早大添削コメント例[スポーツ科学部]14年

このコメントは、WIE小論文navi添削講座「早稲田大学小論文」で実際に行われたものです。


●引き続き、中島が添削を担当します。よろしくお願いします。
 提出していただいた答案を拝見しました。大変厳しいようですが、小論文の基本的なルールに従って答案を作成していないため、評価が低い答案になってしまいました。ここでいう小論文の基本的なルールとは、書き手の考えと、引用した意見を区別して示すことです。
小論文の作成方法には、様々な流儀があるのですが、小論文をあまり書き慣れていない方は、答案冒頭に、要約の形で課題文の見解をまとめて紹介するのがお勧めです。その上で、紹介した課題文の見解について、解答者がどのように考えるか、後から論じれば、課題文の筆者に意見に対応する形で、解答者の考えを述べたことになります。
なお、答案冒頭に設置する課題文の要約は、答案の総字数の四分の一程度とし、要約の字数が多くなりすぎないようにしたいところです。なぜなら、小論文では、「書き手が何をどのように考えたか」が主な評価の対象となるので、他者の見解を紹介してばかりだと、解答者の見解をほとんど述べたことにならず、設問の要求に真正面から応えたことにならないからです。

【答案骨子】
(1)課題文の要約の提示(答案の総字数の1/4程度)
(2)課題文の見解を踏まえて、解答者がどのように考えるか論述

●答案を拝見する限り、解答者は、小論文の書き方について、まとまった形で学習していない可能性が高いと申せます。そこで、念のため、小論文に盛り込む要約の作成手順を説明します。要約の作成方法を習ったことがないのであれば、以下の説明を熟読し、確実に正しい要約の書き方を実践できるようにしてください。

要約の手順
①課題文の読みとり
 課題文を段落ごとに読みながら、その内容をまとめていきます。段落の数と同じ個数の短文ができあがることになります。重要概念を抽出すること、なるべく短い文を作ることを心がけてください。

②答案のテーマに沿った課題文の整理
 その短文のうち、答案に書くべきテーマに関係のないものは、さらに省略して、いくつかの文をまとめて一つの文にする、あるいは、他の短文の中に組み込む、などといった作業をします。もし、どうしてもこの作業が難しいのなら、テーマに無関係だと思う短文は、ここで完全に切り捨ててしまっても構いません。

③要約文の文章整理
 残った文章を整理して、要約を完成させます。ここまで残しておいた短文でも、内容が重複するものがあれば、どちらかを削りましょう。また、同じ語が何度も出てくるのなら、最初の語を残して、あとは指示代名詞(「これ」、「それ」などのいわゆる「こそあど」言葉です)に改めてください。こうして文章を整えれば、基本的には完成です。国語の問題や、独立した設問で筆者の見解だけが問われているような場合は、ここまでの作業結果を答案に反映させればよいことになります。

④課題文の見解であることの明示~自分の小論文答案に要約を盛り込む場合
 ここで注意していただきたいのですが、今回の課題のように、自分の小論文答案に要約を盛り込む場合は、③で作業を終えてはいけません。
 小論文では、「書き手が何をどのように考えたか」が評価の対象になりますから、「誰の見解か」という点が非常に重要になってきます。この場合、他者の見解をそれと明示せずに用いることは、剽窃(=ひょうせつ。他者の意見を盗み取って自分の意見であるかのように装い、公(おおやけ)に発表すること。)ととらえられかねないのです。従って、皆さんの小論文に要約を盛り込む場合も、これが課題文の見解であると明示しておかねばなりません。
 この示しかたは様々ですが、③までで仕上げた要約文の一文一文を、伝聞の形に改めるのが一般的です(「課題文は、~ と述べている(という、と述べるなど)」という形)。またこの際、主語の重複を避けて、第2文以降の主語(=課題文は)を省略しましょう。その結果、「課題文は、~という。~という。…」という形が出来上がるはずです。
 小論文に要約を盛り込む場合は、こうした配慮を忘れないようにしてください。

【ヒント:要約シミュレーション】
 別の課題文を用いて、上の手順に沿って要約をしていく過程をお見せしておきましょう。

※四日市大(経済)改
[問] 現代人にとって、古典とはどのような意味を持つか。次の課題文を参考に、五〇〇字~七〇〇字以内であなたの考えを述べよ。
→課題文から抽出すべき内容:現代人にとっての古典の意味
手順①:課題文の読み取り

 レイチェル・カーソンの『沈黙の春』は、環境問題、公害問題の「古典」と考えられている。
 「古典」という扱われ方は、だれでもその書名はよく知っている割合には、現在ではその内容を必ずしもきちんと読まれていないということでもある。
 たとえばこういう風である。
 鳥がまた帰ってくると、ああ春がきたな、と思う。でも、朝早く起きても、鳥の鳴き声がしない。それでいて、春がやってくる─アメリカでは、こんなことが珍しくなくなってきた。いままでいろんな鳥が鳴いていたのに、急に鳴き声が消え、目を楽しませた色とりどりの鳥の姿も消えた。突然のことだった。知らぬ間に、そうなってしまったのだ。
 二〇世紀の末の現在、レイチェル・カーソンのこの新しい戦慄を、いくらか「時代おくれ」のものであるように感じる人は多くなっている。それは書かれていることが、解決され、すでに存在しなくなっているからではない。反対に、それが多くの国々で、ふつうのこととなり、だれもそのことに注目しなくなったからである。気づいても、新しい戦慄の声を挙げるということを、しなくなっているからである。人間たちもまた沈黙してしまったからである。あるいは、われわれの中の感受性も、声を挙げるということをしなくなったからである。
見田宗介『現代の社会理論』(岩波書店)より抜粋

①レイチェル・カーソンの『沈黙の春』は、一種の「古典」とされている。
②「古典」とは、名を知られている割に読まれないものである。
③例えば『沈黙の春』に、「知らぬ間に鳥の鳴き声が消え、姿をみなくなった」という記述がある。
④この新しい戦慄を「時代おくれ」と感じる人が多くなっているが、それは書かれていることが存在しなくなったからではなく、それがふつうのこととして、だれにも注目されなくなったか、われわれの中の感受性も声を挙げなくなったからである。

手順②:テーマに沿った課題文整理+手順③:要約文の整理

 「古典」とは、知名度が高い割に読まれないもので、例えば『沈黙の春』の記述なども、「時代おくれ」という印象を持たれがちだ。だがそれは、「古典」が取り上げた問題が存在しなくなったからではなく、注目されなくなっただけであり、それに対する私たちの感受性がにぶったためだ。

手順④:課題文の見解であることの明示

 課題文は、「古典」とは、知名度が高い割に読まれないもので、例えば『沈黙の春』の記述なども、「時代おくれ」という印象を持たれがちだという。だがそれは、「古典」が取り上げた問題が存在しなくなったからではなく、注目されなくなっただけであり、それに対する私たちの感受性がにぶったためだと述べている。

●以下では、提出していただいた答案に沿ってコメントします。
■ 改善すべき点を答案に書き入れました。abc……の記号に対応するコメントは下段に記入してありますので御参照ください。記号のない箇所については、単純な誤記や分量調節のためのものです。


a さも、解答者の独自の見解のように書かれているものの、元のアイデアは、課題文が説明していたもののはずです。
 書き手の考えと、引用した意見を区別して示すことが、小論文の基本的なルールです。このルールを守らず、他者の見解をそれと明示せずに用いることは、剽窃(=ひょうせつ。他者の意見を盗み取って自分の意見であるかのように装い、公(おおやけ)に発表すること。)ととらえられかねません。

b 「課題文の筆者の主張」と、「解答者の主張」がどのような関係にあるかを説明しながら議論を進めてください。答案冒頭に、課題文の要約を設置すれば、ほぼ自動的にこの条件を満たした答案になります。
 これに対して、提出していただいた答案は、「課題文の筆者の主張」をどのように解答者が把握したのか示されていないため、「課題文の筆者の主張」と、「解答者の主張」がどのような関係にあるかを説明しながら議論を進めることが不可能になっています。
 提出していただいた答案は、課題文の筆者に対する解答者の見解を示しているのか、それとも、課題文の筆者を無視して、解答者の書きたいことを書いているだけなのか、読み手には判断できないのです。

★参考までに、課題文を踏まえた、答案の書き方について、極簡単に紹介しておきます。
【答案例骨子】
 ①課題文の筆者は、しっかりとした自分の視点を持ち、周囲に流されずに自分の考えをまとめ、それを正しい方法で表現できる力を、少年期のスポ-ツで養うことが必要だと述べている。
 ②私は、課題文の筆者の●●●という見解に賛成だ。③なぜなら、~(以下略)

(注)
① この箇所は、課題文の筆者の見解の紹介をすることを目的とした要約です。

② 課題文の関連する主張との関係を示しながら、解答者の見解を提示することで、課題文を踏まえて解答者の見解を提示していることを明示できます。なお、答案例骨子では、「賛成」としたものの、必ずしも課題文の見解に賛成する必要はありません。解答者の主張の根拠を示せるのであれば、課題文の見解への「反対」や、「批判」の立場で答案を作成しても構いません。
 さらに言えば、課題文の筆者の主張に対して、部分的に賛成し、また部分的に反対する立場で答案を作成しても構いません。設問の要求に対応する範囲であれば、どのような立場を採用するかは、解答者の自由です。

③ 小論文では、主張を提示するだけでなく、必ずその根拠を提示することが大事です。小論文では、説得力のある自説の根拠を示せたかどうかで、大きく評価が変わります。

★★ここまで、大変厳しいコメントとなったものの、小論文の正しい流儀に従って答案を作成することように心がけさえすれば、現在の答案に盛り込まれているアイデアの多くは、そのまま流用できる可能性があります。


 以上を踏まえて答案を修正してください。
 再提出の答案を心よりお待ちしています。


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