というようにさまざまに考えられます。課題文に「即した」関係を解答者の方で概念化してみてください。そうしますと、具体例として「豊かさ」を取り上げている課題文の「幸福」に対する考えを明確に出来るでしょう。


 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。なお、Eの作業は難しいので、実際の試験では不要だと思われます。ただ、初回提出から大変高水準の答案を書けるようですから、挑戦して頂くことを提案いたします。

問題2
 問題1と類似した設問ですが、問題1と異なり、課題文の説明が「幸せ」という概念を使用していますので、この点は簡単です。ただし、課題文は問題点をいくつか挙げていますが、現在の答案は、重要なものを見落としています。ここも重要概念を過不足無く網羅した答案を書ける方はごく少数ですが、せっかくですので、再提出で挑戦して頂くことにします。

(添削本文)


[解答は省略]


A:問題1のAと同じです。
B:課題文は「どちらでもない」という選択肢がないという「大問題」を指摘しています。そして、このことから「あまり信頼できない」としています。こちらは、Cにある複数の調査データの比較という次元ではなく、データそのものの信憑性に関わる問題です。絶対に触れておくべき「問題点」です。
C:課題文に対応する記述があり、また「難しい」という問題点ではありますが、Bに比べれば副次的な問題です。ここを短くして、Bが盛り込めるようにしてください。


 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。

問題3
 ここは提出を省略されましたので、コメントはありません。ヒストグラムについては、中学校段階で学習しているはずですし、与えられたデータも特に処理に困るものではありません。ただ、14年の問題3Aでは、閾値に関して誤解が見られました。念のため、再提出でここの部分を見せて頂けますと、私としても安心です。メールで送るのがご面倒でしたら、この部分だけファックスまたは郵送でも構いません。

問題4
 本年の出題では、14年の問題3にあったA・Bが二つに分離して、グラフ作成部分とその読み取りという独立の小問になっています。本年の問題4は、問題3の作図に対して、その読解に当たります。問題3の提出がありませんでしたので、厳密に評価することは出来ませんが、課題文だけを基準にコメントして参ります。
 ただし、やはり問題3のヒストグラムは作って頂くべきでした。表だけから議論しているために、十分なデータの抽出・分析が出来ていません。さらに、表だけでは制限字数が余ってしまうために、表とは関係性の薄い、「3段階」調査の話に触れています。このため、設問の要求に正しく対応しているとは言えず、合格圏とは申せません。
 改善方針としては、表およびヒストグラムの分析を深め、11段階評価をさらに読み込みます。一方、この字数増加に対して、3段階評価に関するところを削って調整することになります。

(添削本文)


[解答は省略]


A:問題1のAと同じです。
B:他の箇所に取消線をしましたので、分かり難くなってしまいましたが、文章を短くできる箇所を指摘しました。Cの改善で大幅に字数が増えますので、国語表現のうえでも簡潔にするよう留意してください。
C:現在の読み取りは誤りとは言えませんが、不十分です。確かに、日本もブータンも5~8に集中する点は同じです。しかし、0~3、9・10という①両端の選択肢では、いずれも日本の方が多くなっています。このように、日本・ブータンともに中位の値が高い傾向を示しますが、その集中度は日本の方が低くなっています。これをヒストグラムに表しますと、日本の方がよりなだらかな分布になるでしょう。
 さらに、この集中度(なだらかさ)を細かく見ていきましょう。これはヒストグラムにしないと分かり難いかも知れませんが、5~7の中位値ではブータンのグラフの方が面積が広く、両端部では日本のグラフの方が面積が広くなっています。そして、答案の*で気づいておいでですが、8~10の高位値における面積の方が、0~3の低位値での差異より大きくなっているはずです。ここから、日本の方が、ブータンより幸福度の高い人も低い人も多いが、高い人の方がより大きくなっている。ここから、②日本の方がブータンより幸福度が高低に分散しており、③その中で高いとする人の差が、低いとする人の差よりも多い(=ヒストグラムの面積差が大きい)。
 この3点を指摘できますと、特に③から、日本の方が幸福度の高い人が多い分、ブータンより全体の幸福度が高いといえる、という議論ができますね。
D:冒頭でも申し上げましたが、ここはCより設問の要求に対する関係が薄い記述です。Cの改善でなお字数に余裕が生じるようでしたら、その範囲で残してください。


 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。

問題5
 14年度の問題4に対応しています。「難しさを踏まえた上」とありますので、答案の中で課題文の議論を整理(=要約)しておく必要があります。その上で、解答者自身が「適当と考える(=論証できる)政策」を示すことになります。
 現在の答案は、この条件を満たしていますので、合格圏と申せますが、ギリギリです。もっとも、ここの問題点はそれほど深刻なものではありません。また、すでに14年の初回添削で指摘したものも含まれます。

(添削本文)


[解答は省略]


A:問題1のAと同じです。
B:下線を付した部分は、課題文の内容であり、解答者の見解ではありません。小論文に限らず、およそ論文においては、資料その他「他者の見解」と、「論文筆者の見解」が明確に区別されていなければなりません。そうでなければ、単に「課題文が読めていない」という減点だけではなく、最悪の場合、盗作・剽窃と判断されかねません。今回、引用記号である「」を使用するなど一定の配慮はしておいでですが、不十分です。
 「課題文によれば」といった語を補い、両者の関係が明確になるようにしてください。
C:14年添削でも触れましたが、設問文が下線部などで課題文の一部を指定しているときには、その部分も設問文と考えます。したがって、その部分に含まれる重要概念は、設問文の指示する論点となります。今回の場合で言いますと、下線部(4)の「困難なときに助けてくれる人」がこれに当たります。現在の概念を使用してはいけない、とまで申しませんが、設問の要求に応えるには、設問文の重要概念をできるだけそのまま使用するのが基本です。
D:これも14年課題で指摘したかもしれませんが、1文があまり長いと、概念の関係=論旨が読み取りにくくなります。私なら、ここで文を切る、というところを指摘しますので、これを参考にして、文を分割してください。
E:ここで、課題文の内容紹介から、解答者独自の見解に内容が転換しますので、段落を改めましょう。ただし、Bの改善によっては、課題文の内容と解答者独自の見解が転換する位置が変わるかもしれません。その場合には、改段位置も変わってきます。
 なお、よく「1段落は○○字程度がよい」とか、「全体が××字なら、△個ぐらいの段落に分けよう」といった指導をする添削講座や参考書があるようですが、段落の構成は、字数で考えるよりも、内容で考えてください。
 これにともない、接続の言葉も一応再検討してください。
F:問題1のBと同じです。読点(、)の修正です。
a: 現在の記述でも減点になるようなことはありませんが、他の改善によって分量が増加すると思われますので、その調整です。
G:何の「余裕」なのか、概念の関係づけ=論旨構成が曖昧です。おそらく*と関係があるのでしょうが、現在のままでは明確な記述はありません。よく「論旨の明解な文章」とか「説得力のある論文」を書くように、といわれますが、これは「使用されている概念の関係が明確である」ということに他なりません。逆に、これが不十分ですと、論旨の矛盾・混乱として、大きく減点されることになります。
H:記述内容の問題ではなく、答案の構成=叙述の順番に関するコメントです。これは、B・Eとも関連しますが、設問の要求に対応するには、次のような答案の構成になるでしょう。
1)課題文の見解を紹介(「踏まえ」る作業①)
2)1)に対する解答者の立場(「踏まえ」る作業②)
 ・「助けてくれる人」は不要
 ・「助けてくれる人」は個人の自発によるのではなく、(福祉)行政として提供すべき
……
  といった、賛否さまざまな立場があり得るでしょう。解答者の取りうる立場は、全面的に賛成・全面的に反対、という二つに限定されません。もっと多様な立場に立ちうるのです。課題文と同じく「助けてくれる人」の必要性は認めるが、その性格が異なる、といいった部分的な同意などがその例です。いわば6:4で賛成、7:3で反対、といった議論でもよいのです。
3)2)で表明した考え=解答者の主張・見解を論証
 といった流れです。もちろん、これ以外の構成もあり得ますが、制限時間のある入試では、このような単純な構成が良いと思います。
 さて、このように考えますと、現在のこの部分は、2)の段階で議論しておく方が、全体の構成として優れています。具体的には、※の位置ですね。
 Gで述べた概念の関係=論旨の問題は、1文(sentence)の中だけに限定されません。文相互、さらには文の集合としての段落(paragraph)間の関係も重要です。
I:Hの改善と併せ、この部分の位置づけも再検討してください。


 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。致命的な誤りはないのですが、この機会に答案の構成について演習して頂こうと考えました。少し難しいかもしれませんが、是非挑戦してください。

問題6
14年度の問題5に対応しています。「説明」を要求する問題ですから、基本的に課題文の内容把握=要約をすることになります。
 こうした条件を満たしてはいるものの、見落としている重要概念があるなど、いくつかの改善点があります。ここも問題5に続き、ギリギリの合格圏といえます。

(添削本文)


[解答は省略]


A:問題1のAと同じです。
B:問題1のBと同じです。
C:問題5のaと同じです。分量調節が目的です。
D:設問5と関係しますが、これに対応して課題文はもう少し詳しく議論しています。また、この部分だけではありませんが、「直接的」な介入に対して「(個人の)プライバシー」の問題を挙げています。この「プライバシー」は、課題文の最重要概念の一つですから、答案に盛り込むようにしてください。
D:問題1のCと同じですが、文を切る位置はご自身で考えてください。


 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。


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